《2度目の人生を、楽しく生きる》91話 「魔獣の森でサバイバル」

俺が龍族の眷屬になった次の日、修行が本格的に始まった。

俺がローガと戦うのは6日後だ。 6日で、俺はローガより強くならなければいけない。

「ほらほら! 3人も居るんだから連攜して來い!」

そう言ってレイニクスは自分のを叩く。

レイニクスは汗をかいていないが、俺達3人は汗だくだ。

ローガの修行方法は、「とにかく戦う」というものだ。

「龍神武・紅破ッ!」

俺の前で、セレスが右手を赤くらせながらレイニクスに拳を突き出す。

だがレイニクスは素手でセレスの手を摑む。

「セレス避けて! 土竜魔・ロックブラスト!」

グリムがそう言うと、セレスは素早く後ろに飛ぶ。

その瞬間、グリムが撃った龍の形をした大きな巖が3つレイニクスの方へ飛んでいく。

「魔を撃つ時は確実に當てられる時にした方がいいぞ。 じゃないと…」

そう言いながらレイニクスはロックブラストを全て避けると、素早くグリムの方へ走る。

俺とセレスもレイニクスを追うが、全く追いつけない。

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「敵に避けられた時に隙だらけになるぜ? ……まぁ、守ってくれる奴らが居るなら別だがな」

「炎拳ナックル・フレア!」

「龍神武・紅破!」

俺がレイニクスの右側、セレスが左側から思い切り近接攻撃を仕掛ける。

だがレイニクスは右手で俺、左手でセレスの攻撃を防いでいる。

グリムは腰が抜けたのか地面に座り込んでしまっている。

「グリム! 今だ!」

「グリム! 今なら攻撃が當たるわ!」

俺とセレスが同時に言うと、グリムがビクッと反応し、右手をレイニクスに向ける。

俺とセレスは技の威力を緩めず、レイニクスを逃さないようにする。

「土竜魔・ロックブラス…!」

「ーー龍化」

グリムが魔を撃つ前に、レイニクスが龍化し、レイニクスの手足を青の鱗が纏い、まるで龍の手足のような形になる。

そして、龍化したレイニクスの右手に俺のが持ち上げられ、そのままグリムにぶつけられる。

俺とグリムが地面を數回転がった後、再びレイニクスの方を見ると…

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「ごめんなさい2人共…」

セレスの片手剣を奪ったレイニクスが、片手剣をセレスの首に突きつけていた。

「これで俺様の5連勝だな」

そう。 今日、俺達はレイニクスに5回も負けている。

戦うたびに俺達のチームワークは上がっているはずだ、なのに1度もレイニクスに攻撃を與える事は出來ない。

「あー…勝てねぇ…」

「ご、ごめん2人共、僕が足を引っ張っちゃったね…」

「グリムだけが悪いわけじゃないわ! 私達1人1人の小さいから勝てないのよ」

セレスの言う通りだ。 俺達はまだ弱い。

だから力を合わせても弱いんだ。

「なら、どうすればいいか分かるか?」

レイニクスが俺達に問いかける。

セレスは力強く拳を握り

「私達1人1人が強くなり、強い力を合わせる。 ですか?」

「そうだ。 だから、手っ取り早く強くなる方法を教えてやるよ」

手っ取り早く強くなる方法…? そんなものがあるのか!?

「ついて來い」

レイニクスが修行場所から出て行き、俺達もそれについて行く。

薄暗い窟の中をどんどん進んで行くと、奧にが見えてきた。

「何処に向かって居るんですか?」

「外だ」

セレスの質問にレイニクスはそう答える。

外に出て何をするのだろうか。

ようやくの元に辿り著き、窟から出ると……

目の前は崖だった。

「……え?」

思わず俺の口から聲がれる。

外は外だが…何だこれは。

崖の下は森が広がっていて、とても修行ができる場所には見えない。

「あの…レイニクス様…? 僕達はどうすれば…」

「お前ら、ここから落ちろ」

………は?

落ちろって…この崖からか?

「なっ!? 本気ですかレイニクス様!? 下の森には魔獣がたくさん…」

「セレス、俺様は言ったよな? 「手っ取り早く強くなる方法を教えてやる」って、それがこれだ。 

生きってのは面白くてな、死にそうになると強い力を発揮するんだよ。 生存本能ってやつだな」

「…って事は、死ぬような経験をしろって事ですか?」

「違う。 この森で生き抜く事が、次の修行だ。 死にそうになるって事は、そいつが弱いって事だ」

「生き抜くって…何日くらいですか?」

「んー…4日くらいか? よし、4日にしよう」

グリムの質問にそう答えると、レイニクスはグリムのを持ち上げる。

「あ、ちなみに、お前ら3人は違う場所に落とすからな。 最初から協力しちゃ意味がない。 森の中で合流するのは構わんがな」

「えっ…?」

「んじゃ、行って來い!」

そう言ってレイニクスは龍化し、グリムを森の左側に思い切り投げた。

「う、うわああああ!」

「グリムー!?」

俺が飛んで行くグリムを見て驚いていると、次はセレスのが持ち上がった。

「レ、レイニクスさん? セレスはの子ですし、流石に危険なんじゃ…」

「ルージュ! 私は平気よ! むしろワクワクしてるわ!」

グリムはずっと怯えていたのに、セレスはニコニコしている。

「んじゃ投げるぞ」

「お願いします!」

今度は森の右側にセレスを投げた。

2人が森に落ちる前に、俺のが持ち上がった。

「ルージュ、この森の中でお前が変わらなければ、魔剣使いには勝てないと思え。 今のお前には、足りないものが多すぎる」

「……え? それはどういう…」

「この言葉の意味を、お前が理解する事を願ってるぜ。 んじゃ、行って來い」

そう言うと、レイニクスは俺を森の中央の方へ思い切り投げる。

レイニクスの言葉の意味は正直分からない。

だが、この言葉の意味を理解しなければ強なれないと言うなら、絶対に理解してやる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もう直ぐ地面に落ちるという時、俺は思った。

”どうやって著地しよう”と。

無難に突風ウィンドでいいのか?

