《2度目の人生を、楽しく生きる》104話 「また會う日まで!」
「………ん…? ……はぁ…またか…」
目を覚ますと、俺は自室のベッドの上に寢かされていた。
これで何度目だろうか。 なんか俺戦うたびに気絶してる気がするぞ。
……まぁ、気絶してるって事は、俺はディノスに負けたって訳だよな。
んー…全力出しても勝てなかったか…龍化も覚えたし、グラビの力も借りたってのに…
「あ、そうだ。 グラビ? グラビ聞こえるか?」
だが、頭の中で聲はしなかった。 それどころか、魔剣が現れもしない。
…あれ? まさか見捨てられた!?
「そっ、そうだ! ソル! ルナ! 出て來てくれ!」
首飾りのクリスタルにれるが、なんの反応もない。
……噓だろ? ソルとルナまで…?
俺は、痛むを無理やりかし、リビングへと続く扉を開けた。
「な、なぁ! ソルとルナとグラビが……ん?」
「きゃー可いわねー! ほらおよー!」
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「クー!」
「ガルッ!」
リビングにると、フローラとセレナが笑顔でソルとルナを抱きかかえていた。
ソルとルナは、俺を見つけると2人の腕から飛び降り、俺に抱きついてきた。
…って! 今抱きつかれたら…!!
「いてえええええええええっっっ!!!」
アルカディア家に、俺の絶が響き渡った。
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あれから、ソルとルナに顔を舐められながらセレナに回復魔法をかけてもらい、なんとか回復した。
ちなみに、セレス達は今買い出しに行っているらしい。 
「あ、そうだ母さん! グラビ知らないか? あの紫の剣!」
まぁ知らないだろうと思ったが一応聞いてみると、フローラは庭の方を指差した。
「グラビちゃんなら庭で父さんと一緒にいるわよ?」
と言ってきた。 ……ん? 待て…グラビ"ちゃん"? なぜフローラはグラビがの子だと知っている?
そんな疑問を抱きながら庭に行くと、フローラの言う通りディノスがいた。 いたんだが、ディノスのほかにもう1人いる。
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紫の長い髪のの子が、俺の青龍刀を持ってディノスと戦っている。
しかも、の子は剣がかなり上手い。
「お! ルージュ! 目が覚めたのか!」
ディノスが俺に気づき、戦闘をやめて俺の元に來る。 そして、紫の髪のの子も一緒に來る。
近くで見ると、の子は俺よりもし長が高い。
多分年上だろう。
「やっほールージュ! やっぱりディノスは強いね!」
「……誰?」
俺がそう問うと、紫の髪のの子は一瞬驚いた顔をした後、腹を押さえて大笑いした。
「あははははっ!! ルージュ、ボクの事分からない?」
笑いすぎて涙目になりながら、の子が聞いてくる。
…いや、そんな事言われても……え? ボク…?
