《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》48 上級褒賞

俺たちは都市キャロットまでかなり近づいたため、人目につくのを警戒して殘りの道を徒歩による移に切り替えていた。

しい畑道をずんずん進む。

ん?

すると、し先に一臺の立派な馬車と、その周りを囲うように大柄の男たちが立っている。

さらにその手前には、兵士らしき人たちが倒れていた。

あれって、もしかして盜賊?

「ユーリ様! あの馬車、盜賊に襲われていますよ!」

「とうぞく?」

リリーの慌てた聲が響く。

それを聞いたセレーナは首を傾げる。

まぁ、集落じゃ盜賊なんて無縁の存在だからね。

でも、本當に盜賊だったとは……。

「捕まえた方がいいよね?」

「はい! 盜賊は捕まえて、ギルドか保安隊に引き渡す決まりになっています」

俺は魔力知を使い、馬車の周りにいる盜賊を把握する。そして、拘束魔法を使い捕縛する。

これくらいのことなら一瞬だ。

「捕縛完了」

「え? 何をしたんですか?」

「拘束魔法でパパッとね」

「この距離からですか!? 位置も人數も全くわからないですよ……?」

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「魔力知を使えばわかるよ」

個人差はあっても、魔力は誰にでも流れているものだ。

範囲で言えば、探索魔法の方が広く探索できるけど、発速度と使い勝手の良さで言えば魔力知の方がいい。

近いうちにリリーにも習得させるつもりだ。

「……なぜか急に不安な気持ちになりました」

「盜賊は捕まえたぞ?」

「いえ、そうではなく……」

リリーが何に不安になっているのか、よくわからないが、ひとまず馬車にいる人を助けよう。

 関係があるかわからないけど、変わった魔力をした人が馬車の中にいる。

馬車に近づくと、男が1人馬車の近くに立っていた。

「あのぉ……大丈夫ですか?」

こういう時の聲のかけ方って、これで正しいのか?

俺はし不安になりつつも、男の様子を伺う。

は燕尾服を著た、いわゆる執事風の人だった。

「はい、危ないところでした……この魔法は、あなたが?」

「そうです」

「助けて頂き、心より謝致します」

執事風の男が深々と禮をする。

お辭儀がこんなにもカッコイイと思ったのは初めてだ。

それほど執事風の男の所作は秀麗であった。

「いえ、困っているときはお互い様ですから」

(……20人ほどの盜賊を一瞬で無力化できるのはユーリ様くらいだと思いますけどね)

「本來ならすぐにお禮をさせて頂くところなのですが、生憎都市へ急ぎの用がありまして……その代わりと言っては何ですが、こちらを……」

執事風の男ポケットから一枚の赤いコインを取り出すと、俺に手渡す。

コインをよく見ると、知らない人が彫刻されていた。

「このコインをどこの役所でも構いませんので、見せて頂ければ可能な限りおみのものを用意します」

え?

俺は思わず執事風の男の顔を凝視してしまった。

「直接お禮ができない無禮をお許しください。では、失禮いたします」

執事風の男はもう一度お辭儀すると、馬車に乗り込んでしまった。

それから、盜賊を道端に移させていた者らしき人が戻ると、馬車は出発してしまう。

遠ざかる馬車を眺めながら、俺は呆然としていた。

を聞く暇もなく行ってしまった……。そんなに急ぎの用だったのか?

それにこのコインは……。

「ゆ、ユーリ様! このコイン……王國上級褒賞貨ですよ!」

王國……上級褒賞貨?

「王族か、その近しい人からしか貰えない特別な貨です!」

「それを貰えるとどうなるの?」

コインを見つめていたセレーナが興味津々でリリーに聞く。

それは俺も気になる。

「褒賞の階級にもよるらしいですが、上級褒賞だと豪邸を建ててもらうことも可能なくらい価値があると聞いたことがあります!」

「え!?」

「豪邸ってすっごく高いお家のことだよね? それってすごいね!」

そんなすごいものを躊躇いなく俺に渡すなんて……っということは、あの人は王族関係者ってことか!?

「ユーリ様……僕、王族に関係する人に會ったのは初めてです」

あの執事風の人は本の執事だったってことか。それに馬車の中にいた人は王族?

盜賊に襲われてたけど、大丈夫なのか?

都市に用ってことは、俺たちと同じ目的地か。

ハッキリとしない嫌な予のようなものをじて、し見え始めた都市キャロットの街並みを俺は眺めるのであった。

***

馬車は再び、何事もなかったかのように都市キャロットへ向かって軽快に進んでいた。

「スチュワード」

「はい、姫様」

「外で誰と話していたの?」

姫は訝しげな目でスチュワードを見る。

「通りすがりの若い旅人たちです。どうやらその旅人の1人が魔法で賊を捕らえたようでした」

「魔法?」

「見事な鎖の魔法でした。私はあれほどの魔法の使い手を今まで見たことがありません」

「スチュワードがそこまで褒めるなんて、相當ね……賊はその魔師が全て?」

「はい」

「いけないわ! 私、お禮してない」

姫は目を見開いて、慌てた様子で馬車の窓から後方を眺めた。

「姫様。お気持ちはわかりますが、あの場でお姿を見せるのは危険なことでした。旅人には私から上級褒賞貨を渡しましたので、お気になさらないでください」

スチュワードは淡々と述べる。

「でも、私たちを助けてくださったのでしょう? 私の口から謝の言葉を伝えることに意味があると思うの」

姫の表からは譲れないという意思がはっきりと伝わる。

「……畏まりました。では、都市に著きましたら件の旅人たちが姫様に謁見できるように手配いたします」

「お願いね、スチュワード」

「畏まりました」

姫は満足そうにすると、馬車の窓へと視線を移す。

スチュワードは心、姫が別のことに関心を持っているのではと懸念していた。

謝を伝えたいというのは本當だが、凄腕の魔師に會いたいというのが本心ではないか?

その懸念は大當たりであった。

(凄腕の魔師さん……どんな人かな?)

読んで頂きありがとうございます!!

更新が遅くなり申し訳ありません!

夏バテ……ではなく、怠惰です……。

この暑さは異常だ……エアコンは涼しい。

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