《シスコンと姉妹と異世界と。》【第147話】北の幸⑧

「ローズちゃん、もう大丈夫そう?」

クラリスさんがう。確認を取るように尋ねる。

「うん。ご迷をお掛けしました」

歯醫者から出し開口一番ローズは頭を下げつつ言った。

「……じゃ、快気祝いってことで何か食べに行こ!?」

開口二番、こんなことを口走りやがった。

「フンッ!」

モグラ叩きよろしく、ローズの脳天目掛けて垂直に拳を落とし込む。

麻酔を使わずに魔法にて痛みを軽減していたから、喋れるのは結構だがその容は言うに及ばず酷いものだ。

「帰ったら宿で夕飯出るし、まずお前は今しがた治療終えたばっか。詰め取らたらまたあそこに磔はりつけにされて同じことの繰り返しだぞ?」

「……、ごめんなさい」

「分かったんならいい。ほら、手出せ。帰るぞ」

「ん」

「おいおい、なんでそんなニヤけんだよ……。反省してるんですかァちゃんと?」

「してるってばぁ。ただ、お兄ちゃんから手を繋いでくれるのは久しぶりかなって思っただけ」

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この子ほんとにいちいち俺の琴線にれるっていうか、グッと來ること言うじゃんか……。

「何さ二人して見せつけてくれちゃって。わたしもの中にれてほしいんですけど?」

「えっ?」

まさかクラリスさんからそういう方向で愚癡をこぼされるとは思いにもよらなかった。……、出番なかったからか?

「あっ、『中にれてほしい』っていうのは別に的な意味じゃないからね?」

「なんでこんな銀世界の中で頭茹だってるんすかね!?」

俺の心からのびも街の喧騒には葉わなかった。

時はし戻って。ショーたちを見送って時間を持て余していたエリーゼは、アリスの部屋へと向かった。

「邪魔するぞ……」

「んー、どうぞー」

「なっ!? お前はまたなんて格好で!」

「別にの子同士なんだしいいじゃない」

「春までは男の格好を好んでいたというのに……」

ベッドにうつ伏せになりながら応えたアリスは九割方生まれたままの姿で、ショーツ一枚だけは辛うじてにつけていた。

「好んでたわけじゃないんだけど……。一種の鎖みたいなものかね原點としては。家の方とのわだかまりが解けてから男の格好続けてたのは、単純に切り替えの機會を逃しちゃっただけ」

足をパタパタさせながら、アリスは語った。

「まぁ、アリスが々と抱えていたのは知ってるからそこまでとやかく言うつもりは無いが……。男がってくる可能もあるじゃないか……」

「ショーくんなら歯醫者に付き添いで行ってるから絶対って來ないしね〜」

「それはそうだが……。で、切り替えの機會になったのがショーだったってわけか」

「なっ!? なんのことかな〜?」

アリスの口からヒューっと、イマイチな口笛が鳴る。

「流石にわたしでもお前がアイツに気があるってことくらい分かるさ」

「そんなストレートに言うかね……。それ言ったらエリーゼだって前はこうして二人の時だったり、家に遊びに行ったりした時はまんま可の子口調だったのに。今や騎士校生エリーゼが普段でも抜けなくなってるじゃん。なんの心境の変化なのさ?」

「あ、姉としてよりも、學校の先輩として下二人に接する機會が増えてどうしていいかよく分からなくなってな……。それに、」

「それに?」

ベッドから起き上がってアリスが続きを促す。

「笑わないか?」

「いや、それは聞いてみないとなんとも」

アリスは即答だった。早押しクイズでボタン押すより先に口がいたかのような。

「最近、というよりある程度前からなんだが、わたしが妹でショーが兄になっている夢を見るんだ。かといってローズが三として居るかどうかと言われるとよくわからない。その夢の中にはなくとも出たきたことが無い」

「ぷふっ」

「おい」

「さすがに予想の範疇を越えてきたから」

「……、まあいい。正直夢の中のわたしはアイツに甘えっぱなしで、たまに朝に顔を合わせるのが小っ恥ずかしくてならない」

「その為にちょっと強めに心に壁を作るようにしてる、と?」

「まぁ、そうなるのかな……。とりあえず座っていいか?」

「ん。じゃこっちおいでなさいな」

アリスがポンポンと自分の隣のスペースを叩く。

「いや、正面でいい」

の隣に並ぶのはしばかり抵抗があったので、エリーゼは備え付けのもう一つのベッドに腰掛ける。

正面からを見據える方が恥ずかしかったかも、と思いつつも一度座った手前もう移は出來ない。

「エリーゼはそう言うけどさ、実際のところどうなの? ショーくんに甘えたり甘えられたりしたいもんじゃないの、姉としては?」

「それはアリスの方だろう」

「そらそーよ」

真っ向から肯定されてエリーゼは返す言葉を失くした。

「そりゃ、もうこの際だから認めるけど好きな男の子には々と期待しちゃうわけよ。幾ら年下だとしてもね」

「むぅ……」

「エリーゼだってショーくんが何気なく手を繋いできたり、魔法の練習とかでれ合ったりしたら嬉しそうにしてるじゃん」

「ししし、してない! そんなことは斷じて無い!! ……多分」

「姉弟って括りが無ければ、って思うことも実際にはあるんじゃないのー?」

「うっ……」

「あるんかい……。わたしは近親相はダメだと思うなー」

「なっ!? そんなことをしたいなんて言っていないだろう!? ただ、今までちゃんと接してきた男というのがショーしか居ないと言うだけであって、仕方なくアイツが諸々の基準として……」

「まっ、そんなわけでよろしくねお義姉ちゃん」

「お義姉ちゃんと呼ぶな! まさか、その……。"した"んじゃないだろうな……?」

エリーゼの背中から何かゆらりとしたものが立ち上るような気がした。それは魂ではなく別の何かなのは明白だった。

「待って待って。してないから! そんな踏ん切り付けられないから! だからいきなり手から魔法で剣を象らないでっ」

「……そうか。済まない、早とちりだった」

「いつの間にそんな魔法の制が出來るようになったんだか。ショーくんとの夜な夜なの作業の賜ってわけ?」

「如何わしい言い方をするな!」

「まだ夕飯まで時間あるし、久しぶりに闘やらない? わたしが勝ったらショーくんとの際を認めていただきますわお義姉ちゃん」

「手合わせはいいが、それを決めるのはショー本人なんじゃ?」

「仮にショーくんがオーケーしても、エリーゼが強く反対したらどうなるか分かったもんじゃないもの。言質を取っておきたい、というより保険がしいってじ」

「わたしが勝ったら?」

「んー、ショーくんの貞を守れる?」

「……やる気が出たよ。アイツはまだそういうことには早い年頃だからな。で、場所は?」

「裏に開けたところがあるから、そこにしましょ」

その場所はデュボワ家が今後流行らそうとしているテニスのコートを建設予定なのだが、する乙にはそんな諸事など気に留まることも無かった。

「へっくし!」

「お兄ちゃん風邪?」

「いや、なんか大事な何かが俺のいない所で決められてしまいそうなじがして……」

「? よくわかんないんだけど……」

「さっきの歯醫者に戻ってドリルでも借りようか?」

「クラリスその冗談怖すぎて笑えないっす。って、なんだあれ?」

ショーは前方に出來た人だかりに気が付く。

またまだは沈まない。

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