《2度目の人生を、楽しく生きる》103話 「小さな英雄VS剣豪」

ディノスと戦闘の約束をしてから、俺はずっと戦略を考えていた。 これまで戦ってきたディノスを思い出し、何度も何度もシュミレーションした。

セレナ、カノン、セレス、グリムは俺に「がんばって!」と言ってくれた。 だから、格好悪いところは見せられない。

そして、今、俺は何度もディノスと戦った草原に來ていた。 俺の前ではディノスが準備をしている。

……そして、俺とディノスの周りには、俺と関わった全ての人が集まっていた。

「…さて、俺はもう大丈夫だぞ。 ルージュはどうだ?」

「あぁ、俺も大丈夫だ」

そう言って、背中から青龍刀を抜き、構える。 グラビはまだ使わない。

グラビは、出すべきタイミングで出す。

『へぇー、あれがルージュのお父さんかぁ〜、強そうだね!』

あぁ、めちゃくちゃ強いぞ。 一度も勝てた事がない。

『わぁ! それは凄いね…じゃあ、今日勝とう』

そのつもりだ。 

グラビと一通り會話した後、ディノスを見る。

ディノスも俺と同じように片手剣を構えていた。

「ルージュ。 これは手合わせではない。 単純な力比べだ、互いを高めるんじゃなくて、どっちが上かを決めるものだ。

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まさかこんなに早くする事になるとは思わなかったがな」

…あぁ…鳥がたってきた。 神経が研ぎ澄まされているのが分かる。

間違いなく、絶好調だ。

「全力でかかって來い! ルージュ!!」

「大発エクスプロージョンッッ!!」

最初から全力で、ディノスがいた場所を発させる。 辺りには砂埃が舞い、視界が悪くなる。

俺は目を閉じ、耳に神経を集中させる。

………ザッザッザッ…と、地面を走る足音が、右から聞こえた。

「そこだな! 石連弾ロック・マシンガン!」

足音が聞こえた方向に石連弾を撃ったが、手ごたえがない。 もし石連弾が當たったなら衝撃音がなるはず……

という事は…

俺は、素早く後ろを振り返る。 すると案の定、ディノスが居た。 ディノスは一瞬驚いた顔をしたが、そのまま剣を振り下ろしてきた。

俺は自分の剣でディノスの剣を防ぐ。

だが、力で勝てないのは分かってる。 だから、長い間鍔迫り合いはしない。

「突風ウィンド!」

剣を持ってない左手をディノスね腹に當て、突風を放つ。 それにより俺とディノスの距離が離れ、同時に砂埃が消える。

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「…驚いたぞルージュ。 前と戦い方が全然違う。 楽しくなってきたぞ。 竜巻サイクロン!」

ディノスが竜巻を撃ってきた。 相変わらず凄い威力だ。

そろそろいいだろう。

「部分龍化!! そして…炎斬えんざん!」

俺は右手を龍化し、黒い炎斬でディノスの竜巻を2つに斬り裂いた。

そのまま風加速でディノスの近くに移し…

「炎拳ナックル・フレア!」

「ぐっ…! 威力が…上がっている…!!」

ディノスはなんとか剣で炎拳を防いでいるが、ジリジリと後ろに下がっている。

後ひと押し…!!

「吹っ飛べぇっ!!」

魔力をさらに込めて炎拳を大きくすると、ディノスが炎拳の威力に負け、後ろに大きく飛ばされた。

チャンスだ!

「風加速!」

ディノスが地面に著く前にディノスに追いつき、ディノスの背中を蹴り上げる。 ディノスはさらに上に上がる。 

…さぁ、出番だぜ。

「來い! グラビ!!」

俺の左手にが集まり、紫の剣が現れた。

ディノスは俺の剣を見て目を見開いた。

さぁ、見せてやろうぜグラビ。 俺たちのデビュー戦だ!

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『おっけー! 一緒に頑張ろう!』

「グラビ! 父さんの近くの重力を倍に!」

「ぐっ…!? なっなんだ…!?」

空中にいるディノスの近くの重力を倍にすると、ディノスが凄まじい速度で落下してきた。

グラビの能力の1つ。 重力作。 持ち主の力量によって出來る事が増えていくらしい。 どうやら今の俺には簡単な重力作と、軽いを浮かせる程度しか出來ないらしい。

だが、それでも十分、ようは使い用だ。 

ディノスが強く地面と激突し、地面に小さなクレーターが出來る。

「くっ…が重い…!! だが、慣れればいいだけだ。 石巨人ストーン・ゴーレム!」

ディノスが地面に手をつけると、ディノスの周りの地面が盛り上がり、三の巨人が現れた。

大きさはディノスの倍くらいだ。 石の巨人か……

どうやって対処すればいいんだ…?

