《シスコンと姉妹と異世界と。》【第86話】貸し出し権⑫(サニー編)
「はぁ〜生き返るねー☆ 一面紅くて綺麗だし」
「ですね〜」と、ホッとひと息。でも「ちょっと姉さんの視線が刺さってるような気がしてならないんですけど」
「まぁ、今日は公認だから気にしない気にしない」
「埋め合わせがキツそうだなぁ……」
「そこは手伝えないかも……」ノビをしながら、「でもまぁショーくんが何をするにしても、エリーゼお姉様は喜んでくれると思うよ☆」と、無邪気に笑う。
俺はサニーさんに言われるがまま、桶型の風呂に並んで浸かっている。2人並んでも腳をばせるゆったりサイズだ。ホテルでなく旅館の天という事だからか、オーシャンビューではなく周りを木々に囲まれている。今は紅葉の時期だから尚更綺麗だ。
「あの時は、ありがとね……」上を見上げながら「ショーくんがいなかったら、わたしは今日ここでこうして、ショーくんとお風呂にってお話したりも出來てなかっただろうから」とサニーさんが、呟く。
「いえ、そんな……」
「そんなことあるのっ」
そう言われてしまえばこっちは引き下がるしかない。サニーさんの気持ちを無下にすることなんて出來ないし。
「もう……、本當に謝しきれないんだから……」言いながら俺の肩に頭を預け、「…………」
黙ってしまわれた。まぁ悪い気はしないし、寧ろ嬉しいくらいだ。口に出すと臺無しになるから言わないけど。
俺とサニーさんとの間に何があったのか、それはまた今度。
モーリスみたいな男前野郎なら、肩から抱き寄せたり、腰に手を回したりするんだろうけど……。さすがに日和ってしまう。でもやっちゃう。
「……、サニーさん」ひゃいっ、とサニーさんが驚くが構わず頭をでつつ「大丈夫っす。傍にいる時は必ず俺が頑張って護りますから」
「うん……、うんっ…………」
サニーさんが背中に縋すがりつく。嗚咽を洩らしながら、鼻を啜りながら、心を洗っていた。あの時もこんなじだった。なんだかんだ言ってもサニーさんもまだ15のなのだった。當然弱い部分をさらけ出す瞬間も必要だ。その場所に俺がいていいなら、それは栄だし、嬉しい。
生意気だ、ってサニーさんには言われてしまうだろうけれど、草場翔一は18年超を日本で生きていたのだから、神的年上として力になってあげたいと思っている。
とは言ってもですよ。周りはそんな事知ったこっちゃない(サニーさんが話してれば別だけど)だろうし、今の狀況は傍から観たら俺がサニーさんに如何わしい行為を働き、泣かせたと取られても仕方ないような気がする。今更だけど。
視線だけで蜂の巣になりそうだ……。
「……もう大丈夫……、ごめんねー」
「いえ……」ちょっと殘念な気持ちもあるから、「もういいんですか?」と口に出してしまった。
「何、もっとくっついてたかったの? ショーくんはやっぱり男の子だね〜」
「そそ、そんなつもりじゃ……。それに、周りの目もありますしね……」
「周りの目がなかったらどうだったの?」
「あいや、それは……」
墓があったらりたい……。一文字足すだけでこんなに違う!? 何言ってるんだか俺……。
「わたしもショーくんだったら悪くないかなー、なんて」
「え、何ですか?」
「聴こえなかったんならそれでいいよーだ」
「……、向こうの視線が痛いんですけど」
ナビ子も消えないまま広い方の浴槽で姉さん達と風呂にって、こっちの様子をちょいちょい窺ってるじ。ナビ子がに干渉できてたら、ナビ子がってる部分だけ水が削れた様な超常現象が起きる事になってたのかな……。
「あらら……。ショーくんが前隠さずに湯船から出るとかすれば、ちょっと狀況はくんじゃない?」
「姉さんとローズだけならそれもまぁ敢行してもいいんですけど……」
「いいんかいっ」
「まぁ……減るもんじゃないし」
「そーゆーもんかね」
「そーゆーもんっすね」
「……」
「……」
「出よっか」
「出ましょう」 
ピタッ、ピタッと音が鳴る。だが安心していただきたい。これは足音である。天ゆえに水たまりを歩くような音が出るのだ。
「そしたら、俺先に上がってるんで……」
「私も上がるよ?」
「隣で著替えるわけにも行かないっすよ。まさか水著の上に浴著るわけにも……」
「それもそっか」
「ほいじゃ、そんなわけで……」
皆に取り囲まれるサニーさんを目に、獨り場へ戻る。そして一つの決意をした。
夜、獨りでゆっくりまたろう。
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