《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》39 大鹿

最初に小手調べとして、使い慣れた火魔法を使う。イメージはテニスボールほどの火の球を5つ創り、頭に一つ、に一つ、前足に二つ當てるといったじだ。

「火よ」

俺の目の前に魔法陣が現れる。そこからイメージした通り、5つの火の球が創り出される。ここまでは1、2秒程度だ。狩りでは判斷力の早さが求められる。迷っていては獲は逃げてしまう。

だからと言って無策に攻撃するのは愚策。一手一手を確実に狩るために繰り出すことが大切だ。そして、タイミングも等しく重要である。相手が油斷している隙をつくのが基本中の基本。

しかし、今回は事が違う。俺が森で雷魔法<中級>『サンダーフォルム』の修行していたときだ。

し先の方で一本の木が倒れた。何事か気になった俺は、警戒しながらも現場に向かう。到著すると、そこには綺麗に切り倒された木が転がっていた。

辺りを見渡そうとしたその時、背後に大きな殺気をじた俺は咄嗟とっさに斜め前に飛び転ぶ。そして、すぐさま振り返るとそこには中級魔獣――ビッグディアーがいた。別稱は『大鹿』で、その巨は一般的な鹿の約3倍以上ある。先ほどまで俺がいた場所にはビッグディアーの角が威武堂々と存在する。

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危なっ! 後ろから來るとか卑怯だぞ! まぁ、狩りのときは俺も後ろから攻めるけどね。

ビッグディアーは魔獣の階級で言えば下から3番目――下から最下級、下級、中級、上級、最上級、絶級、神級――だが、今いる表層地帯の中では上位の魔獣であり、それなりの力をもつ。今の俺でも油斷できない相手だ。

そして現在、対峙している問題のビッグディアーというと、俺の放った火の球を自慢の角で弾き、ものともしていない様子だ。ビッグディアーの角は、大剣のように大きく鋭い。木を切り倒したのも頷ける。

うーん、効いてないかー。なら、試そうと思ってた魔法コンボ――俺が組み立てた魔法の戦――をお見舞いしてやろう!

「グオォー!」

どうやら、行を起こさない俺にしびれを切らしたのかビッグディアーが咆哮する。さらに俺のことを睨にらみつけた途端、こちらに向かって突進しだす。

俺は構え、魔法を使うタイミングを図る。ビッグディアーの角があとしで俺に屆くところまで迫ってきた。

――今っ!

「求めるは雷」 『サンダーフォルム』

俺は魔法を発させると高速で橫にき、相手の視界から消える。ビッグディアーは止まり、視界から消えた俺を探しているようだ。

「強化」

ビッグディアーの橫側に現れると、俺は腕に強化魔法を使う。そして、俺のと同じくらい大きい角が生えている、その頭を全力で毆りつける。

ゴンッ!

っ! なんだよこのさ。強化魔法使って毆ったのに、骨を砕いたじが全然しない。

毆られたビッグディアーは、怒りをぶつけるように角を橫に払う。俺は後ろに跳びのき、その攻撃を避ける。さらに後ろに下がり、ビッグディアーから距離をとる。

接近戦は危険だな。やっぱり、遠距離から魔法できを止めて、攻撃をしよう。

「求めるは自然。蔓つるよ、巻きつきけ」 『ネイチャーロープ』

ビッグディアーの足元に魔法陣が現れると、そこから蔓がび出し腳からグルグルと巻きつく。蔓は首まで巻きつき、ビッグディアーを縛りつける。

よし、きを止めた。

「グオォー!!」

しかし、ビッグディアーはその巨を激しくかし抵抗する。<下級>程度の力しかない蔓は耐えきれず、ブチブチと千切れ始めてしまう。

あー、まだ<下級>の自然魔法じゃ、無理だったか。ひとまず、蔓が全て千切れる前に機力を奪おう。

「風よ」

風魔法で風の刃をいくつか創り出すと、それをビッグディアーの腳に向かって飛ばす。

「グオォっ」

見事命中した風の刃はビッグディアーにダメージを與える。ビッグディアーはけずにはいるが、まだ立ち続けている。俺は萬が一を想定して、土魔法で足を完全に固定させる。

「土よ!」

足を土で固められてしまったビッグディアーは苦悶の鳴き聲を出している。この勝機を逃さないために俺はより集中力を高め、次に使う魔法をイメージする。

これで決める!

「求めるは氷。氷よ、杭となりて貫け」 『アイスパイル』

ビッグディアーの真上に魔法陣が展開される。魔法陣からは冷気が流れ出ているのが見えたその瞬間――ビッグディアーの首を氷の杭が襲う。

氷の杭はビッグディアーの首を突き抜け、地面に深々と刺さっている。が氷を伝い流れていく。

これは、命の奪い合い。俺は奪った者として責任をもって、こいつのを自らのにすることを誓う。

「今日は疲れた……帰ろう」

俺はしっかりとビッグディアーを抜きし、背負って帰るのであった。

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