《シスコンと姉妹と異世界と。》【第45話】文化祭準備④
部屋の前に到著しひそひそ聲の作戦會議。
「出來るだけ明るく、しかもいきなり攻めるぞ……」
「反撃の隙を與えない、ってことだよね」
「そういうこと。じゃ行くぞ? さん、にぃ、いち……」
「「ゴー!!」」
ドアを勢いよく開け放ち部屋に突撃する。
「「たっだいまー」」
「うわぁぁぁぁぁああ!!!」
笑っちゃうくらい飛び上がって驚かれた。
「お姉ちゃーん!!」
「姉さん!!」
とりあえず予定通り抱きつく。
「な、なんなんだ急に!?」
「えへへ〜」
「たまには甘えるのも……と思って」
「こら、離せったら」
「「離しませーん」」
ええ、死にたくないですから。
「くっ……」
「こちょこちょこちょ〜」
ローズが攻めに転じる。正直火に油を注ぐような気がしてならないんだけど。まぁ妹の覚を信じよう。
「くっ……は、は……。やめ、やめろ……」
「あっ」
「「あっ」」
俺と笑いを堪えていた姉さんの足が縺れ、そのまま布団へなだれ込む。
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「あっぶねー」
「こらー、お前たち」
姉さんがポカポカっと俺とローズを軽く拳骨で制裁。
「ふふっ」
「「「はははははっ」」」
何が可笑しかったかイマイチ分からないが、思わず笑いがこみ上げてくる。
「はぁ。……もう怒るのも馬鹿らしくなってしまったな」
よかったぁ……。ローズと目が合う。お互いに安堵の表といったところか。
「但し」
「但し?」
「今後あんなふうにってくるのは止してくれ。から心の臓が飛び出してくるかと思ったぞ……」
「ごめんなさ〜い」
「悪かったよ」
「分かってくれたならいい。ほっ」
姉さんが起き上がる。
「よくもやってくれたな! こうしてやる!」
「ちょっ、なんで、俺!? ははっ、やめ、くすぐ、るの、だめ……」
「わたしも!」
裏切ったなローズ……。化けて出てやる……。耐えること數分。
「し……ぬ……」
「よし、そろそろ許してやろう」
「もうやめちゃうのー?」
「はぁ、はぁ、はぁ……。苦しい……」
ようやく開放された。涙が出る……。
「まぁ冗談はここまでとして、アリスやモーリス君辺りから話を聞いたとは思うんだけど、わたしが歌を皆の前で披することになったんだ」
「でも、なんで急に?」
「確かに。お姉ちゃんが立候補でもしなきゃ歌を披するなんて流れにならないような気がするけど……」
「ひと月ほど前になるかな、稽古後にいつものように湯浴みをしていた時のことだ。朝早いのもあって誰も居ないのをいいことに、鼻歌じりにを洗って湯船に使ってたわけだ。それをシャンティー先生が聴いてたんだ。あとは流れで……」
「あーあ」
「今聴かせてよ!」
「それは恥ずかしいし、隣の部屋にも人が居るからな……?」
「えぇ〜?」
「本番までお預けか〜」
「でもお姉ちゃんが歌うなら投票1位は決まったようなものかもしれないね」
「確かにな。うちのメイド喫茶は頑張っても2位だなー」
「いやいや、そんな決めつけるな。重圧にしかならないんだから」
「でもご褒ってなんなの? お兄ちゃん知ってる?」
「クラス代表が知らないのに俺が知ってるわけないだろ? 姉さんは知ってるの?」
「いや、全く……。ただ、あの人なら何するかわからんな」
「お姉ちゃん、あの人って?」
「今の生徒會長だ。たまに食事に行ったりもする仲なんだが、かなり変わり者なんだ。終始こちらの調子が崩されて向こうに乗せられて、気付いたら距離がまってあっという間に誰とでも仲良くなれてしまう、そんな人だな」
「その話聞いただけなら、自由奔放な人たらし、ってじだなあ」
「まぁ、ショーの想像で大合ってるな」
「へぇ〜。わたし會ったこと無いや」
「まぁ國立學校の長という立場もあって、外との連攜だったり々と面倒事が多いからな。卒業資格は持っている筈なんだが、生徒として籍を置きつついろいろやってくれているんだよ」
「え!? 長!?」
「そうだ。生徒會長と同時に経営責任者でもあるからな」
「凄い兼業の仕方だね……」
「今度の文化祭には恐らく意地でも參加するはずだぞ? 祭りごととかには積極的に參加したがるからな。その時には紹介するようにしよう。來るってことはあの人の前で歌を披しなければならないのか……」
パーティーピーポーってやつか。人たらし兼パーティーピーポー。兼業しちゃダメなじしかしない。アリスさんにですら翻弄されっぱなしな気がするんだけどな俺。それ以上の存在ってこと?
「あっ。これは俺の要件なんだけど、食材の仕れとかの関係で泊まりがけで、今週末に隣街へ行こうと思うんだけど姉さん一緒に行かない?」
「ふ、2人でか!?」
「え? ローズも一緒だよ?」
「それなら良かった。ぜひわたしも行かせてもらいたいな」
ローズには前もって話を通してあるし、モーリスにも仕れは一任してもらっている。お茶とか、ソースに使おうと思ってるミソとか裝とか。宿代は自腹切っても痛くないほどには稼がせてもらってるしそこは気にしない。
ローズがどんなに姉さんより全般的に家事をこなせるとしても、一晩とはいえ11の妹を置いていくのには不安があったんだろうな。
「そしたら週末は2人ともよろしく! ついでに行商人の護衛任務も一緒にけて置くね。宿代とかも浮くし、馬車に乗っていけるしで一石二鳥だかんね」
「うん! 楽しみだね、お姉ちゃん!」
「ああ、そうだな」
とりあえずあそこに予約も兼ねて手紙でも出しておかないとな。今後のこともあるし、前もって話を通しておく方が後々楽に事が運びそうだし。
そんなこんなで、3人揃ってのプチ旅行の開催が決定されたのであった。
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