いや、大きな音を立てて魔獣達に襲われたら灑落にならない。

ならどうするか……お?

辺りを見回すと、俺の著地地點付近にし大きめの湖があった。

あれに落ちれれば……よし!

「突風ウィンド!」

俺は空中で突風を使い、著地地點を湖に修正する。

そして、俺のはそのまま湖に落ちた。

「うぅ…冷てえ…」

當たり前だが、この湖は修行場所の湖とは違う。 だからもちろん冷たいし、服もにピタリとくっつく。

気持ち悪い事この上ない。

とりあえず上の服をぎ絞り、濡れたまま著る。

「さて…これから4日間生き抜く訳だが…食料も自分で集めるんだよなぁ…」

まさか異世界でサバイバルする事になるとは思わなかったぞ…

し休憩しようとその場に座ると、森の中からガサゴソ足音が聞こえてきた。

……噓だろ? まさかいきなり…?

とりあえず片手剣を持ち、構える。

「落ちていきなり遭遇か…?」

足音がどんどん大きくなる。 それに伴い、地響きのように振がくる。

って事は…かなり大きな奴なんじゃないか…!?

「これは…逃げ…!?」

「ガアアアアアアッッ!!!」

馬鹿だった。 もっと早く逃げればよかった。

魔獣にはどんな奴が居るか分かってないんだから、もっと慎重になるべきだったんだ。

一目でそう思わせる程、目の前の”化け”の見た目は強烈だった。

は黒と黃で覆われ、鋭い牙が二本、目は赤く、俺という獲をじっと見つめている。

見た目は虎と似ているが、虎なんて可く思える。 

まず虎と違うのは大きさ、こいつの大きさはゾウと同じくらいだろう。

そして、虎には絶対にないであろう一本角。 あんな鋭い角で刺されたら、俺は死ぬだろう。

「お、おい…まさか俺を食べるとか言わないよな…?」

「………」

「食べても味くないぜ? そこら辺の草の方が全然味いと思う。 ほら、お前の足元の草とかさ!」

「………」

「ほらほら、足元見てみろよ、めちゃくちゃ味そうだろ? むしろ俺が食べたいくらいだよ」

「………」

當たり前だが、化けは俺から目を離さない。

こんな見るからに食の生きを前にして草なんて食べる訳ないよな……

なら…俺がやるべき事は1つ。

「石連弾ロックマシンガン!」

「ッッ!!」

「先手必勝だ! ざまぁみろ!」

化けの顔石連弾を食らわせ、怯んだ隙に風加速を使って全力で逃げる。

捕まったら死ぬ捕まったら死ぬ捕まったら死ぬ捕まったら死ぬ!!!

ズシンズシンという地響きが伝わってきて、ふと後ろを見ると、が震え上がった。

追いかけてきている。

「追いかけてくんなよ! 黒霧ダーク・ミスト!」

黒霧で視界を奪い、近くの木の後ろに隠れる。

よし、ここにずっと隠れてればやり過ごせるはずだ。

黒霧がなくなると、化けは辺りを見回す。

どっか行け…どっか行け…!

だが、そんな願いは葉わず、化けは地面に鼻をくっつけて何かをしている。

……ま、まさか…!?

「ガアアッ!!」

「まじかよっ!?」

の嗅覚を舐めすぎていた。

化けは俺の匂いを嗅ぎつけ、俺が隠れていた木を倒した。

もうし避けるのが遅かったら木の下敷きになっていただろう。

「なら全力だ…! 水領域ウォーター・フィールド!」

ここら辺一帯を水浸しにする。 まずはきを止めてやる。

「氷結フリーズッ!!」

水に氷結を撃ち、地面を凍らせる。

それにより、水に足をつけていた化けの足も凍る。

「炎拳ナックル・フレアッッ!!」

右手に炎の拳を出し、倍以上の大きさにしてから思い切り化けを毆る。

だが、炎拳の威力でも化けを吹っ飛ばす事は出來ず、ジリジリと後退させるのが一杯だ。

「くっ…そ…!!」

「ッッッ!!」

今度は俺がジリジリと後退する。 どうやら化けに力で負け始めてきているらしい。

きっと炎拳が消えたら化けは俺に突進してくるだろう。

そしたら俺はどうなるだろうか。

あの角に刺されて、俺は死ぬのか…?

そう考えていると、とうとう、俺の炎拳が消滅した。

「ッ! ガアアアアアアッ!!!」

いや、まだ死ねない。

炎拳が消えると、化けは俺に向かって突進してきた。

まだだ……まだ…限界まで引き付けろ……

ゼロ距離で……最大火力を…!!

化けの角が俺の顔の前まで來た瞬間…

「大発エクスプロージョンッッッ!!」

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