《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》13 星空の下
目が覚める。
「知ってる天井だ」
「ん? よくわからないが起きたか」
いまいち伝わりづらいボケを近くにいた母さんに聞かれてしまう。
顔が熱くなるのを無視して、何故自分は家で寢ているのか思い出す。
そうか、俺は決闘の後寢ちゃったのか。
見切りの負荷から、睡眠による心の回復を本能的に求めたからだと思う。修行中も眠気に襲われることはあった。
「調はどうだ?」
「うん、大丈夫」
「本當に大丈夫か?」
「う、うん、大丈夫だよ」
「無理してないか?」
「無理してないから安心して母さん」
「そ、そうか……」
やっと引き下がってくれた。
久しぶりに母さんの過保護っぷりをじる。でも、心配してくれるのは素直に嬉しい。
「夕飯にしたらし遅いが、食べるか?」
外を見るとすっかり夜になっていた。
しかし、お腹の方はバッチリ空いている。
「うんっ」
***
しばらくして、テーブルに様々な料理が並んでいく。
空腹の効果も相まって、ものすごく味しそうに見える。実際、味しいのは確実だけど。
Advertisement
フリージアお姉ちゃんがつまみ食いをしたくなる気持ちがしわかった。
そんなことを考えていると最後の料理が到著する。
母さんが椅子に座ったのを確認してから俺はすぐさま「いただきますっ!」と言う。
「召し上がれ」
そう言ってニコニコと笑っている母さんを橫目に、俺は目の前の料理へと腕をばす。
夢中で料理を味わいつつ、時々思い出したように「味しい!」と言う俺を見つめていた母さんもしばらくしてから一緒に食べ始める。
久しぶりの一家団欒は幸福と満腹でいっぱいだった。
***
食後、「星を見に行かないか?」とわれて母さんの後ろをついて行く。
歩いている間はほとんど會話はなく、著いた場所は西の丘だった。
ここは集落よりし高い位置にあり、見晴らしもいい。星を見るのに丁度いい場所だったりする。
母さんは丘の上の方へと行くと急に寢転んだ。
「ユーリも早く寢てみろ」
「え?」
母さんに言われて俺も寢転んでみる。
「――――すごい」
満天の星が輝いて、ありふれた表現だけど寶石がちりばめられているような見惚れるほどの綺麗さだった。
「綺麗だと思わないか?」
「うん、すごく綺麗」
「ここはな、私のお気にりの場所なんだ」
母さんは星空を眺めながら言った。
俺も真似するように星空を眺める。
「なぁ、ユーリ」
「ん?」
「私のことは好きか?」
俺は突然の問いに驚いて思わず橫で寢ている母さんの顔を見る。
冗談で言っているのではないことが一目でわかった。
もう一度母さんの問いを自分の中で繰り返す。
考えるまでもなかった。
でも顔を見ながら言うのはどうも照れ臭いので、俺は再び星空に顔を向けて言う。
「好きだよ――――」
「私も大好きだ」
まさかの母さんの返しに俺は恥ずか死ぬ寸前だった。そして、誤魔化しのない言葉に同じくらい嬉しさでいっぱいだった。
「今日の決闘は完全に私の負けだ」
その言葉には悔しさが多分に含まれているが、それとは違う気持ちもあるような気がした。
「ユーリが勝ったら集落から出ることを認める……そういう約束だ。私に二言はない。ただこれだけは約束してくれ」
母さんは上を起こし、俺の目を真っ直ぐに見る。一瞬、何かを堪えるように顔を歪ませてから、今まで見たことがないほどのらかな表で言う。
『絶対に生きて帰ってこい』
集落から出た者に帰る場所はない。
そんなことは母さんだってわかっていて、それでも『生きて帰ってこい・・・・・・・・』と言った意味を俺は心の中へ大切に刻み込む。
帰りを待っていてくれる人がいる。それだけで人は強くなれる。
俺はそれを知っている。
俺が終わりなきあの森から諦めずに帰って來られたのは、帰りを待っていてくれる人がいると、そう思ったからだ。
「うん、絶対に生きて……生きて帰って來るから……だから、ご飯作って待っててよ」
俺は目の端から流れるものを無視して笑う。
母さんは堪え切れなくなって、思いっきり泣きながら、自分の聲が丘中に響き渡ることも気にせず俺を抱き締める。
ユーリ、ユーリと何度も呼び母さんは泣く。
その姿に俺も塞き止めていたものが外れて、のままに泣いた。
思いっきり泣いた。
今までにないくらい泣いた。
悲しくて、辛くて、そして嬉しくて。
『俺を育ててくれて、をくれて、ありがとう――――いってきます』
読んで頂きありがとうございます!!