『ルージュ! 石巨人は氷魔法に弱かったはずだよ!』

氷…? なら対処出來るぞ!

の石巨人が拳を振り下ろして來る。 思い切り後ろに飛んで回避したが、拳が當たった場所は深くえぐれていた。

…あれは當たったらまずいな…

「行くぜ…龍神剣奧義…!!」

「なっ!? 龍神剣だと!? お前、短期間でどこまで…!!」

2つの剣を強く握り、一の石巨人の前に行く。 石巨人は拳を振り下ろしてきたが、石巨人の腕に乗り、そのまま…

「雙竜舞!!」

石巨人のを切り刻んだ。 俺が切った場所が徐々に凍っていき、最後には石巨人は巨大な氷の塊になった。

その後は氷の塊を思い切り蹴って二目の石巨人の元へ飛び、両手の剣に氷魔法を纏わせる。

「雙氷斬そうひょうざんッ!!」

至近距離で氷の斬撃を當て、二目の石巨人を凍らせる。 

地面に著地すると、後ろにいた三目の石巨人にを摑まれてしまった。

「やべっ…!」

石巨人はそのまま俺を強く握る。 俺のが大きい手に握りつぶされそうになる。

やばいぞ……! きがとれない。

『ルージュ! 重力作だよ! こんなに大きななんだ、腕を重くすれば制が崩れるはずだよ!』

「なるほどな…! グラビ! 石巨人の腕の重力を3倍に!!」

グラビが紫ると、突然石巨人が勢いよく両腕を地面にぶつけた。

その反で俺をつかんでいる力が緩み、その瞬間に俺は石巨人の腕から逃げ出した。

「龍神剣奧義・雙竜舞!!」

腕が持ち上がらず、く事が出來ない石巨人を切り刻み、大きな氷の塊にする。

…よし…これで全滅か。

「ルージュ…お前…どうやって急にそこまで力をつけた…?」

「…いろいろあったんだよ。 目的を果たすには強くならなきゃいけなかった」

本當に々あった。 ローガに敗北し、屋敷に監され、屋敷で自分の無力さを痛し、屋敷から逃がしてもらって龍族の村に行き、森でサバイバルをして、そこで目の前で俺を守ってルナ・ウルフが死んだ。

もう、自分のせいで誰かが死ぬのは嫌だ。 傷つかれるのも嫌だ。

だから…!

「俺はもっともっと強くならなきゃいけない。 だから、認めてもらうぜ父さん!!」

「…來い。 ルージュ!」

「グラビ! 石巨人を浮かせろ!」

グラビがり、三の石巨人が宙に浮いた。

…なるほど…を浮かせるには魔力を大量に使うのか…!

