《シスコンと姉妹と異世界と。》【第58話】メイドのお仕事④

風呂から部屋に戻ると急に眠気が襲ってきたので、気持ち早いが俺は寢ようと決めた。張の糸が切れたのだろうが、本來風呂で張するのってどうなんだろうか。疲れてちゃ本末転倒だと思うんだけど。

背もたれを倒してメイキングされたソファベッドにる。すると驚くことに、まるで人がいるかのように布団の中が溫かくて心地いい。秀吉の草履の話みたいなやつだろうか。

まぁ害はないし、黙ってよう。

「ショーくん、もう寢ちゃうの?」

「いや〜、なんか眠くなっちゃって……」

「ん、ショーくん……」

アリスさんが2歩下がる。そしてそれは助走の為のものだった。ソファベッドにルパンよろしく飛び込み、布団の中の人に突撃した。

「クラリスさん……」

「おは、おかえりなさいませご主人様」

「……何してんすか?」

「添い寢サービスでございます。そして、その待機狀態として布団を人で溫めておきました」

と言い張るクラリスさんの頬には、シーツの模様の跡がくっきりと移っていた。

「アリスさん、わたしもメイドになったら添い寢サービスってしなきゃなんですか?」

「大丈夫よローズちゃん。添い寢サービスなんてウチではやってないから」

「……てことは、クラリスさん。メイキングした俺のベッドでサボってて、尚且つ寢てたってことですか?」

「寢てない寢てない!!」

「あっ、ほっぺた……」

ローズの短く鋭利な閃きという名の指摘。

「ク〜ラ〜リ〜スぅ〜?」

「…………」

「クラリス」

「……はい」

「埋め合わせはいずれしてもらうから」

「……はい」

使用人と主人の関係がはっきり見て取れるやりとりだった。だから俺は不干渉を決め込んだ。

「クラリス」

「……はい」

「ショーくんの添い寢をするのはわたしの仕事だから、それは今後憶えておいてちょーだい」

前言撤回。そんな契約を結んだ憶えはまるで無いのだから。

「お兄ちゃん!」

「んー?」

「添い寢ならわたしがしてあげるからね! わざわざアリスさんに頼まなくても、慣れ親しんだわたしがしてあげるから!!」

「誰も、添い寢してくれ、なんて言ってねーよ!!」

「遠慮しなくていいのよー? 甘えられるのは今のうちだけなんだから〜。今を楽しまなくっちゃ」

「もし、添い寢が必要であればお呼びください。それに週明けからは同じ學舎で寢食を共にするわけですから、寂しくなったら部屋を訪ねてくだされば、いつでも添い寢くらいお易い用でございます」

「クラリスさんまで!?」

「クラリス、下がっていいわ。貴方はまだもうしやることが殘っているでしょう?」

「そうですね。それではまた明日お會いしましょう。おやすみなさい」

「「おやすみなさい……」」

「……さて、ショーくん。クラリスのことをわたしが気づかなかったらどうしていたのかしら?」

「どうもしないっすよ!! 仕方ないなぁ、ってそのまま放置するくらいで」

「ふーん。……どう思う、ローズちゃん?」

「疑が殘る」

「疑わしきは罰せよ、だったかしら」

「疑わしきは被害者の利益に!」

「では、罰として……。うーん、そうね……」

「結局罰あるんですか……」

「復唱しなさい、いい?」

「はぁ」

「アリスさんの言うことは絶対」

「ええ!?」

「アリスさんの言うことは……」

「お兄ちゃん、ダメダメ!! そんなのダメ!!」

「あら、ローズちゃんにとっても悪いようにはしないわよ〜?」

「ならいいです……」

「薄者め! お前の兄に対するはそんなもんか!」

「ほら、アリスさんの言うことは……」

「…………接待」

「そんな政治的なものじゃないわ」

「……絶賛」

「おだてられても何も出ないわ」

「……雪岱」

「版畫は嗜んでいないのよ」

なぜ知ってる……。ホント何者だよアリスさん。いや、お父さんの影響なんだろうけどさ……。

「……絶対」

「うむ。それでよろしい!」

「アリスさんはお兄ちゃんに何をさせるんですか?」

「まあまあ。んー、とりあえずショーくん、今日は々とお疲れ様。落馬したりそれで怪我したり、お風呂で開帳したりと大変だったでしょう? だから今夜はしっかりグッスリ寢なさい?」

「はい。……それだけですか?」

「まだ何かさせてほしいの? ショーくんは張りなんだねぇ」

「させてしくないです! ちゃんと寢ます!」

______。

ショーくんが寢靜まってから30分程が経って、わたしとローズちゃんは計略を実行に移そうとしていた。

「……ローズちゃん、まだちゃんと起きてる?」

「はい、起きてます」

「じゃあちょっと手伝って?」

「? あ、はい」

「ちょっとこっちに」

「お兄ちゃんをどうするんですか?」

それはこのあと、次のお話でのお・た・の・し・み♡

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