《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》56 人と魔獣

眼帯のが後方へ素早く退がると、背中の弓を構えて私に狙いを定めた。

そして、大剣の男が私に斬りかかる。それと同時にが矢を放つ。

私は心の中でため息をつく。

思念魔法を使ってし驚かせるつもりが、どうやら警戒心を煽ってしまったらしい。

……しょうがない、戦うか。

「ガウ」(影よ)

私の影が意思を宿したようにき出す。

影は私を守るように立ちはだかる。

男は突然現れた影に揺を見せつつ、それでも大剣を振り下ろす。

しかし、大剣は影に防がれる。

男の橫を通って飛んできた矢も、影にけ止められて地面に落ちた。

「くッ!」

男が一旦退がる。

が続けて、矢を3本同時に放つ。

頭、、腹を狙ったいい撃ではあるが、そのすべてを影は防ぐ。

『……無駄。そんな攻撃は効かない』

男との表に余裕がなくなる。

『もうお終い』

その言葉と同時に、男とそれぞれの影がき出して二人を捕らえる。

けないッ!?」

「何、これ!?」

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弱すぎる。

殺すといいながらこの程度の実力に私は呆れていた。

私は半人化する。

が自分のものではないような覚が襲い、次の瞬間には変化が終わる。

今では慣れたけれど、最初は気持ち悪くて仕方がなかった。

でも、ユーリと同じ姿になれると思えば嬉しかった。

ユーリのためなら何でもできる。

私はユーリの使い魔。ユーリの邪魔をするものは私が倒す。

「何だ、お前!? 魔獣じゃないのか……?」

「まるで獣人みたいな姿……でも獣人が姿を変えられるなんて聞いたことないわ。何かの魔法?」

「そんな魔法聞いたことないぞ」

「私だって知らないわよ」

「……話している余裕あるの?」

私の聲を聞いて、男とは肩をビクッとさせる。

人はよくわからない。

絶対安全なんてないのに、いつも安心した顔で笑っている。

この二人もそうだ。

自分が死ぬことをまったく考えていない。

魔獣だったら最後の最後まで抗う。でないと死んでしまうから。

まぁ、私にとってこの二人のことなどどうでもいい。

ユーリの敵になる。それさえわかっていれば、やることは一つ。

「な、ま、まってくれっ!」

「お、お願い……何でもするから!」

今になって抗うのか。

でも遅い。それなら最初から私たちに関わらなければ良かったことだ。

私は右腕を真橫にばす。獣の部分が殘っている爪で切りつけるために。

「ダメだよっ! アカネちゃん!」

「邪魔、どいて」

「人を殺したらダメだよ!」

セレーナが私の前に立ち塞がる。

その表は複雑で、し恐怖もじているようだった。

「なぜダメ? 魔獣は殺してもよくて、人は殺してはいけない。何が違う?」

「…………私も何が違うかはわからない。だけど、これだけはわかる」

セレーナは躊躇うように一拍置いてから私の目を真っ直ぐに見る。

「ユーリくんが悲しむ」

「…………」

「人を殺せば、ユーリくんは悲しむよ!」

「……何で、そんなことがわかる」

「それはアカネちゃんだって、わかってるでしょ?」

ユーリとの記憶を思い出す。

出會ってから今までの記憶。

森の中で過ごしていたときのユーリと、龍人の集落で過ごしていたときのユーリ。

森の中では必死で、ときには苦しそうに、そして寂しそうな顔をしていた。

集落に來てからはずっと笑顔だった。

ユーリは人が好きなんだ。だから、人を殺せばユーリは悲しむ。

でも、私は人ではない。私は魔獣だ。

ユーリは魔獣が嫌い? 私が嫌い?

わからない。

わからない……。

足下に魔法陣を展開する。

「アカネちゃん……」

「どいて」

「どけない!」

私は転移魔法を使う。

「あっ」

セレーナが振り返ったときにはすでに私は敵二人の前に立っていた。

「あ、あ、」

「やめ、て……」

私の殺気に男とはまともに喋れない。

「アカネちゃん!」

「――催眠よ」

敵二人の頭上に魔法陣を展開する。そして一瞬にして二人を眠りへう。

「今のは……」

セレーナが揺した聲で聞く。

「……眠ってるだけ」

私がそう答えると、セレーナは安心したように地面にへたり込む。

「よかったぁ……」

その言葉を私は素直にけ取れなかった。

***

テーレを拘束してからしして、アカネから思念が屆いた。

〈ユーリ〉

〈そろそろくると思ってた。テーレの仲間は?〉

〈……眠らせてる〉

〈さすが俺の相棒だ。セレーナたちを守ってくれてありがとな〉

〈……當然〉

相変わらずの淡白なアカネの反応に心苦笑する。

ひとまず、巨花竜ギガフラワードラゴンの件が片付くまではアカネたちに待機してて貰うしかない。

テーレの仲間が他にいたとしても、アカネと渡り合える奴はそれこそパンプキンで戦った紫眼の龍人レベルだろう。

早く終わらせることに変わりはないが、アカネがいる安心はとても大きい。

〈頼りにしてるよ、アカネ〉

〈んっ〉

珍しく明るい返事が返ってきてし驚く。

〈これから俺は巨花竜を転移させて消滅させる。その間、またセレーナとリリーを頼む〉

〈ん〉

そこで一旦アカネとの思念を切る。

地面に橫たわるテーレを見ると、もうほとんどの魔力が無くなっていた。

暴れる元気も、喋る余裕もない。

あとしで、魔力欠乏によって気絶してしまうだろう。

その時、テーレの手の方で何かがる。

ん?

そしてテーレの気配が消えて、気絶したことがわかる。

瞬間、先ほどのがさらに強さを増して発した。

は変化して、テーレの上でその姿を現す。

それはテーレの魔書だった。

「まさかッ!」

俺が気がついたときにはすでに遅く、テーレの姿が消える。

テーレは予め自の魔力が無くなるか、気絶をしたら決められた場所に転移するように魔書を仕掛けていたのだろう。

「やられた」

魔力がなくなれば、何もできないという油斷がなからずあった。

反省は後だ。

ひとまず巨花竜を倒すことが先決。

「え、そっちも!?」

巨花竜の方を見ると、その上に魔法陣が展開されていた。

俺が展開した魔法陣ではない。

テーレが仕掛けたものだろう。

そういうことか……。

何故、終わりなき森にしかいないはずの巨花竜がこの地にいたのかようやくわかった。

転移の魔書をもつテーレが巨花竜をこの地に転移させたのだ。

転移師の名は伊達ではなかったということか。

そして、次に巨花竜を転移させた場所は……キャロット上空。

「テーレ、お前の思い通りにはさせない」

読んで頂きありがとうございます!!

気がつけばまた3週間が経っていた……。

作者は一何をしていたのか。

気長に更新をお待ちください……ごめんなさい。

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