「ま、まさか…グラビ…?」
「せいかーい! この姿では初めましてだね!」
…え…噓だろ? だって…グラビは剣で…人間じゃないはず…
「まぁ言いたい事は分かるよ。 簡単に言うと、ボクはずっと人間になれる事をルージュに隠してたんだ」
「なんでだ?」
「ルージュだけなら教えても良かったけど、ルージュの周りの人間はどんな人か分からないしね。 信用出來るまで黙ってたんだ」
なるほど…って事は、ディノス達は信用出來る奴らたて訳か。
「ルージュよ。 本當に強くなったな」
そう言って、突然ディノスが俺の頭をでてきた。
……でも、結局負けたからなぁ…
「まさか引き分けるとは思わなかったぞ」
「……え? 引き分け?」
「ん? 聞いてないのか? 俺とルージュは同時に気絶したらしいぞ?」
…え? 同時に気絶…? って事は…俺は初めてディノスに……
「…はは……マジか…」
昔から手も足も出なかったディノスに、今日やっと引き分けまで持っていけた。
勝てた訳じゃないが、これは大きな進歩だ。
「だから約束通り、ルージュ。 お前の旅を認めよう」
「ありがとう、父さん」
「あぁ、剣魔學園には俺から話をしておこう」
そうか、學校にも話を通さなきゃいけないんだよな。
次俺が帰ってきた時は、俺は中等部一年生か。
3年はやはり長いな……
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あれから、セレス達が買い出しから帰ってきて、皆で夕飯を食べた後、俺の部屋にセレナ、カノン、グリム、セレス、グラビが集まった。
ケイプ、レーラ、シーラはフローラの手伝いをし、レイニクスはディノスと2人で話している。
「そっかぁ…明日からルージュ旅に出ちゃうんだね」
「あぁ、3年間みっちり修行してくるよ。 セレナ、悪いけどクリス達に説明頼めるか?」
「うん。 任せて、皆寂しがるだろうけど、ルージュが決めた事だもんね」
クリス達に何も言わずに行くのは申し訳ないが、それは3年後にちゃんと謝ろう。 
「でも、ルージュ、あまり無茶しちゃダメだよ? ルージュ怪我する事多いんだから」
セレナがちょっと怒りながら言ってくる。 
……たしかに、俺怪我する事多いよな…怪我するたびにセレナに回復してもらってた気がする。
しかもこれから回復魔法を使える人がいない訳だから……うん。 怪我しないようにしよう。
「ははは! セレナ、ルージュの事はボクに任せて! ちゃんと見張っておくからさ」
「うん! グラビが居るなら安心だね!」
いつのまにか、セレナとグラビは打ち解けていた。 夕食の時普通に會話してたからびっくりしたぞ。
「グラビだけじゃないわ、私とグリムもいるし、ルージュだけに無茶はさせないわよ」
「うん。 ルージュ君が暴走したら、僕達が止めてあげるからね」
セレス、グリム、グラビ。 この3人はとても頼りがいのある人達だ。 何か困った事があったら遠慮なく頼ろう。
「さて! そろそろ荷纏めなきゃな! 明日は龍族の村によってからソーディアス王國に行くんだろ?」
「うん、そうだよ。 龍族の村で僕とセレスの荷を纏めて、それから出発だね」
「楽しみねー!」
「あぁ! ソーディアス王國には剣聖がいるんだもんな!」
俺とセレスとグリムが笑いながら話していると、突然セレナが立ち上がった。
「…ごめんルージュ、ちょっとお散歩してくるね?」
「え? あ、おう! 気をつけてな!」
「うん!」
そう言って、セレナは部屋を出て行った。 …なんで今散歩なんだろうか。
セレナが散歩に出かけてから、ずっと荷を纏めていたが、セレナが全然帰ってこない。
もう30分は経ってるぞ?
「セレナ、遅いな…」
「はぁ……」
俺が小さく呟くと、グラビが大きな溜息を吐いた。
「…自分で気づくまで待とうと思ったけど、ダメそうだね。 ルージュ、今すぐセレナを探しに行って」
「え? なんでだ?」
「いいから、早く行って。 ほらほら!」
グラビが俺の腕を摑んで立ち上がらせ、無理やり玄関に連れて行く。
セレス達もついてきたが。
「セレス達は部屋に戻って、ルージュだけで行ってきて」
と言われ、渋々部屋に戻って行った。
俺はとりあえず靴を履き、外に出る。
「なぁグラビ? セレナは一…」
「セレナに會えば分かるよ。 だから急いで行ってあげて。 セレナが行きそうな場所、しらみつぶしに探すんだよ?」
「……分かった」
そう言って、アルカディアを走り出す。
…って言っても、セレナは散歩に出かけた訳だし、探すのは無理じゃないか? 最悪の場合れ違いになる可能だってあるぞ……
それと、グラビの言った事も気になる。 セレナに會えば分かるってなんだ?
