《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》番外編PW「夕裡とセレーナ 出會い」

※PWはパラレルワールドの略です。

※読まなくても、本編に影響はありません。

放課後の空き教室。

その前の廊下を帰宅組と部活組が行ったり來たり差する。

放課後になって早々にこの教室に來た俺は部活の準備を始める。

機を端に寄せて十分なスペースを確保すると、ロッカー棚の上に置いていた黒いマットをそこに敷く。

黒いマットを広げると、そこには何かが起こりそうな魔法陣が描かれている。

「よし、魔研究同好會。活を開始しますか」

たった1人になってしまった靜かな同好會を俺は今日も始めた。

***

「今日のところはこれくらいでいいとして、どうする? 部活見ていく?」

先生にそう聞かれたわたしはし悩む。

學校には今日、転校して來たばかりで何もわからない。友達だって1人もいない。

だけど、部活というものには憧れている。

友達とたわいないことを話して、笑ったりしたりして、そんな青春を送りたい。

わたしの夢の一つだ。

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夢を葉えるには行しなければ始まらない。

何も知らないのは當たり前。これから知っていけばいいこと。

「はいっ。わたし、部活見ていきます」

「そう。案はいる?」

「……大丈夫です。1人で見てきます」

「わかったわ。気をつけて見てらっしゃい。何か困ったそこら辺にいる生徒に聞いてみなさい。悪いやつはいないから」

「はいっ」

わたしは先生にお辭儀してから、あてもなく學校の中を進み始めた。

***

床に敷いた黒の魔法陣マットの中央に胡座をかいて、俺は魔導書を読んでいた。

「魔法とは、世界の法則を読み解き、それを自らの理論によって干渉し、改変する力である……か」

意味はわかるけど、それができないから困ってるんですよ。

魔導書をパラパラとめくり読み終える。もう何十回もこの本……魔導書は読んだ。

「何かきっかけでもあれば……」

そんな対外的な要因にすがりたくなるくらいには、やれることはやったつもりだ。

最近、何か変わったこととかあったっけ?

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……そういえば隣のクラスに転校生が來たとか、誰か話していたような。

まぁ、俺には関係ないことか。

魔法は1人でもできる。

魔法陣の複寫練習でもするかな。

***

「ま、迷った……」

ここどこだろう?

部に行こうとしたのに、室が見つからない。

誰かに聞こうと思っても、人が全然いないから聞けないし……。

さすがに1人は無謀だったかな……。

なんだかすごく心細くなってきた。誰でもいいから人に會いたい。

日も段々と落ちてきているし、せめて下駄箱がどこかだけでも教えてほしい。

「こんな時、魔法を使えればなぁ……」

人には言えないけど、わたしは高校2年生になってもまだ魔法というものに憧れている。

だって魔法には人を幸せにする力があると思うから。

魔法を使う。それもわたしの夢の一つ。

そういえばこの學校には魔研究同好會っていう部活があるみたい。

どんな人がやってるんだろう?

し気になるけど……ちょっと怖い。

魔法に憧れているわりに、わたしはオカルトチックなことは苦手だ。

あくまで魔法とオカルトは別だと思っている。

わたしは人気のない廊下を進む。

何気なく空き教室を覗くと、黒いマットのようなものが床に敷かれているのが見えた。

何だろう?

よく見ると黒いマットには大きな魔法陣が描かれていた。

あ、ここが魔研究同好會なのかな?

教室の中に、今は誰もいないみたいだった。

無斷でるのは悪いかもしれないけど……ちょっとだけ見學。

「し、失禮しまーす……」

わたしは黒いマットまで近づく。

教室の外からでは見えなかったけど、マットの周りには裏紙に複寫された魔法陣がたくさんあった。

「すごい……」

こんなに緻な魔法陣を複寫するなんて、どれだけの集中力と時間が必要なんだろう。

それに何枚も複寫してあるけど、さすがに1日で描いたわけじゃないよね?

わたしの中で、魔研究同好會のイメージは変わりつつあった。

どんな人がこれを描いたのかな……。

わたしは迷子だったことも忘れ、魔法陣を描いた誰かを想像することに夢中になっていた。

***

そろそろ帰ろうかな、とそんなことを考えながら俺はトイレから教室に向かって歩いていた。

あれ、ドアが開いてる。閉め忘れたか?

