《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》19 昔話

「おはよう、ユーリ」

「おはよう、おかあさん! きょうは『ねむりのよる』だね!」

そう、今日は闇の月60日『眠りの夜』だ。

集落の小さい子でも知ってる一つの昔話がある。

――『始まりの燈火』と『眠りの夜』

これは生命を創り出された龍神アミナス様と世界を創り変えた六柱龍の話。

生命龍の龍人でおられる龍神アミナス様は新たな世界が生まれたのを知られました。そこで、龍神アミナス様は6人の龍人『六柱龍』を創られました。

火の柱龍グリューエン。

水の柱龍クヴェル。

風の柱龍ルフト。

土の柱龍ボーデン。

の柱龍シュトラール。

闇の柱龍アーベント。

六柱龍はそれぞれ、何もない世界を創り変えることにしました。

しかし、六柱龍の力は強大です。同時に力を使えば世界が壊れてしまいます。

そこへ、龍神アミナス様は順番に力を使いなさいと仰いました。

まず、火の柱龍グリューエンから力を使うことにしました。

火の柱龍グリューエンは始めに、世界に火を燈しました。これが世界の始まりであり、一年の始まり、後に『始まりの燈火』と云われるようになったのです。

そして、順に水の柱龍クヴェル、風の柱龍ルフト、土の柱龍ボーデン、の柱龍シュトラール、最後に闇の柱龍アーベントが力を使いました。

六柱龍は世界を見渡しました。そこには暖かなが差し込んでいて、花は唄うたい、鳥は踴おどり、空と大地と海が微笑ほほえみ、ありとあらゆる生命が謝かんしゃしています。

六柱龍は喜びました。龍神アミナス様は六柱龍を労いろうすると、休息をとりましょうと仰いました。

ならばと、闇の柱龍アーベントは休息の間だけ夜を創り出しました。これを一年の終わりとし、後に『眠りの夜』と云われるようになったのでした――

「ユーリ、私は『眠りの夜』まで武龍団の仕事がある。悪いがラルージュさんのところで、それまで待っていてくれるか?」

そっか、お母さんは仕事なのかぁ……。仕方ないよね。大人しく待っているとするか。

「うん! まってるね、おかあさん。おしごとがんばって!」 

俺は寂しさをじさせないように、明るく元気に言う。

「ありがとう、ユーリ。なるべく、できる限り、急いで、帰ってくるからな!」

そんなに急がなくてもいいけど……ありがとう、お母さん。やっぱり、お母さんにはわかっちゃうのかな?

母、恐るべし!

「それじゃ、また後でな」

「うん、いってらっしゃい!」

俺は腕をばし、大きく手を振ってお母さんを見送る。

***

「キュウキューウ」 (ゆーりくん、うたげたのしみだね)

「うん! そうだね」

『眠りの夜』は夕暮れから巨樹の前の大広場で、集落の全員が集まり宴を開く。みんな、お互いに一年間の勵ふんれいを労って一年が終わるのを迎える。宴では豪勢な料理が並び、歌い、踴り、奏で、みんなでどんちゃん騒ぎだ。

そして夜が深まるとき、集落中の燈りを消す。そうして『眠りの夜』が終わる。

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