『終わりました』

「……はい」

不思議なじだ。

魔力が前よりもはっきりとじ取れる。自分の手足のように魔力がかせる。

すごい……。

これが『水柱龍の加護』。

『その力を使いこなすには、まず水をけれることです。そして、水の意思をじ取るのです』

「水の意思……」

『そうすれば水はあなたの力となる』

突然、クヴェル様の足下から大量の水が噴き出す。

「えッ！？」

水しぶきがわたしの頬を濡らす。

本の水だ！

何で急に水が？

そんなことより、クヴェル様は……。

わたしは目の前の景に開いた口が塞がらなかった。

『水をけれて……そして水の意思をじ取るのです』

クヴェル様の言葉を現するように、水はクヴェル様を包み込み球をつくる。やがて水は大蛇のようになって、クヴェル様の周りをグルグルと回り始める。

クヴェル様が一度、パンッと手を打つ。

水は音を理解しているかのように、それに反応して空へと上昇する。

わたしの目でギリギリ見える高さまで行くと、その場で弾けて雨となった。

クヴェル様とわたしに雨が降り注ぐ。

『最後にもう一つ大事なことがあります』

一拍の靜寂の後に、クヴェル様は言う。

『それは強い想いです。この力はあなたの強い想いによって、より強くなる』

「強い想い……」

『あなたはそれを知っている。大丈夫、あなたの信じる道を……』

「クヴェル様！？」

突如、クヴェル様が薄いに包み込まれ、そして徐々にの粒へと変わっていってしまう。

『頑張……です……セレーナ』

最後にそう言い殘すと、クヴェル様は完全に消え去ってしまった。

「行っちゃった……」

クヴェル様がいなくなった場所をぼーっと見つめる。

クヴェル様の加護はわたしの中にあるんだよね……。

あまり実はわかなかった。

けれど、この力でわたしはユーリくんの隣に立ちたい。

そう決意をにしたその時、広間がクヴェル様と同じようにの粒へ変わっていってしまう。

「ど、どうしよう！？」

來た道を戻ろうと後ろを振り返ったが、道が塞がっていた。

「道が消えてる！？」

わたしは徐々に迫り來るの粒から逃げるように、広間の中央へと寄っていく。

ついに広間の中央にやって來たわたしは、完全に追い詰められていた。

「く、クヴェル様ぁ！」

わたしは必死にぶ。

しかし、クヴェル様が助けてくれる気配はない。

の粒はすぐ足元までやって來ていた。

広間は跡形もなく消えていて、真っ黒な世界が広がっている。

もうダメ――ッ！

「ユーリくーんっ！」

わたしは目を瞑り、する大切な人の名前をんだ。

＊＊＊

「…………な」

誰の聲？

「……れ……ナ」

この聲は……。

「セレーナ！」

「……ユーリくん？」

「よかった……」

ユーリくんはわたしを抱きかかえたまま優しい笑顔を見せる。

わたし……何してたんだっけ？

「ここは……」

「六柱龍の神殿の中だよ」

「石碑の前に來たら、突然セレーナさんが倒れてしまったんです！」

優しく答えてくれるユーリくん。それと、リリーちゃんが慌てた様子で教えてくれる。

わたし気を失ってたんだ。

何か夢を見ていたような気がするんだけど……。

「心配かけてごめんね、ユーリくん」

「それは全然いいんだ。それより何か合の悪いところはない？」

わたしはユーリくんの手を借りながら立ち上がる。

「大丈夫だよ。むしろ力が湧いてくるような……あれ？　本當に魔力が溢れ出ちゃいそう」

ユーリくんが真剣な眼差しでじっとわたしのことを見つめる。

え、え、きゅ、急にどうしちゃったの？

そんなに真っ直ぐ見つめられたら、ドキドキして……わたし……（プスーッ）

わたしの思考が停止する。

顔から火が出てるみたいに熱い。

「魔力の量というより、質が変化してる。これは……」

ユーリくんはそう言うと、ブツブツと獨り言を呟きながら考え込んでしまった。

うん、いつものユーリくんだ。

でも、本當にどうして魔力が変化しちゃったのかな？

何か大事なことを忘れているような……。

『頑張るのですよ、セレーナ』

「え？　誰の聲？」

「……セレーナ？」

「あ、いや、何でもないよ。多分気のせい」

何だろう、さっきの聲。

どこか聞き覚えのある聲のような気がする。

しく、力強いの人の聲。

「この先は何もないみたいだし、ひとまずここから出ようか」

「そうだね」

「はいっ！」

「……ん」

わたしたちは來た道を戻って神殿を出た。

空を見上げると、だいぶ日が傾き始めていた。

不思議な場所だったなぁ……。

わたしは振り返り、神殿の口を見た。

同じ口のはずなのに、來た時とは違って特別なが湧いてくる。本當に不思議。

それからわたしたちは、日が落ちるギリギリまで空の旅を続けた。

読んで頂きありがとうございます！！

神殿のお話はこれで終わりです。

セレーナのパワーアップ回でした。

次は都市にれるのではないかと……。