《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》14 朝の鍛練

びやかに鳴く鳥の聲が森の中に響く。

は昇り始めたばかりで、まだまだ辺りは薄暗い。

集落に戻ってから3日目の朝だ。

俺は家からすぐ近くの森の開けた場所で鍛錬を始める。

朝の冷たい空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。

呼吸を整えるという行為はリセットボタンを押すことに近いと思う。言い方を変えればルーティンとも言える。

呼吸とはきリズムをつくる大きな役割があり、呼吸が早ければきリズムは速く、遅ければ緩やかになる。

そして、呼吸を整えることで中心ゼロ地點に戻す。

まぁ、そんなことを意識すると――――

風が吹き、木々が揺れる。枝から振り落とされた葉がひらひらと不規則に俺の目の前へ落ちてきた。

スゥ――ハッ!

ばした右手の人差し指と中指の間に葉が挾まっている。

とまぁ、こんな風にバトル漫畫の修行みたいなことができます。

「葉っぱとるの楽しい?」

「……いや、普通かな」

「そっか」

そう言ってそばで見ていたアカネはトコトコと俺からし離れると、再び落ちてきた複數の葉・・・・を一度で全て摑み取る。

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そして、「……うん、普通」と言ってアカネはし笑った。

いや、俺だっていっぱい取れるし! ……と言いたいところだったが、そこで張り合っても仕方がないだろと真面目に鍛錬を始める。

アカネもそんな俺を見て自分の鍛錬を始めた。

ちなみに母さんは來ていない。早朝から武龍団の集まりがあるとかで、俺たちが鍛錬に行くと聞くと名殘惜しそうに、若干涙目になりながら巨樹にある會議場に向かって行った。

だがそれよりも昨晩の方がひど……大変だった。

西の丘から帰ってもう寢るだけというところで母さんが「……一緒に寢たいんだが、だめか? ユーリ」と子犬のような目で言うものだから、「今日だけ」という約束でなくなく一緒に寢た。

あんなに弱々しく、しおらしい母さんは誰も見たことがないと思う。きっと俺が息子でなければ一瞬で落ちたに違いない。というか、あのギャップは反則でしょ。

それからがより酷か……大変だった。

ベッドにってからしばらくして、母さんは俺を抱き締める、頭をでる、子守唄を歌う等々……つまり完全に子ども扱い、いや赤ん坊扱いだった。

やめてと言おうと思ったが、母さんの表があまりにも幸せそうでとてもじゃないが言えなかった。

ちょっと嬉しかったとか全然そんなこと思ってないから! 思ってないからな!

そんなことはいいとして鍛錬に集中しよう。

鍛錬は(武)系を中心に取り組んでいる。理由としては集落の近くで大きな魔法が使えないからだ。

最小規模で魔法を使うことはもちろんできるが、できることは限られてくる。

まぁ転移魔法とか、空間魔法を使えば済む話ではあるけど、母さんとの決闘を振り返ると武が鍛え足りていないことがよくわかった。

それに武で試したいこと・・・・・・もある。

***

溢れ出る汗のせいで服がにまとわりつくのを無視して、俺は最後の形かたを終える。

「はぁ……はぁ……すぅ…………ふぅぅ」

から熱が出ているのがわかる。

集中が切れると途端にびちょびちょの服が気持ち悪くじた。

俺は鍛錬中の1000分の1程度の集中力を使い、つまりは片手間でやるように生活魔法を使う。

を服と一緒に洗浄、乾燥、消臭、殺菌などを一瞬で終わらせる。

これでよし。

魔法って便利。

自分の鍛練が一區切りついたためアカネはどうかと見てみる。

アカネは『半人化』狀態になって、黙々と形を舞うように取り組んでいる。

半人化は『獣化』から『人化』に変わる途中・・・・・の狀態で、セレーナや母さんたちも言っていたように獣人族の姿に近い。

頭には獣耳が、スカートからは尾が現れていて、獣化よりに半人化してるためか手の爪は鋭くび、腕や腳は白いふわふわので覆われている。

目つきも獣のような鋭さをじられる。

半人化のいいところは獣化ではできない武を人化よりも能力が數段上がった狀態で使えることだ。

あくまで仮の話ではあるが、対人戦つまりは人族との戦い・・・・・・を想定してアカネには鍛練してもらっている。

集落の外がどんな世界なのか俺にはわからない。

甘い考えは危険を招く。

もちろん、人族と戦いたいわけではないけど、もし大切な人が傷つけられそうになったら俺は問答無用で毆り飛ばす。

それはどんな相手だって変わらない。

アカネの鍛練もあとしで終わりそうだったため俺は手頃な切り株に座って待つことにした。

アカネの姿をぼーっと眺めながら俺は思いにふける。

俺は母さんに決闘で勝利し、集落の外へ出ることを認めさせた。

まだ長には話していないが、長なら集落から出ることを理解してくれると思う。

人族の俺を迎えれてくれた集落のみんなには本當に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

それでも俺は集落を出る。

それは変わらない。変えられない。

大戦の可能がある限り集落にはいられない。

ここまではもうれたつもりだし、それがいいと自分でも思っている。

ただ、1つだけ俺は悩み続けて答えを先延ばしにしていることがある。

――――セレーナを連れて行くか、行かないか。

集落から出ることを話せば、きっとセレーナは一緒に行くと言うだろ。いや、言う。

でも俺と一緒にいるということは常に危険が付きまとい、セレーナが傷つく可能が高い選択肢だ。

セレーナが傷つくことは絶対に許せない。

例え俺のそばから離れずにいたとしても何が起きるかわからない。

正直、俺は怖いんだ。

アカネが傷つき死が迫るのをじた時、大切な存在を失う恐怖を知った。

実際は助かったけれど、あの時の気持ちは一生忘れないと思う。

もしセレーナが傷つく狀況になった時、俺はどうなってしまうか俺自わからない。

だからこそ連れて行きたくない……そう思っている自分がいる。

だけど、俺は約束したんだ。

――――『もう二度とセレーナの側を離れたりしない――――約束する』

集落に帰ってきた日に言った言葉だ。

噓じゃない。本當にそうしたいと思っている。

セレーナの側にいて、一緒のものを見て、一緒のものを食べて、同じ時間を一緒に過ごしたい。

隣にセレーナがいること、それがあたりまえになればどんなに幸せかといつも考える。

でもそれは俺のわがままだと思う。

セレーナのためには――――

「ユーリ?」

「え? あぁ、終わったか?」

アカネが近づいて來たことに気がつかないほど考え込んでいたみたいだ。

「うん、それとあの人」

アカネが指差した方を見るとフリージアお姉ちゃんがいた。

「ユーリくん、長が呼んでるよ・・・・・・・」

「長が?」

「そう。詳しくは會議場でね」

読んで頂きありがとうございます!!

いつもお待たせしてすみません……。

次回こそは早く更新……したいなぁ。

話は変わりますが、実はもうすぐ投稿から2周年が経ちそうなんです(作者も驚き)

何かできたらなと思ってます。できなかったらごめんなさい。

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