《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》30 ビリラビット

「よっと……ほっと……」

俺は森の中をハヤブサの如く、駆け抜ける。森は俺の遊び場だ。最近は木々の違いがわかるようになり、森のどこにいるのかも把握できる。

「ビリョンッ! ビリョンッ!」

「お、あいつは……」

下級魔獣のビリラビットだ。下級にしてはそこそこ強い方で、種族魔法<下級>の『ジュウマンボルト』が使える。ちなみに種族魔法とはその種族のみが使える魔法のことだ。

ビリラビットのは中々に味で、そのらかさから子供に人気だ。ビリラビットの甘辛唐揚げはお母さんの得意料理の一つだったりする。

俺はできるだけ気配を消して、ビリラビットの近くにある木の上から見下ろす。

よし、気がついてない。うーん、今日はあの作戦でいこう。

稽古を始めて3ヶ月。武は無駄なきが減り、魔も自分なりの戦が組み立てられるようになると、お母さんは森での訓練を稽古に加えた。

容としては、障害が存在するなかでの移、気配を消して辺りの探索、魔法と武による魔獣の狩りなどがそうだ。

最近では、集落から近くの森――表層地帯――なら食料確保のために魔獣の狩りをすることも増えた。一日の大半を森で過ごすこともある。

「ビリョビリョン」

ビリラビットは辺りをキョロキョロ見渡すと、すぐ下に生えている雑草を食べ始める。どうやら、お食事タイムらしい。

チャンス! 今だっ!

「つちよ!」

俺は木から飛び降りながらぶ。すると、ビリラビットの真下にビリラビットよりもし大きい魔法陣が現れる。魔法陣が消えると同時に、ビリラビットの下にある土が掘り下がり、落としとなった。

「ビリョ!?」

ビリラビットは落としにはまり、踠もがいている。

俺は著地すると、ビリラビットからし距離があるところで、手を前に出して構えた。

「こおりよ、ゆけ!」 『アイスニードル』

手の前から鍋蓋サイズの魔法陣が現れると、そこから小さい針のような氷が數十本もの數にわたり放たれる。放たれた氷の針はビリラビットに突き刺さった。

ブスブスブスブスブス!

俺はビリラビットに近づく。突き刺さっていた氷の針はすでに消えていて、ビリラビットも鳴くことができないほど弱っている。

「かみなりよ」

俺はビリラビットにれると雷魔法を発させ、トドメを刺す。

魔獣を殺すことに関して、生きるためだとわりきってはいるつもりだが、まだ慣れない。

……きみのは殘さず全て食べるからね。

俺はお母さんから教えてもらった抜きを、先ほど狩ったビリラビットに施す。それから、あらかじめ持ってきた縄を使いビリラビットを縛ると、それを背負って俺は集落に向かってまた走り出した。

***

「いただきます!」

俺は両手を合わせ、謝の気持ちを込めて言う。

「ふふ、召し上がれ」

俺は目の前のビリラビットの甘辛唐揚げをフォークで刺す。そして、そのまま口の中へと唐揚げは吸い込まれる。

「おいしいっ!」

プリプリで、ジュシーで、そしてこの甘辛いタレがなんとも言えない。うまうまー!!

「そうか、よかった。今日はユーリが狩ってきてくれたビリラビットを使ったから味しいのかもな」

「うんっ!」

「ふふふ。森の恵みに謝してたくさん食べるんだぞ!」

うん。森の恵みに謝だ。味しいご飯を作ってくれるお母さんにも謝だ。

「はーい!」

俺は元気よく返事をし、再び味しいご飯を楽しむのであった。

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