《2度目の人生を、楽しく生きる》99話 「待ちんだ再戦」

ついに、ついにこの時がやってきた。 ローガを倒しに行く日だ。

いつものように4人で朝食を食べ、各々準備をして広場に集まった。

「よし、それじゃあ、俺様からお前らに渡すものがある」

そう言うと、レイニクスは何もない場所から剣を4本出現させた。 

俺たちが最初に貰った剣とは明らかに雰囲気が違う。

「この剣は”青龍刀”。 七龍に選ばれた人間に贈られる特別な剣だ。 そこらへんの剣とは比べにならないぜ? 」

グリムに一本、セレスに一本渡し、俺には二本の青龍刀が渡された。

「ルージュには二本やる。 二刀流だからな」

「ありがとうございます!」

こんな強い剣を二本も……

実際に握ってみると、とても軽い。 だが、斬れ味はよさそうだ。

「それじゃあ、村に行くぞ。 もう皆集まっているらしいからな」

そう言うと、レイニクスは俺達から距離を取り…

「ふぅ…久しぶりにあの姿になるな。 ……完全龍化!!」

俺は、開いた口が塞がらなかった。 さっきまで、そこには人間がいた。

だが、さっきまでレイニクスがいた場所には、巨大な青い龍が佇み、俺達を見下ろしている。

「え…レ…レイニクスさん…?」

『どうだ、驚いたか? 俺様は水龍。 こっちが本當の姿なんだよ』

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「す、凄い! まさかこんな近くで見られるなんて思わなかったわ! ねぇグリム!」

「うん! 激だよ!」

セレスとグリムは目をキラキラさせている。

レイニクスは、大きな翼を俺達の前に下ろした。 翼は、坂のようになり、レイニクスの背中に通じている。

『乗れ。 この姿で村まで行く』

この日、俺は初めて、本の龍の背中に乗った。

レイニクスは俺達を乗せると、勢いよく飛び上がり、天井の大きなから飛び出した。

それから、あっという間に村についた。 村には、武裝した龍族が10人集まっていた。

レイニクスは俺達を地面に下ろすと、また人間の姿に戻った。

「レイニクス様、お待ちしておりました」

レイニクスを見ると、集まった10人が一斉に膝をついた。

そして、俺の前に村長がやってきた。

「これが、今我々が用意できる最大の戦力じゃ。 この部隊はお前が好きに使って構わん。 お前がリーダーじゃ」

村長がそう言うと、10人の龍族が一斉に俺を見る。

皆大人なのに、俺がリーダー…

「…ルージュ。 指示しなきゃ!」

小聲でセレスが言ってくる。 指示…指示か…

「え、えっと…今日は集まってくれてありがとうございます! 

俺の目的は、魔剣使いのローガを倒し、ローガに囚われている大事な人達を助け出す事です。

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なので、皆さん、俺に力を貸して下さい!」

俺は、10人の龍族に頭を下げる。 すると、皆大聲で「オオオオオォッ!!」と言ってくれた。

「先日、部隊の1人をトバーブルクに向かわせたんじゃが、ローガらしき人を目撃したらしい。 魔剣使いは有名じゃからな、顔は知れ渡っておる。

その人は何もない場所に屋敷を出現させ、そこにっていったらしい」

村長が言う。 何もない場所に屋敷……

「間違いありません。 そいつがローガです」

「場所は部隊の全員が知っておる。 案は任せるといい」

よかった。 これで探す手間が省けた。

俺は深呼吸をし、この場に來てくれた人達を見る。

見ず知らずの俺に戦力を貸してくれた村長。

こんな子供の為に集まってくれた10人の龍族達。

俺を強くしてくれたレイニクス。

…そして、俺を聖龍連合の一員にし、一緒に戦うと言ってくれたセレスとグリム。

「では、行きましょう! トバーブルクへ!!」

また、全員が雄びをあげ、レイニクスが龍の姿になる。

レイニクスの背中に俺、セレス、グリム、10人の龍族が乗り、勢いよく飛び上がる。

そのまま、レイニクスはトバーブルクへ向かう。

『ローガはどこら辺にいるんだ?』

「はい! 自分が見た場所は森の中に居ました。 周りに建はなかったので、思い切りやっても問題はないはずです」

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龍族の1人が、レイニクスの質問に答える。

森の中…ドーラ村の時と同じか…

あの時は無様に、何も出來ずに負けたが、もう負けはしない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ねぇねぇルージュ、ルージュが助けたい人ってどんな人達なの?」

