《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》36 ギルド試験・模擬戦の部
ギルドに戻った俺は右端の方にある席に腰を下ろす。
今の時間は殆どの冒険者が依頼をけて外に出ている。そのためギルドにいるのはギルド職員とヤル気のない冒険者、依頼に來た一般人くらいだ。
俺は今回の験者である年――ユーリのことを思い出す。
一言で言えば、底知れぬ存在。そんなものをじた。
人前の年という見た目からは想像できないほどの迫力を、否応なく放ってくる。まぁ、當の本人は気づいてなさそうだが……。
サンサイ支部長が気にかけるのもよくわかる。アレは逸材、いや諸刃の剣って可能もあるか。
ひとまず、この試験を軽く合格できないようでは潛在能力が高くとも冒険者には向かない。
期待はしている。それは本心だ。
若人って言うのは可能の塊だ。
そんな可能の塊が冒険者になりたいと言ってくれているのは、一冒険者として嬉しく思う。
それにユーリあいつの潛在能力の高さは特別だ。一級、いや特級のそれと同じかもしれない。
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「こんにちは、ガイドさん」
考え事をしていた俺にギルド職員らしきが聲をかけてきた。
顔を見ると俺がよく知る人だった。
「ナータか、どうした?」
「今回の験者のユーリさん、冒険者であるガイドさんから見てどうでしたか?」
単なる知人ではなく、ナータはギルド職員としての顔で俺に聞いてくる。
つまりはギルドもそれだけあいつを気にかけているってわけか。
「そうだな……」
ナータに所を伝えようとした時、こちらのテーブルに近づくパーティーに気がつく。
「ん? ユーリか」
「こんにちは、ユーリさん、セレーナさん、アカネさん、リリーくん」
「こんにちは」
「こんにちは〜」
「……」
「こんにちは!」
ユーリは別れる前には持っていなかった大きな袋を擔いでいた。
「どうした?」
試験を始めてからまだ四半刻も経っていない。行って帰ってくるだけでも一刻はかかる道のりだ。
さすがに終わったというのは考えにくいだろう。
仮に市場でホシキノコを見つけたとしても、先約客が多いために購するのは難しいはずだ。
何かあったと考えるべきだ。
「終わりました」
「ん? 今、何て言った?」
自分の聞き間違えだと思い、耳をよくすませてもう一度聞く。
「終わりました」
間違いない、こいつ終わったって言ったぞ。
「この袋の中にってます」
ユーリが擔いでいた袋を下ろす。
俺は席を離れ袋の前に立つ。
袋からは複數の甘い香りを混ぜたような獨特な匂いがした。
目線だけでユーリに確認を取り、俺は袋の口を開ける。
「マジか」
「どうしたんですか……え!? 何、この量!?」
覗いてきたナータも驚きのあまりあんぐりと口を開けていた。
驚くのも無理はない。
ざっと見てホシキノコが40〜50本。
ひと月に出回るホシキノコ數が10〜20本と考えれば、それを軽く超えてやがる。
いや、それよりもおかしいのはこの早さだ。
「どうやって……いや、何でもない」
手方法は気になるが、それを聞くのは試験と言えど冒険者失格だろう。
自らの力でことをすのが冒険者だ。
それに達方法は任せると言ったのは俺自だしな。
「気になるところはたくさんあるが、ひとまず冒険の部は合格だ」
ユーリが「よしっ」と年らしく喜ぶ。
周りにいるたちも自分のことのように喜び、はしゃいでいる。
「試験の依頼はホシキノコ1つだったが……ナータ買い取りはできるのか?」
「はい。依頼も複數來ていますので、その報酬でもお支払いできますよ」
「だそうだ。ユーリ、どうする?」
ユーリはほんのし考えるとすぐに答えた。
「それでお願いします」
「畏まりました。ユーリさんはまだ正式に冒険者登録をされたわけではありませんので、報酬は模擬戦の部の結果がわかるまでお待ちください」
「わかりました」
ナータからの説明をけ、ユーリが承諾する。
それにしてもいくら貰えるんだ?
ホシキノコは探すのに苦労する割に儲けがうまくないってのが有名なんだが、こんなあっさりと手にれる方法があったとは……。
俺もまだまだってことだな。
「それじゃ、し休憩を挾んでから模擬戦の部を始めるとするか」
「はい」
たちがユーリに応援の言葉をかける。
當の本人は気負った様子はなく、自信に満ち溢れているというわけでもない。
そこにあるのは歴戦を勝ち抜けてきたような確かな強さをじさせる風格だった。
さて、ユーリの実力を見させてもらうとするか。
***
町の最北端にギルド保有の訓練場が存在する。
訓練場とは言っても広さはギルド會館より一回り小さく、何もない。どこまでも乾いた地面が続いている。
唯一あるのは、一対の翼と剣を組み合わせたギルドのエンブレムが描かれている『訓練場』と書かれた看板だけだ。
冒険者登録をしている者なら誰でも利用できるらしいが、現在は誰もいない。
これからこの訓練場で模擬戦の部を行うことを考えると都合はよかった。
「相変わらず寂しい訓練場だな」
ガイドさんは呆れた表でそう言った。
「まぁ、広々と使えるという意味ではいいか。んじゃ、始めるか」
「お願いしますっ」
俺は気持ちを引き締める。
そう言えば、集落を出てからは初めての対人戦になるのか。
ガイドさんはどんな風に戦うのだろうか。
うん、ちょっとワクワクしてきた。
「と、その前にルールを説明する。ルールは簡単だ。俺に一撃を加えた、もしくは俺の攻撃を捌き切れたら合格だ」
なるほど、俺が調査班の試験をやった時に似てるな。
「流れを見て俺は攻撃するから、ひとまず思いっきりぶつかってこい」
ガイドさんがニカッと笑う。
さすが二級冒険者というじだ。
油斷とは違う、戦い対する余裕をじる。
「開始のタイミングはお前に任せる。いつでも來いっ」
その言葉を最後にガイドさんが真剣な表に変わる。
俺はスッと集中力を極限手前までに高めた。
初手、それから二手、三手と次々に戦を組み立てる。
相手のけ方を想定し、それに対応する手も考える。
しかし、それも集中力が極めて高い狀態の今なら一瞬だ。
よし、お言葉通り“思いっきりぶつかって”いこう。
俺はいつも通りの自然なきで構えた。
読んで頂きありがとうございます!!
タイトルに模擬戦の部と書きつつ、まだ戦いは始まっていません。(詐欺ではないですよ)
次話でギルド試験は終了すると思います!
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