「…居ないなぁ…」
あれから、商店街、セレナの家を回ったが、セレナは居なかった。
……あとは…あそこくらいか。
最後にセレナが行きそうな場所……河川敷へと向かった。
河川敷に著くと、暗くてよく見えないが、誰かが座っているのが分かる。
足音を立てないようにゆっくり近づくと…
「……うぅ…ぐすっ…」
河川敷に座っている金髪のの子、セレナが小さな聲で泣いていた。
セレナの泣き聲を聞いた瞬間、俺はセレナに近寄り、肩を摑む。
「セレナどうした!? 何があった!?」
「…うぇ…? る、ルージュ…!?」
セレナな涙目で俺を見る。 こんなに泣くなんて珍しい…一誰がこんな…!
「セレナ、とりあえず落ち著け、何をされたのかは分からないけど、もう大丈夫だから、な?」
「…ち…ちが…!」
「え、!? でてるのか!?」
セレナの腕と足を見るが、どこにも怪我はないし、も出てない。
「ち、違うの…私、なにもされてない」
「え? そうなのか? ならなんで泣いて……あっ…」
ここでようやくグラビが言った意味が分かった。
なぜ俺は今まで気づかなかったんだろう。
…友達との別れなんて、寂しくない訳ないだろ……
「…悪い。 今やっと分かった」
俺は、優しくセレナを抱きしめる。 すると、セレナは鼻をすすりながら俺のに顔を埋める。
そして、俺の服を両手で摑み…
「…私、怖かったんだよ…? ルージュが急に居なくなって、何日も帰ってこなくて…」
「…あぁ…」
「…そして、やっと帰ってきたら、凄く強くなってて…私、置いていかれたような気持ちになって…」
「…悪い…」
「…それで明日から3年間も旅に出るって…急すぎるよ…!」
セレナが、本音を言ってきた。 俺が帰ってきた時はきっと無理してたんだろう。
…今のこれが、セレナの本當の気持ちなんだろう。
「…泣かないって決めてたけど…やっぱり無理だよ…」
「セレナ…勝手に決めちゃってごめん。 でも、俺は強くなりたいんだ。 もう、誰かが傷つくのを見るのは嫌なんだよ」
誰も傷つけさせない。 皆を守れる力がしい。 
自分を守る力じゃなくて、誰かを守る力がしいんだ。
「…誰かを守る為なら…ルージュ自は傷ついてもいいの…?」
「え?」
セレナが俺から離れ、涙目だが力強い瞳で俺を見る。
「ルージュはいつも戦いの後は傷だらけ。 初めて王都で魔剣使いと戦った時も、今回魔剣使いと戦った時も。 
他人の為に頑張れるのはルージュの良いところだけど、傷つかれると周りの人は不安になるんだよ…?」
「……」
なにも言えなくなる。 確かに、俺は戦いの後は傷だらけだ。
フロウと戦った後も、ローガと戦った後も。
「だから、私も強くなる!」
「…ん?」
セレナが突然、拳を握って言う。
「多分ルージュはこれからも無茶すると思うし、絶対に治らないと思う」
「うっ…」
「だから、そんなルージュの負擔をしでも減らせるように、私も強くなる! そうだなぁ…まずは剣魔學園で1番になっちゃおうかな!!」
笑顔で言っているが、目と聲は本気だ。
……本當に、初めて會った時とは変わったな…
「よし! もう泣くのはやめた! 私もルージュが帰ってくるまで剣魔學園でいっぱい勉強して強くなるよ!」
「…はは…それは楽しみだな」
「うん! 3年後に再會した時、ルージュがびっくりするくらい強くなってやるんだから!」
もう、セレナの涙は止まっていた。 今のセレナを昔のセレナが見たらどう思うだろうか。
きっと驚くだろうな。
そして、今の俺を昔の…日本にいた頃の俺が見たらどう思うだろうか。
きっと…「馬鹿らしい」と言って、つまらない顔をして勉強を開始するんだろう。
だから、昔の俺に言ってやる。
「この世界は最高だ!!!」
「わぁ!? 急にどうしたのさ…?」
「いや、なんでもない! 帰ろうぜ?」
「うん!」
その後、アルカディア家に帰った後、俺は涙目のセレナを見たフローラとセルミナに問い詰められた。
…あれは…マジで怖かった。
だって、涙目のセレナを見た瞬間、2人同時に「…何をしたの?」ってかなり低い聲で言ってきたんだぞ?
