《シスコンと姉妹と異世界と。》【第8話】手合わせから2日後……

コトッ、……コトッ、……コトッ。

廊下から足音が聞こえてくるので布団に潛り、寢た振り二度寢作戦。

「おはよう、ショー。起きたかー(小聲)」

「(姉さん? そんな小聲じゃ起こす気ないでしょ……)」

「そうか、寢ているのか……」

姉さんが靜かに歩み寄って來、そぉ〜っと布団を剝がされる。

「ふふっ、まるで赤子のようだな……」

寢顔を見られているようだ。家族とはいえ何だか恥ずかしい。顔が紅くなってるじがする。

「んっ…………(ショーの匂いがする……)」

姉さんが布団にってくる!?

そのままゆっくりと布団が肩まで掛けられる。もう諦めて寢よ、いい匂いがする。寢返り打ってしまおうか……。

「(ゴソゴソ)」

寢返りキメて姉さんの方へ向き直り。

「(っっーー!!!!)」

姉さんが漫畫みたいにビクンっ!! ってなった。

「…………」 

「…………(心臓出るかと思った……)」

「………………」

姉さんの手を握ってみる。

「!!!」

若干の抵抗はすれど、本気で出ていくつもりでは無いようだ。

「…………あれ、姉さん? おはよ……」

「ひゃっ……お、おはよう……」

「(でもなんで……)」

「(いつから起きてた……)」

「「(どうしたものか……)」

「お兄ちゃーん! おはよー!!!」

「「(…………、終わった)」」

____________閑話休題。

不貞腐れたローズの機嫌が治ったころ、今度はローズが、俺と手合わせしたいと言い出した。俺が魔法を使って姉さんに勝ったことが、妹の偉大な好奇心を刺激したらしい。

「……あっ、そうだ! お兄ちゃーん、魔法対決しよー」

こんなじの、すんごい軽いノリだった。

ポケモンバトルじゃねーんだぞ。あいつら目の前通り過ぎようとしただけなのに捕まえて勝負吹っ掛けてくるからな。

まぁ妹の頼みでもあるし、無下にも出來ないんだけど……。

____________裏庭へ。

「はぁ……。本當にやるのか?」

後から聞いた話ではあるが、母さんがローズをそそのかしたらしい。姉さんから、

「ショーがお姉ちゃんに勝ったって聞いたわよ! ローズも魔法対決したらいいんじゃない? ふたりの魔法がどこまでのものか、わたしも自分の眼で観たいわぁ!」

ってモノマネ付きで言われた。で、今に至る。

「ショー、わたしに勝ったんだ。無様な真似はするなよ」

「ローズぅ、お兄ちゃんなんか、ぎゃふんと言わせちゃいなさーい」

「うん! がんばるーーー!」

「やりづらいなぁ……」

母さんがいつもよりかなり手厳しい。何故かローズと一緒になって、ヘソを曲げていた。今朝のアレを、ローズが言っちゃったんだろうなぁ……。ちょっとばかし、あの日の父親の気持ちが理解った気がする。

昨日、ちょぴっと練習して、ある程度のコントロールは摑めてきてるし、どうとでもなるだろ……。別に勝つ必要も無いのだし。

「それじゃ、いっくよー!!」

「え!?」

「數の暴力っ、弾けろ。『フレア』!」

「げ!10発同時ぃ!? うわ、頼む! 『水の壁ぇ』!!」

火球の線上に水の壁が出現。間に合った……。辺り一帯が蒸気に包まれる。なんとなく、マナが集まるところがじられるので、視界が悪くともローズを見失うことは無い。ローズも同じだろうが。

「こっちから行くぞ! くらえ! 『氷柱ラッシュ』!」

「よっ、ほっ」

のこなしだけで躱すかね……。面白ぇっ、ってぇ!」

「スキあり! 『フレア』!」

俺の水の壁によって作られた泥濘に自ら嵌るとは……トホホ。が泥だらけになっちまったよ。

「ちょい大きめの、『フレアぁ』!」

5つの火球を、大きな炎弾が呑み込む。

「『グラムシルド』!」

巨大な土の壁になすなく消える炎弾。

「あーもぅ!! 『水遁・水○弾』!!」

「わたしを守って! ゴーレム!!」

水龍と土で作られた魔人の対決になる。

「凄い……。どこかのお伽話みたいだ……」

「うーん……及第點ね」

ゴシャァァッ!

2つの拳と牙が、ぶつかり合い、泥の山に姿を変える。

「某忍者漫畫丸パクリしたのに決め手にかけるのかよッ! なら……」

「そんなカッコイイ呪文、何処で!」

「「グラン、フレアぁぁ!!」」

「ソルス!」

二つの巨大炎弾が、真ん中に突如として出現した小さな球にれた瞬間、弾けて、消えた。

「お母様……?」

「おしまいよ、2人とも。ほんとはもっと観てたいのだけど、これ以上はお家がめちゃめちゃになってしまうわ。このあとに直すお父さんがかわいそうじゃないの」

母さんが焼けた草花や、真っ二つになった土の壁、泥の山を見やりながら、しばかりの怒気を込めて言う。

「(お父様が直すのですか……?)」

「(え? 俺たちで直すんじゃないの?)」

「お母様、すごいです。わたしたちの中級呪文を、あんな小さなソルスで抑え込むなんて……」

「経験の差、かしら。それに、こないだ言ったでしょう? 昔は名の知れた魔法だったのよ、って」

俺とローズの手合わせは、思わぬ形での幕切れとなった。

そして父さん、ごめんなさい。

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