《シスコンと姉妹と異世界と。》【第67話】文化祭④

「とりあえず、注文は……まだ考えちゅー」

「もうししたら頼むからちょっと待ってて」

「だってさ」

というローズからの報告があった。もちろんサニーさんとゾラさんについてだ。

大まかなメニューとしては、トンカツとオムライスがそれぞれ600円、ドリンク(お茶とかコーヒーとか)1杯100円、オプション300円というもの。まぁ1人あたり合計1000円落としていってね、ってこと。良心的なお値段設定であるはずだ。

俺の中ではコミコミでワンコインの500円でもいいかと思ってたんだけど、アリスさんやクラリスさんがクラス會議にし、みんなを煽った結果こうなった。

「「お帰りなさいませ、ご主人様♡」」

かなりいい恰好をした紳士というかお偉いさんが來場。怖いもの見たさなのか好奇心なのか、何があの人をここへ導いたのかは分からない。

気になったことがあって以前、

「ご主人様じゃなくて、旦那様じゃダメなんですか?」

という疑問をクラリスさんにぶつけた事があった。クラスの子からもちょっと恥ずかしいとの事だったので、俺が代表して皆の前で聞く運びとなったのだった。そうしたらば、

「ご主人様のほうが、背徳的というかちょっとイケナイことをしているような覚を男は覚えると思うのよね。ね、ショーくん? ……だからこそ特別が出るってわけ。売上にもこっちの方が実際繋がったからね、実際」

ということだった。途中で導火線が燃え盛る弾を投げ込まれたが、ダンマリでやり過ごした。クラリスさんが自主回収してったので助かったけど。

準備についての話はこんなもんだろうか。まあ結局、食材調達やら接客やらで疲れるんだから、その分は金で埋め合わせって発想にみんなが落ち著いたってことだろう。

「やぁローズちゃん、ショー。僕も早めの晝をご馳走になろうかなと思って來てみたんだ」

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「そんな〜ご主人様だなんてやめてよローズちゃん」

あいつは天然なのか……?

さっきの紳士やモーリスに続いて一気に人が押し寄せてきていた。老若男問わずに來たのにはさすがにびっくりだ。注文はまだ皆さん悩んでいるようだ。まぁどちらも口にしたことも無ければ見たことも無いだろうし、頼み辛いのかもしれないけど。

「ローズちゃーん、注文ー」

「お待たせ致しました」

「んっとねー。トンカツとオムライスを1つずつと、オプション1つずつ、お茶2つで」

「かしこまりました。今しばらくお待ちくださいませ」

オプションという単語に周りの目が集まった。

「注文お願いします」

「はーい♡」

クラリスさん慣れてるなぁ、さすがに。スーパー営業スマイルでモーリスのもとへ。まぁそれでたじろぐような奴じゃないんだけど。

「トンカツにお茶とオプションで」

「かしこまりましたー。トンカツセットですね〜」

で、ササッと調理を済ませて提供。

「「お待たせ致しました〜」」

それぞれの卓へ食事が運ばれた。そこへ注がれる大勢の視線の數々。

「それではオプションを始めさせていただきますね♡」

クラリスさんがサニーさんたちを、ローズがモーリスを擔當するらしい。

味しくなぁれ、味しくなぁれ♪」

クラリスさんが歌いながらケチャップでオムライスの上に絵を描きあげていく。……出來上がったのはサニーさんの似顔絵だった。クオリティーが高すぎてあそこまでのはみんなには期待出來ないだろうけど……。

「ご主人様、あーん♡」

「恥ずかしいよローズちゃん……。ん、あーん」

「次はごはんですよ〜。あーん♡」

「あーん」

これにはさすがに嫉妬の念をじずにはいられなかった。もちろん會議の段階で決まっていたことだし腹を括ってはいたのだが、いざ目の前で妹のこんな姿を見ると……な。

「こっちはオムライス、セットでお願いします!」

「ならこちらはトンカツを。無論、セットで」

サクラ大作戦、大功。會議にした時に思いついたらしいのだが、アリスさんの要請でサニーさんとゾラさんがサクラになることを快諾してくれた。何故か俺がお禮をその時言われたのが気になったが……。まぁ今はいいや。

モーリスはその話が出た時に名乗りをあげていた。タダ飯が目當てだろうとみんなは考えていたが、本人の言い分としては「男両方がいた方がわかり易くていいだろう」というもっともらしいものだった。

何はともあれ、この時間を境に2時間近く水を飲む間も無いままにフル稼働でみんな働き続けたのだった。

______。

俺たち休憩タイムにやっとなった。やっと水が飲める。最後の方はもう眩暈がしてきてたし、なかなか危なかったと思う。

「お疲れ様です、ご主人様♡」

「お、おう……」

俺はここでたじろいでしまうんですわ。あいつが、モーリスがおかしいだけで。これが普通だと思う。妹にご主人様って言われても困ると思うのだ。

「はいこれ、お水だけど」

「ありがとな。……はぁ、にしても疲れたな」

「……そう?」

「ローズも顔がなんか引き攣ってるぞ? 営業用の顔で固定されてるみたいだ」

「やっぱりぃ? ねえねえ、おでこ出して」

「ん? こうか?」

「お熱測りまーす」

ローズがおでこをくっつける。むしろ熱上がっちまうってこれ。気付いてくれ〜でも顔赤いのは無視してくれ〜。

「はいおしまい!」

「あれ、ちょっとラクになったかも」

「魔法でちょちょいとね〜」

「ありがとな。お禮に今日は俺の奢りだ。仕事に響かない程度になら好きなだけ食べていいぞ」

「やったー!! でも眠くなるから程々にしとく」

「……そっか。そだ、手だせよ」

「はい」

「折角デートなんだから手繋いでいこうぜ」

「え、ちょっ、……えへへ」

「何笑ってるんだ? そんなにお腹すいてたのか?」

「そんなんじゃないもんばか!!」

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