《魔法陣を描いたら転生~龍の森出の規格外魔師~》64 王様の依頼(後)
すみません、調不良で更新が遅くなりました……。
〈そのの力になりたいのではないのか?〉
俺が思考していると、そこに割り込むように師匠の思念が俺に流れてくる。
〈……何ですか、急に〉
〈何を迷っているのじゃ?〉
師匠は俺の気持ちをわかっていて、あえて問いかけているようだった。
〈……俺には使命があって、もし、この依頼をけたとして簡単には解決できないことだと思ってます。そうなると、今よりもずっと龍帝國の調査は遅れる。それは良くないことだと思っていて……〉
〈なるほど、そういうことか〉
師匠はわざとらしくそう言った。
俺が迷ったり、悩んでいたりするとき、師匠は「師匠」をする。
いつもは、あえてなのか「師匠」らしくない師匠だけど、こういうときは「師匠」になる。
〈年長者として、ちょっとしたお節介じゃが……人との縁、人にした善というは巡り巡って己の糧になる。じゃが逆に、切った縁、逃した善は時に己の枷になる〉
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師匠は凜とした聲音から、優しく諭すようなものに変えて俺に言う。
〈全てを救えとは妾は言わぬ。ただ、手の屆くものを見放し、後悔に苦悩するお主を妾は見たくない。だから、ユーリ……〉
俺の中にあった迷いが消えていく。
やるべき道筋がハッキリと見えてくる。
〈己の心に正直に選ぶのじゃ〉
〈はい、師匠〉
俺はもう一度、自分に問う。
王様に力を貸すのか?
――――。
〈みんな、俺は王様に力を貸したい。完全な俺のわがままになるけど、協力してくれるか?〉
〈もちろん! わたしはいつだってユーリくんのそばにいて、力になりたいから〉
〈僕も同じです! 弟子として、師匠をサポートするのは當たり前です〉
〈……私はユーリの使い魔相棒。遠慮はいらない〉
〈みんな、ありがとう〉
3人の言葉はそれぞれに信頼と溫かさがある。
思念魔法を使っているから余計に伝わってくる。
だから、俺は気がついた。
〈……まさか、さっきの聞こえてた? というか、師匠……みんなに思念流しましたね?〉
〈うむ、その通り。その方が話が早いと思ってな〉
〈…………〉
〈ぬぉ!? やめるのじゃ! 思念魔法で怨念を送るのは無しじゃ! 負のが直撃して、い、息苦しいぃ……〉
……まぁ、しょうがない。
師匠の言葉で迷いが無くなったのは事実だし、結果的にみんなに俺の正直な思いが伝わったわけだ。
プラスに考えよう。
俺は思念と思考の世界から戻る。
考える時間にしてはし長くなってしまったかもしれない。
王様を見ると、し諦めたような顔になっていた。
何か言おうと王様が口を開こうとする。
それより先に俺は言葉を紡ぐ。
「黙ってしまって申し訳ありません。し考えていました」
「いえ、私の方こそ無理なお願いをしてしまいました。今回の件は……」
「引きけさせていただきます」
「えっ?」
王様は驚いた顔でこちらを見た。
きっと斷られると思っていたのだろう。
揺してしまったことに気がついて、王様は顔をし赤くする。
そして、全てを理解して王様は再び凜々しさを取り戻す。
「お引きけいただき心より謝いたします」
王様は立ち上がり、お辭儀をする。
それに合わせて俺たちや、市長も立ち上がる。
「私たちも最大限の助力をさせて頂きますので、必要なことは何でも仰ってください」
「はい、ありがとうございます」
市長室での會談が終わり、盜賊の件のお禮である中央塔の書庫を行政局員の人に案してもらえることになった。
魔皇教団についての詳細は日を改めて説明をける手筈になり、早急にというわけではなかったようだ。
龍帝國、転移師テーレ、魔皇教団。
何だか知らず知らずのうちに様々な問題を抱えているような気がする。
それに冒険者ギルドや王様と関わりを持つようになっているし……。
集落の外に出ただけで、こんなにも々なことが起きている。
でも、この世界から逃げ出したいとは思わない。
今までの俺ならきっと目を背けていた。
転生して、この世界を好きになった俺はもう現実から目を背けたりしない。逃げたりしない。
この世界を、集落のみんなを、大切な人たちを守るために、自分が後悔しない道を進もう。
俺の中でまた一つ新たな誓いが生まれた。
***
市長室での會談を終え、私は宿に戻った。
「はぁー……」
はしたないとわかってはいるけど、私はベッドに飛び込んで橫になる。
ここ數日で濃な出來事がたくさん起きた。
賊の襲撃、市長との會談。
しかし、最も衝撃的なことは――――、
キャロット上空に現れた謎の巨大魔獣。
幸いなことに被害は避難中に怪我をした軽傷者が數名程度で、重傷者や死者はゼロ。
建の損害もなく、巨大魔獣が出現したとは思えないほどの結果となった。
この結果をもたらしたのは、この世界の神様である『天神様』が降臨なさったからだと市長から報告をけたけれど、私は正直半信半疑に思っている。
中央塔から逃げる際に見かけた人影。
屋の上に立っていたその人が、あの巨大魔獣を消し去ったのではないかと疑っている。
もちろん、天神様は信じているし、こんなことができるのはそれこそ天神様しかいないのかもしれない。
けれど、どこかで私は別の存在を信じている。
例えば――
「――ユーリ様とか」
口に出して、私はハッとする。
私は何を期待しているのか、と。
東洋の服を著た、私とそれほど歳の違わない不思議な雰囲気を持つ魔師の年。
直接魔法を見たわけではないけれど、あの(魔に長けた)スチュワードがその魔法の力量に心するほどの腕前の持ち主。
今日、近くでお會いして私にもただの年ではないことがわかった。
その風格は今までに出會ったことがないような特別なものを見た気がする。
それにずっとユーリ様の隣にいて妻だと言っていたも、また変わった雰囲気をしていた。と言うか、あの歳で結婚って出來なかったと思うんだけど……。
しかし、反対側にいて弟子と名乗った子供は言い方は悪いが「普通」だった。ユーリ様はあの子のどんなところに可能をじたのだろうか?
「もし特別なものではないのだとしたら、私にもチャンスは……」
また私はハッとする。
私は今、何を考えていたのだろう?
そうではないでしょ?
今日の會談で、ユーリ様に魔皇教団について調査をお願いしたのに……それもきっとかなりのご負擔になってしまう。
ユーリ様が沈黙された際には、もう駄目だと思った。
けれど、ユーリ様はお引きけしてくださった。
揺して恥ずかしい顔を見せてしまったけれど、心の底から嬉しく思った。
「本當に、本當に、よかったぁー」
ものすごく頬が緩んでいるのに気がついて、でも今は一人だからとそのまま緩めたままにする。
もしこれから報告の際にお會いしたとき、ちょっとした偶然で、奇跡的にも、ユーリ様の魔法が拝見できたら。……願わくば、魔法の指導をしてもらえたら――それはどんなに良いことだろう、とかに思い焦がれる。
凄腕の魔師に憧れているのか、それとも不思議な雰囲気をしたユーリ様に憧れているのか――今の私にはまだわからない。
読んで頂きありがとうございます!!
久しぶりの調不良で、かなり滅ってます。
やはり健康が一番ですね。
普段から気をつけたいと思います。
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