《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》40 雪合戦

「ねぇねぇ、2人は雪って知ってる?」

俺はセレーナとアニモに聞く。

「キュウ?」 (ゆき?)

「ゆきってなんだぁ? 食いもんか?」

セレーナは首を傾げ、アニモは食べだと勘違いしているみたいだ。

「雪っていうのはね……白くて、冷たくて、楽しいものだよ」

俺は2人に説明するが、上手く伝わっていないようだ。それはそうだろう。白くて、冷たくて、楽しいものとは想像もつかない。

「キュウ? キュウキュー」 (楽しいの? 見てみたーい)

「おらっちも見てみたい!」

2人は俺の話を聞いて興味が湧いたらしく、雪をご所だ。前の世界なら雪を降らせるなんて無理な話だが、この世界ならそれができてしまう。なんせ、魔法があるんだもの。

「わかった! ちょっと待っててね」

俺は2人にそう言うと、手を上にかざし集中する。もちろん、魔法を使って雪を降らせるつもりだ。俺は最近、習得した氷魔法の一つを使うことにする。

「求めるは氷。雪よ、降れ」 『スノー』

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俺が詠唱を終えると、俺たちの頭上高くに特大の魔法陣が現れる。そして直ぐに、その魔法陣から白く、冷たい――雪が降りだす。

雪はユラリユラリと、まるで白い妖が踴っているかのようにゆっくりと落ちる。次第に白い妖たちが増えていく。俺は辺りを見渡す。

魔法陣が展開されていない所には、もちろん雪が降らないわけで、俺たちがいる場所が別世界にじられた。

「キューウ」 (わぁー)

「……冷たっ!」

セレーナは上を見上げ、降りそそぐ雪を眺めている。アニモというと雪をり、その冷たさに驚いていた。

ふふっ、もうし強めてみるか。

俺は魔法陣に魔力をさらにそそぐ。込められた魔力が増えたことによって、さらに雪が強まる。降り積もる雪が、俺たちのいる世界を白く染めていく。

し寒くなってきたかな。

「キュウキューウ!」 (ユーリくん、いっぱい降ってるね!)

「ふふっ、そうだね」

「(ブルブル)……さ、寒い」

あ、そっか。アニモは火龍の龍人だっけ。なら、あの魔法を使おう。

「アニモ、ちょっとだけじっとしてて……求めるは火。火よ、其の者を包むとなれ」 『ファイアーフォルム』

俺はアニモに対して、魔法を使う。この魔法は『サンダーフォルム』の応用で、火魔法のバージョンに仕上げたものだ。もちろん、溫度は調節してあるので、暖かいとじる程度だ。

「おぉっ! ユーリ、暖かいぞ! 魔法か?」

「うんっ、そうだよ。セレーナもする?」

「キュウ! キューウ」 (うんっ! するー)

「うん、いくよー……求めるは火。火よ、其の者を包むとなれ」 『ファイアーフォルム』

セレーナにも魔法を使う。魔法陣がセレーナの足元に現れ、上へと通過していく。セレーナを完全に通過し終えた魔法陣は、役目を終えたとばかりに消え去る。

セレーナの全を覆うように、薄く広がる炎が存在する。魔法が功したようだ。

「キューウ」 (ポカポカだぁー)

「ふふっ、俺も使おう……求めるは火。火よ、我がを包むとなれ」 『ファイアーフォルム』

自分自にも魔法を使う。3人分、魔法を使っているがこのくらいなら制は問題なさそうだ。炎が俺を包み、溫めてくれる。

うん、いいね。

「よし、みんなで雪合戦をしよう!」

「キュウキューウ」 (どんなことするの?)

「戦うのか?」

察しがいいね、アニモくんや。その通り! 雪合戦とは生死をかけた仁義なき子供達の戦い――ウソです――なのだよ。

俺は簡単にルールを説明して、始めることにする。チームに分けず、それぞれが敵だ。みんな、ある程度のところまで距離を取っている。

容赦はしないぜ! だが、アニモを真っ先に攻めさせてもらう! だって、セレーナには當てられないもん。

「いくよー……よーいスタートっ!」

俺は足元の雪を素早く集め、雪の玉を作る。両手に玉を持ち、アニモに向かって投げつける。

「とうっ!」

「なっ! ……やったな、ユーリ! お返しだ!」

アニモは顔面に雪玉をけて、ブルブルと頭を振り雪を落とす。そして、反撃とばかりに俺に向かって雪玉を投げつけてくる。

「うわっ」

俺はかし、背中で雪玉をける。セレーナの方を見ると、ヨイショ、ヨイショといった調子で雪玉ならぬ大雪玉を作っていた。

せ、セレーナ、それで何をする気なんだ……。いくら玉を作って投げると言っても、その大きさはちょっと違うと思うなぁ。

「キューウ!」 (いくよー!)

セレーナは俺に向かってあの大玉・・を投げるつもりらしい。可らしいおて手で、大玉を持ち上げるとセレーナはひょいっと投げる。

きたー……わぁーおおきいー。

「(ズドンッ!)……」

大雪玉が俺の頭の上から落ちる。今、俺の狀態は大雪玉から頭だけが出ているといったじだ。雪だるま人間になってしまった。

「キュー、キュウキュウ?」 (わぁー、ユーリくん大丈夫?)

「うん、大丈夫……」

「わぁっはっはっは! ユーリだるまだ!」

む、なんだとアニモ。……セレーナの姉やっちゃってくだせい。

俺はセレーナにアイコンタクトで意思を送る。セレーナは俺に気がつき、頷く。これぞ、小さい頃からずっと一緒にいるからこそなせる力だ。

「キュウ、キュー」 (はい、アニモくん)

「(ズドンッ!)……な、なんでおらっちまで……」

アニモも、俺と同じ雪だるま人間となった。さすがはセレーナの姉だ。もはや、職人技と言える。

「はははっ、アニモだるま、だね」

「いったなー! ……あれ、けねぇ」

「キュウキュウ」 (うふふふふ)

セレーナは雪合戦でも最強だったのであった……。くしゅんっ! 風邪には気をつけよう。

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