まぁいいか。

俺は何も警戒せずに、教室にる。

「あっ」

子の聲が聞こえた。

「え?」

俺は確認しようと前を見る。

その時、夕日のが逆となって教室を照らす。

朱いが差す中で、魔法陣の上に立つ黒いシルエット。

顔は見えない。そもそも眩しくて、目がほとんど開けない。

でも、その景が俺の脳裏に焼き付いていくのがわかった。

まるで、魔法によって誰かが召喚された。

そんな風にじられた。

夕日がずれて、次第に逆がなくなるとその姿がはっきりとわかった。

白縹の淡く青い髪。人形のように整った顔立ち。こちらを見つめるき通った青い瞳。その全てが綺麗だと思った。

「き、君は?」

俺は聲を震わせながら尋ねる。

「あ、勝手にってごめんなさいっ! わたしは2年2組のセレーナ・ヒュドルです。今日、この學校に転校してきて……」

「あ、君が隣のクラスの転校生」

この子が噂の転校生だったのか。

いって誰かが話してた気がするけど、次元が違い過ぎる。この子、天使か何かか?

「俺も2年生で、1組の堂間どうま夕裡(ゆうり)」

りそうになる聲を何とか抑えて、俺は名前を名乗った。

「ユーリさん」

「は、はいっ」

いきなり名前呼びっ!?

やばい、心臓がバクバクする。

ドキドキを超えてる。

「こ、この魔法陣を描いたのってユーリさんですか?」

セレーナさん(でいいのか?)が俺に見せたのは、さっきまで俺が複寫していた魔法陣だった。

「う、うん。そうです」

「――ッ!」

そう言うとセレーナさんは目を見開いて、喜んでいるのか、しているのかよくわからない表になっていた。

「好きなんですっ!」

「え、あ、えっ!?」

え、今なんて?

好きって言った?

俺? 俺のこと?

「魔法とか、魔法陣とか!」

「そっちかいっ!」

俺は思わず全力で突っ込んでしまう。

そして、勘違いした恥ずかしさと、突っ込んでしまった恥ずかしさのダブルパンチを食らう。

「え?」

「いや、何でもない……で、魔法好きなの?」

「はい! ユーリさんも魔法とか好きなんですか?」

「うん――好きだよ」

「…………ハッ! わたし……」

なんかセレーナさんの顔、赤い?

熱でもあるのかな?

「大丈夫?」

「だ、大丈夫です」

すごい勢いでセレーナさんは顔を橫に振る。

「あの……その……よかったら、部活見ていく?」

「いいんですかっ?」

そう言って嬉しそうにセレーナさんが微笑む。

その表がたまらなく可い。

「うん。あまり面白いものは無いかもしれないけど……」

「そんなことないですよ!」

否定してくれるセレーナさんに俺はつい頬を緩ませてしまう。

今まで魔法とかの話をすると馬鹿にされてきたからか、なんだか不思議な気持ちだ。

でも、すごく心地がいい。

俺は機に置いておいた魔導書を手に取る。

「魔導しょ……本でも読む?」

「…………」

ダメだ、絶対魔導書って聞こえてる。

これはさすがに引くよね……。

「魔導書っ!! 読みたいですっ!」

「あ、え……うん。はい」

セレーナさんのあまりの食いつきに俺はたじろぎつつも、魔導書を手渡す。

子供のように夢中で魔導書を読むセレーナさん。その姿があまりに輝いていて、ずっと眺めていられるような気がした。

「これ、どういう意味ですか?」

セレーナさんが俺の隣に近寄って魔導書を見せる。

今、俺の心臓が跳ねた。

ドクンッてなった。

やばい、顔が熱い。

「ユーリさん?」

顔が近い。

あー思考が働かない。

い。可いは正義。セレーナさんは正義。

ん?

「……えーと、とりあえず座らない?」

「……ッ!? そ、そうですね……」

スッと離れたセレーナさんを名殘惜しく思いつつも、俺は椅子を運んで適當に置く。

それからセレーナさんと魔導書を見ながら、解説したり意見を換したりして、外が暗くなるまで話し込んでしまった。

先輩が引退してから、久しぶりの魔研究同好會の活ができた気がした。

魔法は存在する。

だってこんな出會い、魔法以外に考えられない。

「わたし……魔研究同好會に部してもいいですか?」

白黒だと思っていた俺の世界に、がついた魔法のような瞬間だった。

『もちろん』

読んで頂きありがとうございます!!

読んだ方はお分かりの通り、全く本編とは関係ない話……というより完全に作者の趣味ですね。

本編が進まなくてすみません……。

次話は本編に戻りますので、ご安心を!

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