《2度目の人生を、楽しく生きる》95話 「謝罪と、新たな誓い」
「…俺を止める? おいグリム、それは俺と戦うって事か?」
「そうだよルージュ君。 君が何故、あの人を憎んでいるのかは知らない。 だけど、殺すのはダメだよ 」
「殺すのはダメ…だと…? 」
ガルダは、ルナ・ウルフを殺した。 なら、その報いとしてガルダは死ぬべきじゃないのか…? と人間の命の重さは違うのか…?
……グリムの言っている事は理解できない。 
「君は何の為に龍化を覚えたの? 人殺しの為?」
「そんな訳ないだろ。 俺は…!」
俺は、カノン達を助けに行く為に強くならなくちゃいけない。 その為に龍化を覚えた。
いつの間にか、俺は龍化していた。 つまり、俺は強くなったという事だ。
ガルダを圧倒できたのもそのおかげなんだろう。
「僕には、今の君は龍の力を人殺しに使っているようにしか見えないよ。 君が助けたいと思ってる人も、そんな君を見たら悲しむだろうね」
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カノン達が俺を見て悲しむ…? 俺は何か変わったのか…?
悩む俺を見て、グリムは悲しそうな顔をする。
「どうやら、自分がどんな風に変わったのか分からないみたいだね。 なら、し頭を冷やすといいよ」
そう言って、グリムは俺に右手を向ける。 何か魔を撃ってくるつもりらしい。
いつでも躱せるように構えていると、またしても、グリムの姿が消えた。
そして、次の瞬間、俺の右脇腹に激痛が走った。
どうやらグリムに右脇腹を蹴られたらしい。 地面を転がった後、苦しくなって咳き込む。
「すこし休めば、冷靜になれるよ。 土竜魔・ロックマシンガン」
脇腹を抑えて蹲る俺に、グリムは容赦なくロックマシンガンを撃ってくる。
俺は何とか立ち上がり、向かってくるロックマシンガンに右手を向ける。
「大発エクスプロージョン!」
発により、ロックマシンガンが全て消える。 周りの木が何本か倒れたが、気にしない。
続けて、右手を上にあげて黒い火球を5個作る。
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向こうがやる気なら、こっちも全力だ。
「隕石雨メテオ・レイン!!」
グリムに向かって黒い火球を落とす。 グリムは、その場からこうとしない。
「森の中でこの威力の炎魔法…やっぱり、正気じゃないね、ルージュ君。 水龍魔・ウォーターウォール」
凄まじい威力の水を発生させ、黒い火球を全て消す。 その後、またグリムの姿が消えた。
左右を見回し、グリムを探していると。
下から顎を蹴り上げられた。
は宙に浮き、そこにさらにグリムが追撃してきた。
俺の背中を蹴り上げ、さらに上に飛ばすと、グリムも上に飛び、俺の腹に右手をつける。
「土竜魔・ロックマシンガン」
ゼロ距離でロックマシンガンを喰らい、俺のはどんどん下に落ちていく。
そして、地面に強く激突し、俺は口からを吐き出す。
「…くっ…そ…!」
もう力が出ない。 立ち上がる事すら出來ないみたいだ。 
これじゃあガルダを殺せない。 ルナ・ウルフの仇を取る事が出來ない……
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「石…連弾…!」
地面に倒れたまま、手だけをグリムに向け、石連弾を撃つ。
もう俺にはあまり魔力が殘っていない。 だから威力は弱いが、抵抗しないよりはマシだ。
グリムは、石連弾を避けると、俺の顔を見て悲しそうな顔をする。
「邪魔…するなよ…! !」
ゆっくりと進んでくるグリムに、また石連弾を撃つ。 今度は全弾命中したが、グリムはそのまま歩き続ける。
…そこまで石連弾の威力が落ちてきてるのか…
「ルージュ君。 し休みなよ、君は頑張りすぎだ」
そう言って、グリムは俺の腹を思い切り蹴り上げた。 それにより、俺の意識は途絶えてしまった。
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…なんで俺はあんな事をしたんだろう。
さっきまでの俺は冷靜じゃなかった。 グリムとセレスが來なかったら……俺は…
『人殺しになっていただろうな』
……またお前か。 隨分と久しぶりだな。
そんな俺の前に、シルエットが現れた。 前に現れたのはテスト前だったか。 
『さっきのお前は見てて気分が悪かったぜ? 怒りで我を忘れすぎだ』
……あぁ…それは反省してるよ。 皆が止めてくれなかったら…
『お友達に謝するんだな。 …さて、話を変えるが、お前は俺のアドバイス通り、テストで赤點を取らなかった』
……それ、なんなんだ? 赤點を取ったら何がいけなかったんだよ。
俺がそう言うと、シルエットは腕を組んで考え込む。
『んー…簡単に説明するぞ。 赤點を取ると、お前は夏休み中家に帰れなかった。
お前が家に帰れないと、カノンには會えなかった。 そして、お前が家に帰れないと知ったローガがカノンを連れ戻しお前の家にやってくる』
……ローガが家に…!?