…あぁ、そう言えば言ってなかった。

「カノンっていう妹と、レーラ、シーラ、ケイプさんっていう姉だよ。 まぁ、本當の家族じゃないけどな」

「家族じゃないのかい?」

「あぁ。 でも、家族みたいに大事な人達だ。 皆、俺を信じて屋敷から逃がしてくれた。 だから、絶対に助け出す」

「その人達がルージュを逃がしてくれたから、私達はルージュに會えた。 これはきっと運命よ!!」

セレスが目をキラキラさせて言う。 運命か……確かに、どこに辿り著くか分からない空間を通って、たまたま龍族の村に辿り著いて、たまたまセレスとグリムに會って…

確かに、これは運命と言えるかもしれない。

そんな話をしていると、龍族の1人が「見えて來たぞ!」と言った。

遠くを見ると、壁に囲まれた大きな國が見える。 あれがトバーブルクだろう。 そして、それらを森が囲んでいる。

「あそこにローガが……」

つい、拳に力がる。 ずっと倒したかった相手と、もうすぐ會える。

それから、ローガを見たと言う龍族の案で、俺達は空を移していた。

そして、ようやく見つけた。 ローガの屋敷だ。 今は明化させていないみたいだ。

レイニクスは、ローガの屋敷の真上を飛び回る。

『あれか…よし。 行ってこい!』

レイニクスが言うと、俺は素早くレイニクスの背中から飛び降りた。 後ろにはセレスとグリムが著いてきている。

そして、ローガの屋敷へと急降下していく。

「部分龍化!!」

両手を龍化させ、右手に黒い炎を纏い、巨大な拳の形に変化させる。

「一斉に行くぞ! セレス、グリム!」

「うん! 龍化!」

「えぇ! いつでも行けるわ!」

グリムは龍化し、セレスは右手を屋敷に向けている。

「炎拳ナックル・フレアァァッ!!」

「土龍魔・ロックマシンガン!」

「風龍魔・ゲイルブラスト!」

黒い炎拳と、グリムのロックマシンガン、セレスのゲイルブラストがローガの屋敷に向かって放たれる。

だが、それは屋敷に當たることはなく、なにか見えない壁のようなに阻まれた。

見えない壁に弾かれた後、俺達3人は屋敷の近くに著地し、龍化を解く。 そして、俺達の後ろにレイニクスが著地し、その背中から10人の龍族が降りてくる。 

レイニクスは人間の姿に戻り、屋敷の方を見る。

「結界が張られてるな。 かなり警戒されてるみたいだぞ?」

…結界か、俺達3人の魔でもダメとなると厄介だな…

「んじゃ、俺様は近くで見てるから、頑張れよ」

そう言って、レイニクスは屋敷とは反対の方へ歩いていく。

「えっ、レイニクスさんは戦わないんですか?」

「何言ってんだルージュ。 俺様がったらすぐ終わっちまうだろ。 俺様はあくまでサポートだ」

レイニクスは何もしないらしい。 …まぁ、レイニクスがいないと勝てないようじゃ、強くなんてなれないよな。

俺は、皆の前に出て屋敷に向かって大聲でぶ。

「ローガ!! お前を倒しに來た!! さっさと出てこい臆病者!!!」

ゆっくりと…屋敷の扉が開いた。

……そして、紫の髪をした、細の男、ローガが姿を現した。

「やぁ、ルージュ君。 隨分と遅かったね、仲間集めご苦労様」

「カノン達は無事だろうな?」

「もちろん、いっぱいお仕置きしてやったよ。 魔方陣でね」

ムカつく笑みでローガが言う。 …カノン達には辛い思いをさせてしまった。

だから早く、自由にさせてやろう。

「ルージュ君の戦力は…君を合わせて13人か。 僕の戦力を見せてあげよう」

そう言うと、ローガの周りの空間が歪み、何もない場所から武を持った人間が現れた。

數は20人。 だが、おかしい事がある。

……皆、目が虛ろだ。 

「どうかな? 皆僕が殺した人間達さ! 」

「…死人って事か?」

「そう! 死人だから逆らわない! 従順で強い! 最高の戦力だ」

死んだ人間を無理矢理戦わせる。 ……理解出來ない。

やっぱりこいつは、とんでもないクソ野郎だ。

ローガは、魔剣を握り、気持ち悪い笑みを浮かべる。

「さぁ、始めようかルージュ君。 どっちが強いか決めよう。 結界は解いた、戦闘開始だ」

「部分龍化。 ーー風加速ウィンド・アクセル」

