《2度目の人生を、楽しく生きる》96話 「部分龍化」
薄暗い窟。 その窟の奧にある、広い空間。 天井には大きなが空いており、湯気が出ていないが、れれば溫かい湖もある。
そう、ここは俺達がレイニクスと修行をしていた場所だ。
そして、この場所で俺は…
「改めて、さっきは本當にごめん! セレスとグリムを毆っちまった……」
セレスとグリムに頭を下げていた。 2人は「もういい」と言ってくれたが。
いいわけがない。 2人は俺を助けようとしてくれたのに、俺は勝手に暴走して2人を傷つけた。
特にセレスには、気絶する程のダメージを與えてしまった。
「もういいよルージュ君」
「…いーや! ダメだ! ちゃんと謝らせてくれ。 俺は、やっちゃいけない事をしたんだから…」
俺は、土下座をしようと姿勢をし下げた瞬間…
グリムを押しのけ、右手を後ろに引いたセレスが俺の目の前に來た。
「えっ…? セレ…」
「「もういい」って言ってるでしょ!!!」
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「ぶあぁっ!!?」
セレスは、助走をつけたまま俺の顔を思い切り毆ってきた。 俺のはそのまま飛んでいき、溫かい湖に落ちた。
「ぶはっ! はぁ…はぁ…セレス、急になにを…」
「ルージュ、あまりしつこいと嫌われるわよ。 私達はもういいって言ったんだから、もう謝らなくていいの!」
「いや…でも……ひっ!!?」
ふとセレスを見ると、俺を睨んでいた。 まるで鬼のような威圧だ。
「”でも”? なにかしら?」
「……いや、なんでもないです」
そう言って湖から出ると、グリムが俺の肩に手を置き、セレスに聞こえないくらいの小さな聲で
「…セレスは昔からああなんだ。 僕が何かあるたびにセレスに謝ってたからかな? だから、セレスは何回も謝られるのが嫌いになったんだよ」
と、苦笑いで言ってきた。
「…そうか」
なら、もう謝るのはやめよう。 その場にあぐらをかいて座り、遠くでじゃれあっている2匹の子狼を見る。
し経つと、湖の側にが集まり、レイニクスが現れた。 今まで何をしてたのだろうか。
「さて、まずはルージュとグリム。 龍化出來てよかったな。 まさか2人同時に龍化するとは思ってなかった」
レイニクスがそう言うと、セレスは下を向く。 
そんなセレスを見たレイニクスは
「心配するなセレス。 お前もすぐに龍化出來る。 この3人の中で一番戦いの才能があるのはお前だ」
「……はい」
「次にグリム。 正直、1番驚いた。 龍化してすぐに龍の力を使いこなせる奴はなかなか居ないぞ? グリムは龍との相がいいみたいだな」
「えっ!? あ、はい!」
グリムが戸いながら返答する。
さて……この流れからすると…
「んで、最後にルージュ」
「…はい」
「お前。 もう龍化しない方がいいかもしれん」
「……え」
な、何を言ってるんだ…?
「ここまで龍化の特訓をしてもらったのに申し訳ないが、まさかあそこまで暴走するとは思ってなかった」
「ま、待って下さい! ルージュ君は強いです! 龍化が出來るようになればもっと強くなれるはずです!」
グリムがそう言ってくれるが、レイニクスは困ったような顔をする。
「…でもな、人には才能ってのがあるんだ。 ルージュには龍の力の才能がない。 だから、龍の力を最大限に活かす事が出來ないんだ」
「また次暴走しても、私達が止めます!」
「んー…でもなぁ…」
俺は、あのシルエットから言われた事を思い出していた。
部分的に龍化をする。 そんな事が可能なのか分からないが、出來なければ弱いままだ。
出來なければ、強くなれない。
「……ふぅ…」
俺が龍化をした時、何を考えていた? そもそも、龍化をする條件とはなんだ?
俺が龍化をする事が出來たのは、多分、ガルダがルナ・ウルフを殺した事に対する怒りからだろう。
なら、何かに対して怒れば龍化出來るのかと言えば、そうではない。
現に、同じく龍化したグリムは、怒るどころか俺を救おうとしていた。
グリムは、セレスを守り、俺を救う為に龍化したんだ。
だからきっと、龍化に必要なのは、明確な目的だ。
誰かを守りたい、誰かを救いたい、誰かを倒したい、誰かを殺したい。
などの強い目的があれば、龍化をする條件は整うんだろう。
だとすれば、部分龍化は、強い目的を持ちつつ、龍の力を制しなければいけないという事になる。
要は、手加減しなければいけないのだ。
完全な龍化が100%だとすると、20%くらいに抑えて龍化をすればいい。
「……よし」
俺は、昔から覚えが異常に良かった。 聞いた事や見た事は忘れないし、スポーツも大の事は見ただけで出來た。
だから、やり方さえ分かれば、部分龍化なんて、”簡単”だ。
俺にとっての強い目的、それは……
”もう誰にも、負けたくない。 負けないくらいの強さ”を手にいれたい。 それだけだ。
「……部分龍化!!!!」
…來た。 あの時と同じ覚だ。 今なら誰にも負けないと思える。
だが、あの時と唯一違うのは、暴走していないという點だ。
ゆっくり目を開けると、俺のイメージした通り、右腕だけに黒い鱗が纏っていた。 部分龍化、功だ。
「る、ルージュ君…!?」
「何よ…それ…!?」
「おいおい…噓だろ…」
3人が驚いている中、レイニクスだけは、他の2人とは驚きのレベルが違かった。 まるで、信じられないものを見ているようだ。
「…これなら、暴走しません。 完全な龍化程ではないですが、多は龍の力を使えます。 だから、龍族の戦い方を教えて下さい!」
頭を下げる。 全てはレイニクス次第だ。
「…まぁ、暴走しないんなら、斷る理由はねぇな。 分かった、教えてやる。 だが、一つ教えてくれ、ルージュ、お前、部分龍化を誰に教わった?」
「え?」
「さっき初めて龍化したお前が、いきなり龍の力を部分的に纏うなんて発想が出來るわけがない。 誰かに聞いていたはずだ。
だが、誰かに聞いていたなら、お前は龍化の事を知ってたはずだ。
なのに、俺様の龍化を見た時のお前は、ただ純粋に驚いていた。 何故なんだ?」
急な質問に戸ってしまう。 確かにそうだ。 
本來なら部分龍化なんては思いつきはしない。
俺が部分龍化を知ったのは、シルエットに教わったからだ。
だが、シルエットの事を話しても理解してもらえるのか…?
「…ルージュ、お前…初代剣聖、ケンザキ・リュウヤと何か関わりがあるのか?」
「え…?」
ケンザキ・リュウヤ…? 何故ここでその名前が出るんだ?
「俺様が知る中で、部分龍化が出來る奴は1人しかいない。 ケンザキ・リュウヤだけだった。 だが、今目の前に全く同じ部分龍化をしたお前がいる。 何か知ってるなら教えてくれ」
「し、知らないです…ケンザキ・リュウヤなんてあった事がないし…」
俺がそう言うと、レイニクスは殘念そうな顔をした。
「…そうか。 分かった。 それじゃあ、気を取り直して、これから龍の力の修行を始める」
まさか……あのシルエットの正は…ケンザキ・リュウヤなのか…?
いや、そんな訳がない。 ケンザキ・リュウヤなんて、俺は知らないんだから。
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