『あぁ。 カノンを連れて行こうとするローガに、お前の親父はもちろん抵抗した。 
だが、魔剣の力を使われ、お前の親父と母は無慘に殺される』
……は…? 父さんと母さんが殺される…?
『そうだ。 そして、両親が殺されたと知ったお前は、神が崩壊し、全てを憎みだす。
ローガを憎み、家に帰らせなかった學校を憎み、そしてなにより、無力だった自分を憎んだ。
そんなお前は、復讐するために學校を辭め、人殺しになった。 ……と、こんなもんだな。 どうだ? 赤點取らなくて良かっただろ』
……作り話だろ…? 
『どう思おうがお前の勝手さ。 そして、そんなお前に2つ目のアドバイスだ』
俺は、そんなシルエットの言葉に唾を飲み込む。
『目が覚めたら、龍の力を何処かの部分的に纏えるようにしろ』
……は? 龍の力を部分的に…?
『そうだ。 お前は何故か完全な龍化をすると神が不安定になるみたいだ。 だが、部分的に龍化をすれば今回みたいに暴走する事はない』
……なんで龍化すると神が不安定になるんだよ。
『それは俺にも分からん。 お前が闇魔法を使えるのも謎だし。
もしかしたらお前が気づいていないだけで、実は心の奧では誰かを憎んでるのかもしれないな』
……俺が誰かを憎んでる?
『あぁ、”誰かを憎む”というのは立派な悪のだ』
……部分的に龍化をすれば、今回みたいにはならないんだな?
『あぁ』
……分かった。 お前のいう通りにしてみるよ。
『そうか。 まぁ頑張れよ』
そう言うと、シルエットの姿が徐々に消えていった。 それに伴い、俺の意識も徐々に薄れていった。
「……ん、んん…?」
「セレス! もっと水魔法の威力をあげて!」
「分かってるわよ! 」
セレスとグリムの聲が、寢起きの俺の頭に響く、それにより、俺の脳が一気に覚醒した。
「っ! セレス! グリム!」
2人の名を呼ぶと、すぐに俺の方を向き、2人は警戒態勢にはいる。
…そうか、警戒されるのは當たり前だよな…
俺は2人の前にある燃えている木に手を向け…
「水球ウォーター・ボール!」
水球を3発撃つ。 セレスとグリムは自分に撃たれたと思ったようだが、水球は2人の間を通り、燃えている木に當たった。
俺は素早く2人の側に行き、頭を下げる。
「ごめん! さっきの俺は冷靜じゃなかった。 後で理由は話すから、今は火を消すのを手伝ってほしい」
「頼まれなくてもそのつもりだよ!」
「後で全部話してもらうわよ!」
2人はそう言いながら水魔法を使い消火を続ける。
俺は一言「ありがとう」と言い、水領域を使ってこの近くを水浸しにする。
これにより、地面の草に火が引火する事はなくなったはずだ。
あとは木だけ。 火はここら辺の木に全て燃え移っている。 我ながらなんて馬鹿なことをしたんだろうと思う。
「水球!!」
『制裁豪雨ジャッジメント・レイン』
水球を撃った瞬間、上空から凄まじい豪雨が降ってきた。
さっきまで晴れていたのにいきなり豪雨なんておかしすぎる。
俺が疑問に思っていると、背後に気配をじた。 振り向くと…
「えっ、レイニクスさん!?」
龍化したレイニクスが立っていた。 
「上から見てたが、いろいろあったみたいだな。 流石にお前ら3人じゃこの火は消せねぇから、俺様が降りてきてやったぜ」
周りを見ると、先程の豪雨のおかげで火は全て消えていた。
…という事はさっきの豪雨はレイニクスがやったのか。
「あっ!」
俺はやらなければいけない事を思い出し、その場から走り出す。
向かった場所はルナ・ウルフの死の前。
ルナ・ウルフの前で、3匹の狼が佇んでいた。
ルナ・ウルフの死を見ると、俺のが震えあがった。
もう暴走する事はないが、ガルダに対する怒りが消えた訳ではない。
だが、どんなに怒ろうと、もうルナ・ウルフは帰ってこないんだ。
俺は、ゆっくりと歩き、ルナ・ウルフの前に片膝をつく。 俺の変化に気がついたのか、3匹の狼は道を開けてくれた。
「……ルナ・ウルフ。 助けてくれてありがとう。 …俺が弱いせいで、お前を死なせてしまった。 
……だから、誓うよ。 もう絶対、誰かを目の前で殺させたりしない。 守りたい人は全員守れるくらい強くなってみせる! …だから…」
俺の瞳から、無意識に涙が流れてきた。
涙で目が霞んでよく見えないし、上手く話しづらい。
俺は、何度も目をりながら前を見る。
「…だから、見ててほしい。 ルナ・ウルフみたいに誰かを守れるカッコいい男になってみせるから…! 絶対に、強くなってやる 」
そう言うと、ゆっくりと立ち上がり、3匹の狼の方を見る。
3匹の狼は何も言わずにジッと俺を見ている。
俺は、3匹に向かって頭を下げた。
「ごめん。 俺が弱いせいで、お前達から家族を奪ってしまった。
助けに來たのに、逆に助けられる事になっちまった。 しかもその後は暴走して、お前達の住処を荒らした……本當にごめんなさい!」
