《シスコンと姉妹と異世界と。》【第50話】下ごしらえ⑤

1人の人間の墜落事故以外、とくに問題は起きること無く目的地の隣街に到著。面白いものを見せてもらったお禮にとオレンジを4つ貰った。いらんよ。食堂に出てくる度に思い出してしまいそうだ……。

ひとまず前回モーリスと止まった竹の宿で、遅めの晝食を取ることにした(歳上2人に斷られたら予定が狂って困り果てることになってた)。

「ごめんくださーい。予約してたショー・ヴァッハウです」

「はい! ようこそお越しくださいました!」

「4人なんですけど大丈夫ですか?」

「もちろんですとも! ささ、お席へどうぞ」

営業スマイル(プロ仕様)を惜しげもなく披しながら、陣の椅子を引いて席へ案するさわやかきんに君(仮)。

「ショー様は以前お越しくださっているので存知かと思いますが、手近に、説明をさせて頂きます」

「はい!」

アリスさんと姉さんは頷いただけだったが、ローズがえらい食いついた。きんに君がポカンとしてるじゃないか。

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「當宿の食事はワショクという……」

この辺はまぁ聞き流しに限る。過去にこの世界に來た日本人が覚醒して和食をこの地に付かせたってこと。

「それではご用意してまいりますので、今しばらくお待ちください」

お茶を置いてきんに君が席を離れる。

「注文は取らないのか?」

「大丈夫。俺に任せといて! それにもう前もって注文してあるから」

「ホント!? お兄ちゃんいつの間に」

「へぇ〜。お姉さん、ショーくんの男気に火傷しちゃったかも〜」

姉さんの首がグリンとアリスさんの方へと回り睨みを利かす。場所が場所なら木刀とか持ち出してたかもしんないな。

「ウソウソ、エリーゼったらそうカッカしないの……」

「笑えないぞ……」

もう自分のこと僕とも言わなかったよ。ホントにの子に戻っていってるんだなぁ。ありのままで良いと思う。せっかくアリスさんかわいいんだから。どっちかって言ったらキレイかな?

そうこうしているうちに10分近くが経過。きんに君がお盆を手にこちらへ向かってくる。

「お待たせ致しました。こちらが本日の晝食となります、ミソトンカツ定食にございます」

「これは……」

「なんと……」

味しそうな……」

「それじゃ」

「「「「いただきます!」」」」

塩と味噌ダレをあと付けで、か。んー學校でこれやるとなると使う皿が増えるんだよなあ。いっそハーフ&ハーフにするか……。タレはハケでサッと塗って、もう半分は塩とスダチでとか。

「やっぱり味いな……」

「「「……」」」

3人とも無言でトンカツにご飯に味噌に漬にと、右往左往縦橫無盡行ったり來たり。てかアリスさん箸使えるんだな。

そのまま食べ進めること10分。全員完食だった。

「これを文化祭で出そうと思うんだよね。ミソトンカツ」

「このソースがミソというものなのか?」

「んーん、正確にはこのソースの元だよ」

「お前はほんとにワショクに詳しいのだな……」

「どうでしたか、お味の方は」

料理長の、である。

「大満足ですよ! 思わず會話がなくなってしまうくらいに」

「こんな味しいの初めて食べた!」

「わたしもです」

「そうだねー。これは確かに今まで食べたことないね。味しかったわ」

アリスさんが話しているのを見て料理長の顔が豹変していた。

「あ、貴方様は……アリス・デュボワ様では……」

「あら、バレちゃった」

「なんと栄なことかッ!! この様なチンケな宿にお越しいただくなどと……」

「自分の宿をチンケだなんて言わない方がいいわよ。この料理があればもっと業績もびるんじゃないかしら」

アリスさん、人が変わった……。どういうこっちゃ。

「申しわけありません! この料理はこちらのお客様に頼まれてお出しした次第でございます」

「文化祭の試食會も兼ねてと思って……。まさかここまで味しいとは思わなかったです! 料理長さん、ありがとうございます」

「いえいえ、後でこのソースの作り方を纏めたものをお渡ししますのでお聲かけください」

「待って。ショーくん、このメニューここの店で出してもいいかしら?」

「え、構いませんけど……。あっ、でも、文化祭のあとにしてください!」

「ショーくんはこう言ってます。あとはあなたが決めることよ?」

「ショー様、この料理を譲ってくれはしませんでしょうか」

「譲るも何も僕が作ってもらったですし……。僕が作ったと言えるのは揚げ時間とかそんなもんですし」

実際はそれも違うんだけどね。クック●ッド先生に教えてもらったりテレビで見たり……だし。ナビ子先生もだな。

「じゃあショーくんはコレを譲るとして、店主さんはどうするの?」

つまり、値のことを詰めるってことだろうか。

「いや、べつに何かもらおうなんて……」

「それじゃ、商売としてダメなのよ。ケジメはしっかりしないとね」

詰める、が別のに聴こえてくるようだ……。

「……では、ショー様の卒業までこの宿をお連れ様3人まで無料、ということで……」

「え!? そんな……」

「いーのいーの。男に二言は無い、って言うんだから! お言葉に甘えさせて貰いなさい?」

「はい……」

「ホントによろしいのですか?」

黙ってやり取りを見てた姉さんが口を開いた。

「ええ。どう見積もっても利益の方が大きい話ですからね! なっはっは」

ローズが毎日泊まることになったら、その笑いは啜り泣きに変わることだろう。

「このミソはこの街で仕れられる?」

「ええ、左様でございます」

「じゃあ後でそっちも顔出さないとね。それじゃ、ごちそうさま」

「ありがとうございます。またいつでも皆さんいらっしゃって下さい」

「「「ありがとうございました!」」」

この後は街へと向かうことになった。

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