振り返るとセレーナが手を振っていた。

よく見ると反対の手にはし重そうに大きなカゴを持っている。多分、お弁當かな？

セレーナが俺に向かって駆け出す。

「そこ転びやすいから――」

走らなくていいよ、と言い切る前にセレーナが躓つまずいて転びそうになる。その拍子にカゴも前へ飛ぶ。

俺は転移魔法を使い、瞬きをするよりも速くセレーナのもとへ転移して転びそうなをけ止めた。

もちろんカゴもしっかり摑んだよ。

「危なかったね」

「ありがとう、ユーリくん。あ！　お弁當！　……大丈夫かな」

やっぱりお弁當だった。

「大丈夫だと思うけど」

俺は左手で摑んでいるカゴを軽く上げて見せる。

「よかったぁ〜」

セレーナはホッとした顔を見せてから自分がずっと寄りかかっていたことに気がついたのか、顔を赤くして立ち直す。

そして俺からカゴをけ取り、仕切り直すように一度後ろを向いてから再び振り返る。

「ユーリくん、お晝ごはんにしよ？」

「うん」

上目遣いで放たれたその一言に俺は食い気味で答えるのであった。

＊＊＊

何もない訓練場にお決まりのように大きめの布を敷きお弁當を展げる。

そして、これもまたお決まりのように俺が座ると左隣にセレーナ、右隣にアカネが座る。

最近はこうして外でお晝ごはんを食べることが多くなった。

セレーナが花畑の件から、々あったけどやっぱりみんなでお晝ごはんを食べると楽しいよね、ということで続いている。

ここだけの話、セレーナはアカネと仲良くなりたいというところが大きい。

まぁアカネの方も嫌々というわけではなく、俺以外の話を聞くことがいい刺激になってるみたいだ。

「本當に驚いたんだよ！　ユーリくんがいきなり武龍団に団して、そして新しくできた調査班の班長になっちゃうんだもん！」

セレーナは腕を振って驚いているのか、嬉しいのか、怒っているのかよくわからない表でとにかく興しているご様子。

「俺も突然だったから、な？」

俺はアカネの方を見る。

アカネはセレーナの作った、揚げた芋に赤砂糖のを絡めたお菓子（いわゆる大學芋）に夢中になっていた。

あー、それ味しいよね。見た目赤いから最初辛いのかなって思ってたけど、実は甘いんだよね。

セレーナが俺の耳に口を寄せてこっそりと話す。

「アカネちゃん、甘芋あまいもが気にったみたいだね。また作ってくるね」

「うん」

俺とセレーナは顔を見合わせて笑顔になる。

「あ、そう言えばユーリくんに聞こうと思ってたことがあるんだけどね。調査班って的に何をするところなの？」

俺はお弁當に向かってばしていた手を止める。

「えーと……」

マズイ。恐れていた質問が來てしまった。

そう、俺はセレーナに調査班の詳しい話を、そもそも外の世界に行こうとしていたことを話していなかった。

どうしよう。下手に誤魔化すのは得策とは言えないし、正直に話すには心の準備ができていないぞ。

俺はセレーナを外の世界に連れて行くことを悩んでいる。

いや、どちらかと言えば連れて行かない方がいいと思っている。

調査班が設立された今、俺は転移魔法を使えばいつでも帰って來られるんだ。

それならセレーナを外の世界に連れて行って危険に巻き込む可能をつくるより、集落で待っていてもらう方がいいと思う。

ただ、セレーナにこのことを話せばきっと一緒に行くと言い出すだろう。

それを説得するのは心苦しい。

本的に武龍団ではないセレーナを連れて行けるのかと言われれば、多無理はあるが連れて行ける。

班員の選抜を任されているというのはそういうことで、そして班長には正式団は無理でも臨時団を許可する権限がある。最近知ったんだけどね。

まぁ、班長り立ての俺がそんなことしてもいいのかなってじではあるんだけど……。

俺を見るセレーナの目が段々と鋭くなっているような気がする。

早く答えないと。

その時、アカネが俺の袖を引っ張ってくる。

「來てる」

「あ、もうそんな時間か」

験者の人たちが戻ってきたのだ。

「ごめん、セレーナ。その話はまた今度ちゃんと話すから！　お晝ご馳走さま！」

「絶対だよ！　試験頑張ってね。いってらっしゃい！」

手を振るセレーナに俺も振り返して験者のもとへ駆け足で行く。

セレーナに悪いなと思いつつも、し安堵している自分がいる。

早く覚悟を決めよう。

それに……いや、今は試験に集中しよう。

俺は頭を振って、次の試験へと思考を切り替えるのであった。

＊＊＊

２次試験はざっくり言えば「鬼ごっこ」だ。

鬼は俺のゴーレム３。

ゴーレムから一撃でも攻撃を食らえば失格となる。ただし、ガードはセーフだ。

時間制限（砂時計を用意）に逃げ切れれば２次試験は合格。

もちろん龍化は止で、魔法は使用可となっている。

ちなみに俺はゴーレムと視覚を共有できるので、判定は簡単にできる。

そして２次試験は始まった。

スタートと同時に様子を伺っていた験者３名がゴーレムの速攻で落する。殘り８名。

「噓だろ……」

落した験者は腹を抱えたままそう呟きを殘して倒れた。

噓だろ、と言いたかったのは俺の方だった。

あの速攻を見切れないとなると、この試験何名殘るか……。

他の験者はその景を見て直ぐにゴーレムとの距離を取る。

訓練場に張が走る。

 しかしそんなことはお構いなしと、ゴーレムたちは自に近い験者へと効率よく最短ルートを使って追いかける。

試験から約１時間ほど経ち砂時計が終わりを告げた。

「２次試験合格者は……第一班所屬ワンスさん、第二班所屬アールさん、ソーンさん」

第一班はシュタルクおとうさんの班で、第二班は母さんの班だ。

母さんの班から２人殘ってくれた。ちょっと嬉しいね。

験者の３人は肩で息をして俺の言葉を聞いている。

うん、１回休憩を挾んだ方がいいかも。

「ここで１度休憩を取りたいと思います。休憩後、最終試験を行います」

以上です、と言うと３人はその場にへたり込む。

あれ、予想以上に疲れてた？

最終試験は大丈夫かな……。

そんな不安をじつつ俺は訓練場の空を見上げるのであった。

読んで頂きありがとうございます！！

試験の話が予定よりも長くなっていますが、お付き合い下さい！

次で試験の話は終わると思います。