涙が止まらない。 顔を上げる事が出來ない、顔をあげたら、狼達に泣き顔を見られてしまう。 
そんな俺の両足に、2匹の子狼が頬をりつけていた。
「……どうした?」
俺がそう問いかけると、2匹の子狼は下から俺の顔をジッと見上げると、突然飛び上がってきた。
反的に目を瞑ると、両肩にズシリと何かが乗ったがあった。
目を開けると、右肩に白い子狼、左肩に黒い子狼が座っていた。
2匹はそのまま俺の頬をペロペロと舐めてくる。
「ルージュ、どうやら気にられたみたいだぜ?」
それまで黙っていたレイニクスが、俺にそう言ってくる。
よく見ると、レイニクスの後ろでセレスとグリムが涙を流している。
「気にられたって…俺がですか? そんな訳ないでしょう。 だって俺は…」
恨まれるなら分かるが、気にられるのは意味が分からない。
…だが、肩に乗っている2匹の子狼と、目の前にいるソル・ウルフの眼には怒りがじられない。
そして、混している俺に、ソル・ウルフが吠えた。
「ガウッ!」
「『息子と娘を助けてくれてありがとう』 って言ってるぜ」
「え!? レイニクスさん、言葉が分かるんですか!?」
「あぁ、俺様は水龍・レイニクスだからな」
なら…本當にソル・ウルフは俺に謝してるって事か…?
「クー」
「ガル」
「レイニクスさん、2匹はなんて言ってますか?」
俺がレイニクスに聞くと、レイニクスは驚いた顔をしていたが、すぐに顔を変え、今度は笑いだした。
「ははは! いやいや、びっくりだぜこれは。 おいルージュ、この2匹は『ルージュについて行きたい』って言ってるぜ?」
「え……」
「まさかソル・ウルフとルナ・ウルフが人間に懐くとはなぁ。 初めてみる景だぜ」
俺は今、正直かなり焦っていた。
どうすればいいんだろう。 2匹の頼みは出來るだけ聞いてやりたいが、この2匹を連れて行けばソル・ウルフはこの場所に1匹だけになってしまう。
なら、家族3匹で仲良く暮らすべきではないのか?
だが、それにはこの2匹の頼みを斷らなければいけない。 それには罪悪が……
「グル…」
本気で悩んでいる俺の側に、ソル・ウルフがやって來た。
ソル・ウルフは俺の前に座り、ジッと俺を見る。
「『2匹を連れて行ってやって下さい。 お願いします』だってよ」
「………」
…親にそう言われたら、もう、斷る理由はないよな。
「分かったよ、ソル・ウルフ。 2匹は俺が預かる。 でも、偶にはここに戻って來るよ」
そう言うと、ソル・ウルフは優しく微笑んだ。 俺も、出來るだけ優しく微笑む。
すると、突然俺のが青くった。
よく見ると、セレスとグリムのもっている。
「ちょっと早いが、サバイバルは終わりだ。 もうお前達は十分強くなった。 後は調整するだけだ。 俺はちょっとやる事があるんでな。 先に戻っててくれ」
レイニクスがそう言うと、俺達はに包まれ、転移した。
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ーーレイニクス視點ーー
ルージュ達が転移した後、俺様は森の中を歩いていた。
そして、目の前で必死に這いずりながら進んでいる哀れな男を見つけた。
「よぉ、お前だな? ルナ・ウルフを殺したのは」
俺様がそう言うと、男…ガルダだったか。 ガルダはすぐに振り返り、俺様を睨んできた。
「な、なんだテメェ! 」
「俺様か? 俺様は……」
龍化し、周りに水の槍を數本作る。
「この森の管理者だ。 お前は、勝手に俺様の森にり、この森の生を傷つけた。
この罪を、償ってもらおうか」
そう言って、水の槍を撃つ。 水の槍はガルダの右手と左足に突き刺さり、ガルダの右手と左足は、もうガルダのではなくなった。
「へ…? あ…あああああああ!!」
取れた右手と左足を見て、ガルダは泣きぶ。
対して、俺様は無表だ。
「本當は殺してやりたいが、ルージュはお前を殺さなかった。 
だから俺様もお前を殺さない。 片手と片足を失って生きる方が、よほど辛いだろう?」
「こ、殺してくれぇ!」
「嫌だね。 お前はこれから牢屋にれる。 そこで壽命で死ぬまで、その苦痛に耐えながら働いてもらう」
そう言うと、俺様はガルダを気絶させ、龍族の村へとガルダを運んだ。
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8 144神様にツカれています。
おバカでお人よしの大學生、誠司がひょんなことからド底辺の神様に見込まれてしまって協力するハメに。 振り回されたり、警察沙汰になりそうになったりと大変な目に遭ってしまうというお話です。折り返し地點に來ました。 これからは怒濤の展開(のハズ)
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