俺どころか、セレナも震え上がっていた。
……まぁ、セレナが説明してくれたから、いいけどね。
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そして、夜が明け、ようやく、旅に出る日が來た。
俺は荷も背負い、ドーラ村の近くの草原に全員集まった。
「ルージュ! しっかり修行して強くなってくるのよ!」
「ルージュよ。 お前がいない間、父さんも修行をしておく。 だから帰ってきたらまた、戦おうな」
フローラとディノスがそう言って俺の事を抱きしめる。
「ルージュ君。 セレフィーナを変えてくれてありがとう。 セレフィーナがあんなに笑うようになったのはルージュ君のおかげよ。
修行頑張ってね!」
「ルージュ君。 僕は君を尊敬するよ。 その歳で英雄になるなんてね。 君がこれからどうなるのか、とても興味がある。 だから、修行頑張って」
セルミナとアレスが微笑みながら言う。
「ありがとう! 絶対に強なって帰ってくるよ!」
レイニクスが龍の姿になり、セレスとグリムが先に乗る。
俺はセレナの前に行き。
「じゃあセレナ、行ってくる」
「うん! お互い頑張ろうね!」
「あぁ! それじゃあ…」
俺とセレナは同時に拳を突き出し…
「「また會う日まで!」」
お互いの拳をコツンとぶつけた。
その後、俺はレイニクスの背中に乗り込み、レイニクスは空高く飛び上がった。
皆、見えなくなるまで手を振ってくれていた。
…これから3年か。
『どうしたのルージュ? やっぱり寂しい?』
そりゃ寂しいさ。 でも、3年後また會えるんだ。
寂しさもあるけど、楽しみでもあるかな。
『そっか! それじゃあ、一緒に強くなろうね』
あぁ、よろしくな、相棒。
そう言うと、グラビは『…へへっ…』と照れ臭そうに笑った後、話さなくなった。
「セレス、グリム。 これからよろしくな」
「えぇ! 皆で強くなりましょ!」
「うん! ルージュ君に負けないくらい強くなるよ!」
次にドーラ村に帰るのは3年後。 つまり俺が13歳になる頃だ。
帰ってきた時、皆がどう変わってるのか、とても気になる。
…もし3年も修行して、俺が1番弱かったら恥ずかしいな……
絶対に、強くなってやる。
「待ってろよ…ソーディアス王國!!」
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四章 年期 兄妹の絆、兄の役目
終
次章、青年期
【書籍化】勝手に勇者パーティの暗部を擔っていたけど不要だと追放されたので、本當に不要だったのか見極めます
勇者パーティの斥候職ヒドゥンは、パーティ內の暗部を勝手に擔っていたことを理由に、そんな行いは不要だと追放され、戀人にも見放されることとなった。 失意のまま王都に戻った彼は、かつて世話になった恩人と再會し、彼女のもとに身を寄せる。 復讐や報復をするつもりはない、けれどあの旅に、あのパーティに自分は本當に不要だったのか。 彼らの旅路の行く末とともに、その事実を見極めようと考えるヒドゥン。 一方で、勇者たちを送りだした女王の思惑、旅の目的である魔王の思惑、周囲の人間の悪意など、多くの事情が絡み合い、勇者たちの旅は思わぬ方向へ。 その結末を見屆けたヒドゥンは、新たな道を、彼女とともに歩みだす――。
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