《シスコンと姉妹と異世界と。》【第12話】校試験④

「早速だが、これを的とし、魔法を持って殲滅せよ」

「え……これ……人間じゃ……」

なんというか、酔い潰れたところに手錠をかけられ、足枷をされたようなおじさんがそこに転がされている。そんな狀況あるのだろうか。

「安心しろ。かないし、人間の形だが命あるものじゃない。魔法によって作られたモノだ。実によく似ているがな。戦場ではそれが生の人間やになるんだが、試験だからな」

それは覚悟している。姉さんやローズといたいだけでこの學校にるわけじゃないんだ。大事な人を守れる力がしい。

でも無防備なおじさん(のようなもの)を殲滅するのは々気が重い。父さんの背中を思い出してしまう。

「分かりました。行きます。危ないんで10m以には近づかないでください」

「ほお。よし分かった。皆の者!!」

リーヴァがそう言うと、周りの空気がピンと張り詰めた。固唾を呑んで見守っている、と言うのが適當だろうか。

「ふーーっ……。集中、集中……」

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30cm四方の水の立方を作り上げる。そして、それを直徑10cmの球回転させつつ圧する。その外側を更に水ので覆う。ここまで13秒。

「よし。いけ!」

シューっと音を立てるそれを目標へ放る。

「むっ……」

「いきますよ……。ウォーターショット!!(水の散弾)」

掛け聲とともに水の球が弾ける。圧された水が解放され、おじさんの躙していく。視界が晴れたそこに殘されたのは、元おじさんだったミンチだった。魔法で出來てたから消えちゃったけど。

「良くやった。魔法の準備から発までもうし時間を短できれば、十分に実戦投出來るだろう。実に清々しい気分だ」

漫畫やラノベを広く淺く読み漁ったおかげで、魔法のイメージに事欠かない。しかもこの世界がちょっと俺を優先してくれるらしい。練習の時、喜びすぎて暴発して右半だらけだったけど……。

「はい。ありがとうございます」

「シャンティーは反対するかもしれんが、君はおそらく姉と違い魔法士科への學になるとは思う。が、基本的に校舎も変わらないし、そう不自由なく過ごせるだろう。これからの長に期待している。勵めよ年」

「これから、よろしくお願いします。先生」

いい先生に出會えた気がする。でもこの人をスルーして玩にする母さんていったい……。今度昔のこと、聞いてみようかな。

「みっちりいくからな。覚悟しとけよ?さ、妹を呼んできてくれ。それでこの試験は全部終了だ」

ニシシっというような笑顔でスパルタ宣言。忘れよう。さっさとローズ読んでこよう。

______。

「ローズ・ヴァッハウ!前へ」

「はい!」

「お前は推薦の段階で、魔法士科のみへの推薦となっている。このまま騎士科の試験は省略しても構わないか?」

「……あの、お兄ぃ、ショー・ヴァッハウは、騎士科への學なんですか?」

「いや、あいつは魔法士科になると思うぞ」

「そしたら大丈夫です。省略で」

満面の笑みで応える。

「そうか。ならいい。母親直伝の魔法、とくと見せてもらうぞ」

「はい、お任せ下さい。いきます」

先ほどミンチにされたおじさんが再度出現する。

片手を天に向けて掲げ、唱える。

「灼熱の紅玉よ、わたしのに従え」

出現した直徑2m弱の火球が、掌サイズまで小さくなる。

「……」

人差し指をおじさんに向けて狙いを定める。

「……ファイア」

掌の太から熱線が照される。

おじさんの首から上が完全に焼失しちゃってた。

「さすが、あいつの子だな。一瞬でアレを消し炭にするとは。いいものを見せてもらった。兄妹揃って大したものだ。だがくれぐれも無理はするなよ。無理に魔法を使おうとすると……いや、お節介が過ぎたな。すまない」

「いえ……お心遣いありがとうございます。ところであの人形はどのように……」

「仕組みのことは教えられないわね。でもひとつ言うなら……。あれのモデルは私の夫よ」

この人はこれまでの試験でも、拘束された旦那さんもどきを攻撃させて、いいものを見た、とか、清々しいとか言ってたんだろうか。この先生でこれから大丈夫なのかな……。

______。

「とりあえず2人とも、私がけ持つことになりますので、よろしくお願いします」

リーヴァ先生が母さんに頭を下げる。

「そんな、改まって言うことじゃないわ。ビシビシ扱いてやってね〜」

「言われなくてもそのつもりだよ」

やっぱり2人とも仲良しである。先ほどローズから、あの拘束されたおじさんのモデルが、自分の旦那と聞かされているので、ちょっと心配な人だな……とは思うんだけど。

「ほらお姉ちゃん、拗ねないの〜」

「だって2人とも魔法士科に行ってしまうなんて……」

「授業は大して変わらないんだからいいじゃないの」

「でも……」

姉さんが拗ねて半泣きである。そこまで3人みんな揃ってってのが良かったのかな……。

「分かった。そしたら3人とも寮に住んじゃいなさいよ。したら皆で過ごせるわよ」

「「「えぇ!?」」」

え?引越し余儀なくされるじ?マジ?

「でも家事とかあるし……」

「お父さんとわたしだけなら問題ないわ。最悪お父さんは食べなくてもなんとかなるでしょう」

さすがに扱いがぞんざいである。同じ男として泣きたくなってくる。ローズの反論も虛しく終わる。

「じゃ、そゆことだから。リーヴァ、シャンティー、手続きとか面倒なのは任せたわよ?」

「お任せ下さい、師匠」

「ええ。それじゃわたしたちは帰りましょ。2人の學祝いもしなきゃいけないしね」

まさかの3人共同生活が決まってしまったが、大丈夫なんだろうか……。まぁ家事はローズがいるし、俺がそれの手伝いしてればなんとかなるか。姉さんは……全力で布団叩きする、とか?

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