申し訳ありません。
調不良とかではないです、作者が悪いのです。
あと何話かで進展あるはずなのでしばし、集落の話もお付き合いください!
草魔法師クロエの二度目の人生
6/10カドカワBOOKSより二巻発売!コミカライズ好評連載中! 四大魔法(火、風、水、土)こそが至高という世界で、魔法適性が〈草魔法〉だったクロエは家族や婚約者にすら疎まれ、虐げられ、恩師からも裏切られて獄死した……はずなのに気がつけば五歳の自分に時が戻っていた。 前世と同じ轍を踏まぬよう、早速今世でも自分を切り捨てた親から逃げて、〈草魔法〉で生きていくために、前世と全く違う人生を歩もうともがいているうちに、優しい仲間やドラゴンと出會う、苦労人クロエの物語。 山あり谷あり鬱展開ありです。のんびり更新。カクヨムにも掲載。 無斷転載、無斷翻訳禁止です。
8 121【第二部完結】隠れ星は心を繋いで~婚約を解消した後の、美味しいご飯と戀のお話~【書籍化・コミカライズ】
Kラノベブックスf様より書籍化します*° コミカライズが『どこでもヤングチャンピオン11月號』で連載開始しました*° 7/20 コミックス1巻が発売します! (作畫もりのもみじ先生) 王家御用達の商品も取り扱い、近隣諸國とも取引を行う『ブルーム商會』、その末娘であるアリシアは、子爵家令息と婚約を結んでいた。 婚姻まであと半年と迫ったところで、婚約者はとある男爵家令嬢との間に真実の愛を見つけたとして、アリシアに対して婚約破棄を突きつける。 身分差はあれどこの婚約は様々な條件の元に、対等に結ばれた契約だった。それを反故にされ、平民であると蔑まれたアリシア。しかしそれを予感していたアリシアは怒りを隠した笑顔で婚約解消を受け入れる。 傷心(?)のアリシアが向かったのは行きつけの食事処。 ここで美味しいものを沢山食べて、お酒を飲んで、飲み友達に愚癡ったらすっきりする……はずなのに。 婚約解消をしてからというもの、飲み友達や騎士様との距離は近くなるし、更には元婚約者まで復縁を要請してくる事態に。 そんな中でもアリシアを癒してくれるのは、美味しい食事に甘いお菓子、たっぷりのお酒。 この美味しい時間を靜かに過ごせたら幸せなアリシアだったが、ひとつの戀心を自覚して── 異世界戀愛ランキング日間1位、総合ランキング日間1位になる事が出來ました。皆様のお陰です! 本當にありがとうございます*° *カクヨムにも掲載しています。 *2022/7/3 第二部完結しました!
8 145ライトノベルは現代文!
ライトノベルが現代文の教育要項に指定された20xx年。 んなぁこたぁどうでもいい。 これは、ごくごく普通?の高校生が、ごくごく普通に生活を送る物語である
8 97SNS仲間で異世界転移
とあるSNSオフ會で高校生5人が集まった。 そのオフ會會場、カラオケ屋のリモコンにあった「冒険曲」ではなく「冒険」の選択アイコン。その日、カラオケルームから5人が一斉失蹤を起こした
8 63悪役令嬢のままでいなさい!
日本有數の財閥に生まれた月之宮八重は、先祖代々伝わる月之宮家の陰陽師後継者。 人には言えない秘密を抱えた彼女は、高校の入學をきっかけにとある前世の記憶が蘇る。 それは、この世界が乙女ゲームであり、自分はヒロインである主人公を妨害する役目を擔った悪役令嬢であるという不幸な真実だった。 この學校にいる攻略対象者は五名。そのどれもが美しい容姿を持つ人外のアヤカシであったのだ。 ヒロインとアヤカシの戀模様を邪魔すれば自分の命がないことを悟った八重は、その死亡フラグを折ることに専念しつつ、陰陽師の役目を放棄して高みの見物を決め込み、平和に學園生活を送ることを決意するのだが……。 そう易々とは問屋が卸さない! 和風學園戦闘系悪役令嬢風ファンタジー、開幕! ※最終章突入しました! ※この素敵な表紙は作者が個人的に依頼して描いていただきました!
8 99黒竜女王の婚活
女として育てられた美貌の王子アンジュは、諸國を脅かす強大國の主《黒竜王》を暗殺するため、女だと偽ったまま輿入れする。しかし初夜に寢所へと現れたのは、同い年の美しい少女。黒竜王もまた性別を偽っていたのだ! 二つの噓が重なって結局本當の夫婦となった二人は、やがて惹かれ合い、苛烈な運命に共に立ち向かう――。逆転夫婦による絢爛熱愛ファンタジー戦記、開幕!
8 119