ローガが結界を解いた瞬間。 両腕を龍化し、風加速を使って一瞬でローガの橫へ飛ぶ。

ローガは一瞬俺を見失ったらしく、目を見開いている。

驚くよな。 前は何も出來ずに負けたガキが、急にこんなことをして來たらさ。

ローガは、ようやく橫にいる俺に気づいたが、もう遅い。 俺を両手に持った剣に黒炎を纏わせている。

「雙炎斬そうえんざん!!」

「くっ…!」

ローガは、後ろにいた2人の死人の襟を摑み、炎斬にぶつけた。

2人は悲痛なび聲をあげた後、塵となって消滅した。

…なるほど、こいつらは戦闘不能になると消えるのか。

代わりか、酷いことするんだな」

「”魔剣グラビの名の下に、沈め!”」

ローガが魔剣の力を使うが、俺のには何も起きない。 やっぱり、思った通りだ。 

龍化の時は魔剣の力は効かないらしい。

「な、何故だ…何故魔剣の力が効かない!?」

「龍が剣ごときに負けると思うか? お前は俺より下って事だ」

そう言うと、ローガは珍しく顔を真っ赤にした。

「死人達よ! こいつを殺せ!」

魔剣がり、今までいていなかった死人達が一斉に襲いかかってきた。

馬鹿だなローガは、どうやら俺しか見えてないらしい。

「龍神武・紅波!」

「土龍魔・ロックブラスト!」

セレスとグリム、10人の龍族達が一気に死人達を蹴散らした。

死人達は今度はセレス達の方へ向かっていき、戦いが始まった。

俺は、ローガに剣を向け

「ローガ、一対一だ。 どっちが強いか、はっきりさせようぜ」

ローガは、歯を食いしばり、怒りをあらわにしている。

「…いいだろう。 魔剣使いとして、君を殺してあげよう。 …魔裝!」

ローガの雰囲気が変わった。 ローガの著ている服が変わり、紫の服と、紫のマントになった。 見た目はそれだけだが、何が明らかにさっきと違う。

「ルージュ君。 君は本當に僕と似ている。 他人の為に戦う。 昔の僕にそっくりだよ」

「俺とお前が似てる? 馬鹿にするな。 俺はお前みたいなクズじゃない」

「いいや。 君もきっかけさえあれば僕と同じクズになる。 …そうだな…例えば、助けたい人間が殺された時とか」

その瞬間、俺は思い切り火球を撃った。 だが、ローガは火球を回避し、距離を詰めてきた。

そして、魔剣を振るってくる。 俺は片方の剣で魔剣を防ぎ、もう片方の剣でローガに剣を振り下ろすが、ローガは後ろに飛んで回避する。

「助けたい者がいなくなった時、もしくは、大切な人に裏切られた時、どうなると思う?」

「…知るかよそんなの」

「どうでもよくなるんだよ。 全てがどうでもよくなる。 自分が他人からどう思われようが、自分がどうなろうがどうでもいい」

「黙れ。 そんな話に興味はない! 炎斬!」

「砂連槍スピア・マシンガン」

10本の砂槍が、炎斬を消し、俺に向かってくる。

「石連弾ロック・マシンガン!」

石連弾で砂槍を全て相殺し、風加速でローガの元へ走る。

…一気に終わらせる!

「雙龍舞…!」

二刀流で連続でローガを斬りつける。 だが、ローガは全て避けたり魔剣で防いでいる。

…何故? 何故當たらない…?

「これが君の切り札か。 よくここまで強くなったものだね…だけど、あまり魔剣使いを甘く見ないほうがいい」

ローガは、連撃を避けながら俺の腹を思い切り蹴った。 俺は地面を転がり、ローガから離れてしまう。

「やっぱり君。 僕と似てるよ。 自分の力じゃ何も出來なくて、別の力に頼る。 

僕は魔剣の力に頼り、君は龍の力に頼った。 しかも、その力に頼った理由は2人共同じ、”大切な人を守りたいから”。 ここまで同じだと、逆に笑えるね」

ローガが大切な人を守りたいから魔剣の力を頼った…? あいつがそんな事をする奴には見えない。

「しかもお互い力を完全に使いこなせていない。 僕はどうやら、この魔剣に嫌われているみたいだしね。 

君は何故、龍の力を完全に使いこなせないのかな?」

…俺が龍の力を使いこなせない理由…

「君が僕と同じなら…”心の奧では誰かを恨んでいる。” とかかな?」

俺のが震えあがった。 …何故こいつに分かったんだ…?

