《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》プロローグ 森での一戦

眼が赤く、全が黒いオオカミのような魔獣――ブラックウルフが俺めがけて、わすかの如く左右に移しながら駆けてくる。

そして、赤い眼が俺を捉えるとブラックウルフは、自慢の鋭く尖った牙を剝き出す。さらに、加速し噛みつくために俺に向かって飛び出してきた。

速いな。でも、避けきれないほどじゃない。

「グワァウっ!」

「よっと」

俺は半をずらし攻撃を難なく避ける。避けられたブラックウルフは、勢いのまま前へ數歩進みこちらへ振り返ろうとする。

その隙を逃すようなことはせず、俺は攻撃へ移る。

「――火よ」

ただ一言、そう呟くと全から蒼く輝く流が現れる。それは炎のように揺らめき、川のように流れている。人はそれを――魔力・・と呼ぶ。

魔力は俺の意思に従い、宙をなぞるように流れ始める。俺はただ、水路を引くように魔力の流れる道筋を示し、魔力の流れを調整するだけだ。

俺は魔力の方をチラリと見やる。そこには、幾何學模様をした魔法陣が完していた。ここまでは一瞬だ。

そして先ほど完した魔法陣から、燃え盛る炎が創り・・出される。近くにいるためか、その熱量がひしひしと伝わる。

俺は創り出した炎をり、矢の形にする。全部で10本ほどだ。

ブラックウルフの首元へ狙いを定めると、ブラックウルフと目が合う。躊躇ためらいはない。ここ數年はずっと狩りをしてきた。

殺さやらなきゃ、殺さやられる。それが森の掟。森で學んだことだ。

俺は勢を戻しつつあるブラックウルフに炎の矢を、1本る。ブラックウルフは、野生の本能で反的にそれをかわす。そこへすかさず、2本足元へる。

ブラックウルフは、休む暇もなく避けるために後方へ跳ねる。俺はさらにをめがけて3本矢をる。

宙に浮いてしまっているブラックウルフは何とかをひねり、またもやかわす。だが、ここまでは全て牽制。最後に殘りの4本を、宙で完全にきが取れなくなっているブラックウルフへ放つ。

矢は、頭、首、に的確に貫通し、息のを斷つ。貫通した痕がし焦げている。

「ふぅー。……ちょっと過剰だったかな? まぁ、しょうがないよね」

「お疲れ様、ユーリくん」

「ありがとう、セレーナ」

木のから見ていたセレーナが俺のそばまで來ると、ニコニコとした笑顔で聲をかけてくれる。

「ユーリくんはやっぱりすごいね!」

「全然そんなことないよ。龍の儀も近いし、もっともっと特訓しなくちゃ」

そう、龍の儀は今の戦いよりきっと厳しい。殘りない時間で、できるところまで備えたい。

「ふふっ。そうだね、約束のためにも頑張ってね! ……私の王子様っ!」

「……っ! うんっ、可い姫の仰せのままに」

不意打ちはずるい。でも、可いから許す。

「……あぅー」

ボフンっという音がしそうなほど、一瞬でセレーナの顔が赤くなった。セレーナは褒められるのに弱い。

「そろそろ帰ろうか」

俺はそう言ってから左手を差し出す。

「……うん!」

セレーナは頷き、右手で俺の左手を握り返す。

そうして俺たちは來た道を戻り、俺たちの集落――龍人・・の集落へと帰るのであった。

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