《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》27 弟子

「……あ、大丈夫です! 僕を助けてくれたのはあなたですか?」

「えーと、うん。そうなるかな」

途中まで様子を見てたから、ちょっと罪悪が……まぁ結果的には助けたんだ。セーフだ。

「あ、ありがとうございますぅ、うぅ……」

子供がいきなり俺に抱きつき、泣き出す。

しびっくりしたが、怖い思いをしたんだ。人に抱きつきたくなるのも無理はない。まだこんなにいし。

しばらくして落ち著いたのか、子供はガバッと勢いよく離れる。その顔はれたトマトのように真っ赤だった。

「ご、ごめんなさいです!」

「気にしないで」

セレーナ、アカネ後ろの人たちは若干気にしてるみたいだけど。

「俺の名前はユーリ。後ろの青い髪のの子がセレーナ、白い髪のの子がアカネ。君の名前は?」

さすがに出は明かせないけど、名前くらいなら大丈夫だと思う。

「ぼ、僕はリリーです! ユーリ様っ!」

「様はつけなくていいよ」

「いえ、命の恩人であるユーリ様を呼び捨てなどできません!」

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「じゃあ、せめてユーリさんにしてくれない?」

「いえ、ユーリ様と呼ばせて下さい!」

すごい、この子意外と頑固だ。

俺はリリーと名乗った子供を改めてよく見る。

アッシュ系の金髪はボサボサで服もボロボロだけど、エメラルドグリーンのつぶらな瞳と困ったような下がり眉はがある。

素材がいいその顔は形以外の何ものでもない。きっと將來はすごい人になる。

「僕」と言っているけど、多分の子だよね。

「まぁ今はそれでいいとして……君はこの近くに住んでいるの?」

「近いとは言えませんが、あの先を越えて更に橋を二つ渡ってからし歩いたところに僕の住む家があります!」

リリーが指差した方角は俺たちが先程まで進んでいた方角と同じだった。

「あ、ちょっと待ってね」

俺は軽く5メートルくらい跳び、飛翔魔法で空中に停止する。

強化魔法で視力を強化。

お、本當だ。

目測だけど、リリーが住む場所まで10〜15キロメートルくらいか。

見たところ近くに馬車とかはないし、そもそも馬車が通れる道もほとんどない。つまり、リリーは歩いてここまで來たってことになる。まだ子供の足で。

俺は地面にそっと著地。

「ユ、ユーリ様! ユーリ様っ!」

「どうしたの?」

「い、今のはユーリ様が魔法をお使いに?」

「うん、飛翔魔法をね」

リリーの目がすごいことになってる。

目ってそんなに大きく開けられるものなの?

「あの、あの、詠唱もされていませんでしたよね?」

「あ……うん」

そう言えば無詠唱って、できる人ないんだよね。

最近、無詠唱が當たり前になってるから忘れてた。

今更誤魔化せないし、リリーなら変に疑われたりしないよね。

「し、失禮ですが、ユーリ様は宮廷魔師の方ですか?」

「違うよ」

「あれ? では賢者様ですか?」

「違うよ」

(あんなにすごい魔法をお使いになるのに、宮廷魔師でも賢者様でもないと……でも、この際何でもいいです! きっとユーリ様は高名な魔師で間違いないのです! こんなチャンスはもう二度と來ないです……)

俺はリリーの質問を否定するが、やっぱり無詠唱は怪しかったかな、と心ドキドキしていると……。

「ユーリ様、お願いがあります」

突然、リリーは両膝を地面につけて乞う。

「僕を弟子にしてくださいっ!」

そして勢いよく土下座をした。

俺は呆気にとられてしばらく固まる。

「え、えーと」

「雑用でも何でも、仰って頂けたら喜んでやります! ……だから、お願いしますっ!」

藁にもすがるような様子で懇願するリリー。

その姿につい承諾しそうになるが、思い留まる。

これは俺だけで決められない。

俺は思念魔法を使い、セレーナとアカネと俺の思念を共有する。

〈相談なんだけど、これはチャンスじゃないか?〉

〈チャンス?〉

〈わわ、前にも練習したけど慣れないよぉ、コレ……えーと、チャンスって何が?〉

〈俺たちは人族のことを全然知らない。だから調査期間だけリリーを弟子にして、リリーから人族のことを聞こうと思う〉

〈弟子……(でも相棒は私)……わかった〉

〈ユーリくんが良いと思うなら、わたしは反対しないよ……でも、わたしが一番弟子だよ! (それとお嫁さんもわたしっ)〉

2人とも心の聲を隠してるつもりかもだけど、思念を共有してるから思うだけで伝わってるよ……。

まぁ、俺は本心を隠す修行もしたので、そこら辺は大丈夫だったりする。

元々、一方通行でしか使えない思念魔法だったが、修行により思念魔法を使えない相手とも思念を送信できるようになった。それと3人以上での思念共有も可能になった。

セレーナが思念を送れるのはそういうわけだ。俺が思念魔法を使っている時限定だけど。

それに思念魔法はかなりの可能めいていると俺は思う。

例えば、何も知らない相手に思念魔法を使って『亡霊の聲』みたいなのを演じてみたりとかね。

おっと、話が逸れてしまった。

〈でも本心は?〉

アカネの問い。

さすが相棒ってじだな。

俺の本心が隠し切れていなかったかな。

〈あの子の気持ちの強さが伝わったからかな。それと俺とどこか似ている気がしてさ〉

〈ユーリはお人好し〉

〈それがユーリくんの良いところだよ!〉

〈別に悪いと言ってない……私も好き〉

〈そ、それはお人好しなところが! ってことだよね!? アカネちゃん?〉

〈リリーが涙目なので、そろそろ思念を切りまーす〉

ほっといたらいつまでも続きそうな口論を強制的に終了させて、リリーを見る。

リリーと目が合うと、その目はより一層ウルウルと涙でいっぱいになっていた。

「立って、リリー」

「い、いえ! 弟子にして頂けるまでここを離れない所存ですっ!」

すごい覚悟だ。リリーなら本気で離れないかもしれない。

その気持ちの強さが俺には嬉しくじる。

きっとこの子ならいい弟子になると思えるから。

「だから・・・立って。弟子がずっと膝をついていたら見っともないだろ? それとも師匠・・の言うことは聞けないか?」

「え?」

「ほら、リリー」

俺はリリーに手を差し出す。

「あ、そんな……う、うぅ……はい、ユーリ様」

こうして規格外の魔師に、優秀な弟子ができたのであった。

読んで頂きありがとうございます!!

森を出ていきなり弟子!? ってじですが、そう言う出會いもあると思って頂けたら……。

新キャラ、リリーくんをよろしくお願いします!

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