今のは俺がシルエットに教えてもらった事だ。

「お、図星かい。 1つ教えてあげよう。 この世に、他人だけを考えられる人間なんていない。 皆、自分が一番大事なんだよ」

「…何が言いたい」

「君が他人を助けるのは、自分のためって事だよ。 君は僕と同じ、”自分さえよければいい”って考えの、どうしようもないクズさ!」

「石連弾!!」

「砂連槍。 ほら、図星だからそうやって熱くなる」

くそっ…! なんか調子を狂わされる。 こいつの話なんて無視すればいいのに、なんでけ止めてんだ俺は!

「…魔剣グラビ。 僕の壽命をしあげよう。 だから、しだけ僕に力を貸してくれ」

ローガが魔剣にそう言うと、魔剣が強くった。 そして、ローガの姿が消えた。

次の瞬間、俺の右腕が魔剣に斬られた。

「あああぁっ!!」

右腕からが流れる。 何とかくが、かすと痛い。 なんでいきなり早くなった…?

「無重力ゼロ・グラビティ!」

魔剣がり、ローガの近くにあった巨大な巖が宙に浮いた。 巨大な巖は空中で停止し、かなくなる。

「君にはグラビの力は効かない。 でも、使い道はいろいろあるんだよ」

ローガが魔剣を振り下ろすと、巨大な巖が俺に向かってきた。 

…マズい、右腕が使えないと炎拳が使えない。 大発エクスプロージョンも両手じゃないと安定しないし…

「龍神武・紅波!」

すると、いつの間にか來ていたセレスが巨大な巖を砕いた。

「ルージュ、大丈夫?」

「…あぁ、助かった」

なんとか立ち上がり、左手だけ剣を持つ。

右腕をかすと痛みが凄い、だったらもう使わないほうがいい。

かなり戦いづらいが、仕方ないだろう。

「もう大丈夫だ、セレスは死人達の相手を頼む」

「え、でも…一緒に戦った方が…」

「ダメだ。 ローガは俺が倒す。 1人でやらなきゃ…強くなった意味がない」

そう言って走り出す。 そして剣に黒炎を纏わせて斬りつける。

だが、ローガの魔剣に防がれる。

一旦後ろに下がり、風加速でローガの後ろに回って突きをするが、ローガは読んでいたらしく、簡単に避けられた。 

「炎…!」

「砂剣サンド・ソード」

ローガが左手に砂の剣を出し、魔剣と砂剣の二刀流になる。

そしてそのまま、俺の剣を弾き飛ばした。

「武、無くなったね」

ローガは2つの剣で、俺の左腕を突き刺した。

「ああアァァァッッ!!」

あまりの痛みにんでしまう。 …マズい…頭が真っ白になってきた。 を流しすぎたみたいだ。

何も考えられない。

ローガは、俺のを思い切り蹴り飛ばした。 俺は地面を転がり、ローガはゆっくりと近づいてくる。

すると、突然俺の首飾りの水晶がりだした。 そして、2匹の子狼、ソルとルナが出てきた。

「な…何してんだソル! ルナ! 早く戻れ…!」

2匹の子狼は、ローガの方へ走っていき、ローガの両腕に噛みついた。

ローガの両腕からはが流れるが、ローガは平気そうだ。

「なんだいこの2匹は、……邪魔だよ」

そう言って、ローガは2匹を地面に叩きつけ、思い切り蹴り飛ばした。

「ルージュ君、君の負けだ。 君の死も、僕の軍隊にれてあげるよ。 砂連槍!」

10本の砂槍が、俺に向かってくる。

槍を見るとあれを思い出す。 何も出來ずにルナ・ウルフが死んだ、あの時を。

そして、地面に倒れている俺の目の前に、ルナとソルが、俺を守るように立った。

「お…おい…? ルナ、ソル…逃げろ! 死ぬぞ!」

だが、2匹はかない。 ヤバい、このままじゃ2匹が俺を庇って死んでしまう。

セレス達を見ると、皆死人達と戦っていた。

…このままじゃソルとルナが死ぬ…また、目の前で死なせてしまう……

だが、1つだけ、手段がある。 それを使えば、この狀況をひっくり返せるかもしれない。

俺が馬鹿だった。 手加減して、ローガに勝てるはずがないだろ。 周りの被害を考えて、ローガに勝てるはずがないだろ。

「……龍化!!!」

俺は、顔以外の全を龍化した。 

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