これは長時間浮かせるのは無理だな…

「行け!」

浮かせた石巨人をディノスの元へ向かわせる。 ディノスは、剣を持っている右手を後ろに引き、姿勢を低くする。

「龍神剣・紅こうらん!」

ディノスが素早く走り、俺の近くに來ると、右上から凄まじい速度で剣を振り下ろしてきた。

なんとか2つの剣で防いだが、ディノスは一旦後ろに下がり、今度は突きをしてきた。

「くっ…!!」

青龍刀をディノスの剣に當て、狙いをずらしたが、ディノスの剣は俺のり、右脇腹からが出てきた。

どうやら完璧には防げなかったらしい。

「龍神剣・紅円こうえん!」

ディノスは剣を両手で持ち、左から右に薙ぎ払ってきた。

2つの剣で防いだが、流石に力負けし、俺は地面を転がってしまった。

「強えぇ…」

「竜巻サイクロン!」

立ち上がろうとしていると、ディノスが竜巻を撃ってきた。

先程と同じように炎斬で竜巻を斬ったが、竜巻の先にディノスが居なくなっていた。

「ど、どこだ…?」

『ルージュ! 上!』

グラビに言われ、上を見ると、ディノスが剣を構えながら空中から俺に向かって落下してきていた。

「雙炎斬そうえんざん!」

空中に雙炎斬を撃つが、ディノスが空中でを回転させて雙炎斬を避ける。

「龍神剣奧義・紅龍斬こうりゅうざん!!」

確か…前は最後に空中から來たディノスの紅龍斬でやられたんだっけ。 

前はそれで気絶してしまったんだ。

「雙炎斬!!」

だが、今回はそうはいかないぞ。

ディノスが振り下ろしてきた剣を、炎を纏わせた雙剣で防ぐ。 

だが、やはり力では勝てそうもない。 徐々に押されているのが分かる。

「グラビ…! 父さんの剣を浮かせろ…!」

徐々に、ディノスの剣が俺から離れていった。 

「なっ…!?」

ディノスが剣から手を放し、剣が宙に浮いた。

落ちてきているなら、上にあげてしまえば威力は下がる。

だが、を浮かせられる時間は短い。 効果が切れ、ディノスの剣が空から落ちてきた。

だが、ディノスに剣を渡す気はない。

「炎拳ナックル・フレアァァッ!!」

至近距離でディノスに炎拳を當て、ディノスを遠くに飛ばす。

今のディノスは剣を持っていない。 

今が攻め時だ。

「全力攻撃だ…!!」

右手を上にあげ、大きな黒い火球を5個作る。

ディノスはヨロヨロになりながら立ち上がり、右手を前に出す。

「隕石雨メテオ・レイン!」

「突風巖ジェット・ロック!」

5つの大きな巖が、凄まじい速度で隕石雨とぶつかる。 そして、隕石を砕き、そのまま俺の元へ向かって來た。

「風加速ウィンド・アクセル!」

風加速で巖を避け、ディノスの方へ走る。 そして剣に炎を纏わせ…

「雙炎斬!」

走りながら雙炎斬を撃つ。 だが、ディノスはその場をかない。

「水壁ウォーター・ウォール!」

ディノスの前に水の壁が出來、炎斬が消されてしまった。

『うわぁ…予想以上に強いね…』

だろ? どう攻めればいいんだ…

『うーん…力も剣も向こうが上だね。 ルージュが勝ってるところってスピードと使える魔の多さくらいだよ』

ふむ……スピードと魔か…確かにそうだよなぁ…

ディノスには剣で勝てる気がしないし、魔も相殺される。

今出來るのは、グラビの重力作くらいだ。

「……ん? 重力作…? あ!」

『どうしたの? 何か思いついた?』

「あぁ。 圧倒的に父さんを上回る方法を思いついたぜ。 グラビ! 俺を浮かせろ!」

『えぇ!? 魔力が盡きるよ!?』

父さん相手に魔力をケチってたら勝てねぇ! グラビ、頼む!

『…分かったよ。 じゃあ行くよ…!』

グラビがると、俺のが宙に浮いた。 俺の殘りの魔力を考えると…せいぜい浮いてられるのは5分くらいか。

5分で、決著をつけてやる!

宇宙には、重力がない。 だから宇宙飛行士達は常に浮いているんだ。 

俺は昔考えた事がある。 "宇宙で早くくにはどうすればいいんだろうか"と。

俺はその時、突風が吹けば風船のように飛ぶんじゃないか? と考えた。

だが、宇宙には風なんてない。

今の俺は、まるで宇宙飛行士だ。

昔の俺の考えは正しかったのか、その実験を今、ここでしよう。

「突風ウィンド!」

両手を後ろに向け、突風を撃つと、俺のは凄まじい速度で前に進んだ。

まるでロケットだ。

ディノスは俺を見て目を見開き、すぐに避けようとしたが、もう間に合わない。

実験は、功だ。

「雙炎斬!!」

至近距離で雙炎斬を當てた後、地面を蹴ってまた宙に浮く。

まだまだいくぜ!

「突風!」

「くそっ…速すぎる…!」

空中で何度も突風を使い、空中を飛び回ってディノスを混させる。

そして急降下し、ディノスの背中を蹴り、また宙に浮く。

「石連弾ロック・マシンガン!!」

空中を飛びながらディノスに石連弾を撃ちまくる。 剣がないディノスは走り回るしかない。

だが、今の俺は先回りする事が出來る。

ディノスが向かっている先に降り…

「炎拳ナックル・フレア!」

炎拳を撃つと、ディノスは両手をクロスしてガードした。

今の俺が使える魔の中で、炎拳の威力は上位にる。

そして、炎拳の強みは片手でできるという事。 なら、もう片方の手でも炎拳を撃てば威力は2倍になるはずだ。

一旦ディノスから距離を取り、宙に浮く。

助走をつければ威力はし上がる。 俺が浮いていられる時間はあとし、これで決める!

「行くぜ父さん! 突風! 」

両手を後ろに向け、突風を使ってディノスの元へ向かう。

「さらに…突風!」

向かっている途中でもう一度突風を使い、さらにスピードをあげる。

そして、右手と左手に炎の拳を作る。

「なっ…!? 両手…だと…!?」

流石に焦ったらしく、ディノスは地面に手をつける。

だが、魔を使っている時間は與えない!!

「くらえ…! 雙炎拳ツインナックル・フレアアアアァァッッ!!!」

「鋼壁メタル・ウォール!!」

ディノスが直前に作った鋼壁に雙炎拳が當たる。 だが、徐々に鋼壁にヒビがってきた。

そして、ようやく鋼壁が壊れた。

最後に見たディノスの顔は、優しく微笑んでいた。

大量の砂埃が舞い。 ディノスの事を確認する前に、俺は前のめりに倒れてしまった。

どうやら、魔力切れらしい。

俺はそのまま、意識を失った。

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