《シスコンと姉妹と異世界と。》【第60話】眠れない夜②

「あなたの事を守るためよ、ローズちゃん」

その言葉が分からなかった。言葉が持つ意味は分かるけれど、何故それをわたしに向けてアリスさんが言ったのかが分からなかった。守る? 誰から? 何から?

「その綺麗な赤髪が……ね」

「わたしの髪のがどうかしました?」

「かつて世界を手中に収めんと、闇で世を滅ぼそうとしたあの魔と同じ赤い髪。それはその魔に起因する強い魔法力を持つ者に発現するとされているの。早い話が伝子を持ってるってかんじかしら」

「え、でも……お母さんも……」

「そのお母さんからけ継がれたものなんだろうね。おそらくエリーゼも、自分も魔法が使えるんだって自信もって言えるようになれば、ローズちゃんやショーくんみたいに魔法を扱えるようになるはずよ、當然。あの『紅蓮の』の娘なんだし。で、問題なのは今でもその魔を信奉する奴らがいて、その復活を企んでいる、なんて話があるからなのよ」

「そんな……だって魔って死んだはずじゃ……」

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「たしかに死んでる筈だけど、魔に常識なんか通用しないでしょ。自分1人で世界を相手取って戦爭しかけるくらいにはぶっ飛んでるんだから。復活の手段だって用意しててもおかしくない、くらいに思ってないと」

「その手段は分かるんですか……?」

「99のに1の……なんて話も聞いたことはあるけど、なにが真実かは分からないわ。わたしはそっち側じゃないからね」

「……」

「ただ、赤い髪を持っている以上、奴らから目を付けられるのは必然と斷定出來てしまうのよ。過去にも赤い髪の人間が殺害されたり、拐されたりってことはあったらしいから。だからその可能があるってのを今理解しておいてほしいの。いずれ2人にもこの話はすることにはなるけど、當然最初はあなたに話さないとと思ったのよ」

「……まぁ納得出來ないけど分かりました……」

「ならいいわ。ただ、詠唱省略は學校の授業では余程じゃない限りはしないでちょうだいね? そういう方法があるって知ってるだけで、いざという時の対処の仕方がだいぶ変わるはずだから。最低でも自分のは自分で守れるようにならないとね。もちろん2人もあなたを守ろうとするだろうけど……」

「はい……。でもアリスさんはなんでこんなにも何でも知ってるんですか?」

「何でもは知らないわ。わたしが知ってるのは、わたしが知ってる事だけよ。……その為にわたしはここにいるのかもしれないし」

「え?」

「何でもないわ。さ、難しい話はここでおしまい! 明日も朝早くないとはいえ、遅くもないんだから寢ないとね」

「そうですね。……おやすみなさい」

とりあえずお兄ちゃんの隣に橫になる。心の整理がつかないから、今すぐに寢れる気はしなかったけど。

「ローズちゃん、抗いなさい。抗わなければ何も変えられないから」

「はい」

「それじゃ、おやすみなさい」

無詠唱の魔法……か。今度試してみよ。わたしがやったらお兄ちゃん、驚くかな? ふふっ。驚く顔が今から楽しみかも。

お兄ちゃん……。わたしも、強くなるからね。

そんなことを考えていたら、お兄ちゃんが寢返りを打って顔がこっちを向いた。當然かなりの近距離で。

……ほっぺくらいなら、いいよね?

気恥ずかしさが限界超えちゃったからか、なんだかんだでこのあとすぐに寢落ちしてしまったのだった。

______。

 

聞いてしまった。ローズとアリスの話を。

3人が今現在進行形で川の字に寢ていること。わたしでも魔法が使える筈だということ。母様やローズが魔の力の一旦にれていることと、それに付隨してそのを狙われる可能があること。この世界の魔法は、想像するだけで創造出來るらしいということ。

最後の1點はショーもそれを知っているという。心當たりはアリアリだ。をもって痛しているし、いつか本人に聞こうとめていたことだった。

だがしかし、どうしたものか。今の今までの危険なんてものは考えたことが無かった。しかし今までの10年強、ローズが危険に曬されたことは一度としてなかった。父と母の存在故か? 現狀2人の強者を相手取る程の勢力ではないということか。それともまだローズが未で、そのではないということなのだろうか。

考えても仕方がないし、埒が明かない。わたしは何もかも知らなさ過ぎる。自分に出來ることは2人の弟妹を守ることだけだ。

そう自らに言い聞かせ、思考を止めた。

「水よ、起これ」

たしかにアリスの言う通りに魔法を使うことが出來た! ……しかし実踐不足というか経験不足というか、加減を間違えたようだった。掌から零れた水はベッドを臺無しにしてしまった。

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