《シスコンと姉妹と異世界と。》【第90話】貸し出し権⑯(サニー編)

宿に戻る途中にレオンさんとすれ違い、買い出しを頼まれた(押し付けられた)こと、伝言を頼まれた(押し付けられた)ことを聞かされ、見送ってあげた。無論、報酬はゼロだそうだ。

途中、モーリスにお土産でも買って帰ってやろうかと思ったけど、なんかホモっぽく見られるのが気になって止めた。ちなみに買おうとしたのはよくある木刀。アイツなら喜んで振り回してくれるだろうと思ったからだ。

「姉さんは隨分買ってたね」

「いや、學校の皆には日頃世話になってるからな」

そう言う姉さんの手元にはお土産の荷が一切無い。これもレオンさんがお持ち帰りしたからである。1つはレオンさんの分です、の一言でバカ正直にやる気満々になり引きけていた。男って単純だよなぁ……。まぁレオンさんも収納魔法が使えるらしいからそんなに大したことは無いんだろうけど。

「サニーさんやステラさんはいいんですか?」

「エリーゼがあれだけ買ってたら私たちは要らないもの」

「うんうん」

「こういう時くらいしかわたしもお金を使う機會が無いからな」

「あれ? 夏には発して水著買ってたじゃん。ショーくんに選んでもらったんじゃなかったっけ? その他にも勝負」

「わーっ、わーっ!! やめろやめろ!!」

勝負……下著? 水著? 気になるな……。

「どっちだろ……」

「ショーくんも気になる〜? どーしよー教えてあげよっかな〜」

「余計な事言わなくていいからこれからどうするか決めるぞもう分かったな!!」

これからどうするか、と言ってももう宿に戻ってきてしまっているし、再び街に出るのはし面倒な気がする。汽車で遊べるかもと思ってトランプなら持ってきたけど。

「ショーくんはカラオケ、卓球、ビリヤードの中でどれがいい?」

「カラオケなんかあるんすか……??」

「ないわよ? ただアカペラで歌い上げるだけ〜」

なんだぁ。「それならビリヤードやってみたいです」

「じゃあ娯楽室に行こうか。1階にあるから、卓球もビリヤードもどっちも」

「2人が話してるタッキューとかビリヤード、って何のことなんだ?」

「こういう溫泉宿によくある遊びのことよぉ」

「一どんな遊びなんだ?」

姉さんだけじゃなくて、ゾラさんも気になるようだ。

「まぁ、見てからのお楽しみ、と言ったところなんだけど、簡単に言ったら『タマを叩いたり突いたりする遊びね』」

「タマを……」

「叩いたり……」

「突いたり……」

「する遊び……」

ステラさん、姉さん、サニーさん、ゾラさんがボンッと顔を真っ赤にしながらこっちを見てくる。どんな想像をしてしまっているんだろうか。そんな危険な遊びは死んでもゴメンだ。

______。

とりあえずビリヤードをすることにした。臺は2臺用意されていたのだが、4人は本気で誤解してたらしくなんかモジモジしてて見學。ので、アリスさんとローズと俺の3人で先に始めることになった。

「……、わかったよ!」

簡単にローズにナインボールのルールを教えると、思い切りのいい返事があった。

「あとはキューの使い方な」

「キューって何? コレ?」

ローズが手に取ったのは9と書かれた球。

「確かにそれも9だし球きゅうなんだけど、俺が言ったのはこっちの方」

「棒じゃん」

「これで球を突いていくんだよ。じゃ、アリスさんお手本お願いします」

「わたし? お兄ちゃんがイイトコ見せたげな〜」

「まぁ……、やってみますけど。ローズも、失敗しても怒らないでな」

「うん」

「こう構えて……、打つッ!」

白球は先頭の1番に當たり他の球を四方八方に散らす。が、特に球が落ちることはなかった。殘念無念。

「まぁさっき言ったとおり、白球を數字のない球に最初に當てるのがまず最優先事項ね」

「ふむふむ。……、キューってこの構えでいいんですか?」

「んー、ちょっと違うわねぇ〜」

「ほら、ショーくん。教えてあげて」

「じゃ、ちょっと失禮して……」

教えるためとはいえ後ろから抱きしめるようなじになってしまう。アリスさんの狙いはこれか? 俺を悩ませてその反応を見て楽しむってか。あぁ、完全にそうだ、そんな顔をしてるわ。ニコニコだわ。あーいかん。なんだかんだでお風呂ったあとだからシャンプーのいい香りが花をくすぐる。

「左手はこんなじな。んでここを支點にして……」

「……」

「黙んないでくれよ……」

「……、お兄ちゃんの鼓がすごい気になるんだけど……」

「ッ!! そりゃお前……、仕方ないだろ……」

「もう……。はい、これでいい!?」

「おっけーだな。じゃ、打ってみ」

ローズの構えるキューのすぐ手前に白球を置いてやる。

「……、ほっ!」

カンッ、と球を勢いよく打ち出す。が、勢いよく斜めに打ち出されたそれは右、後ろ、左の壁を上手いこと跳ね返り、打ち出したところに返ってきた。

「……いや、スゲーけど。けどな、狙うのは1番の球なんだ」

「わ、わかってるってば!」

「じゃあ早速やってみましょ? 4人もそっちの臺で練習しといてね〜」

てなわけで、ゲームスタート!!

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