《シスコンと姉妹と異世界と。》【第149話】北の幸⑩
お口のメタル化を無事に終えたローズたち。その帰路の途中街中で黒ローブを見つけるもノータッチ。そのまま迎えの馬車に乗り揺られていた。
「口に詰めした後ってメシ食えるのかな? 正確にはこの後溫泉で出るであろう夕食のことだけど」
「ダメなの!? 抜きは死んじゃうよ!?」
二十四時間飲まず食わずでも人間はそう死なないと思うのだが。夜、雪降る中に放置されたらそりゃ厳しいだろうが。
「んー、わたしも蟲歯の治療ってよくわかんないんだけど……。まぁ詰めが取れるようなもの食べなければいいんじゃない? ……、なんならわたしを食べてもいいわよ?」
「お、の子同士ですとぉ!? くぁ……」
妹はまだ十一になんだぞ、々やばいじゃないか……。
「お兄ちゃんどしたの?」
「いや、ちょっと取りしただけだスマン。で、今日の夜に何が出るかクラリスさんは知ってるんすか?」
「いーやまったく。手伝わなくちゃなーと思ってはいたけど、こうして護衛に回されてるしね。ってぇ」
新雪降り積もる細道を突き進んでいた馬車が止まる。クラリスさんが馬車の窓から顔を出して手綱を執る執事さんに、
「ちょっとー、爺さんどったのさー?」
もうフランクもいいところ、突き抜け過ぎている。
「前に人が。こちらに背を向けたまま天を仰いで立ち盡くしております……」
「ちょっとー、そこのあなたー。邪魔になってるから早くとおしてちょーだい?」
クラリスさんが臆することなく聲を掛けた。
どんな人となりなのか気になり外を見てみると、
「げ」
見なきゃ良かったと強く思った。
白い雪によく映える真っ黒なローブ。その背には大きな薔薇の刺繍が施されている。
ただ、シルエットが隠れてしまっていて、男かかも分からない。まだ叔母上ならいいのだが……。
どうしようもなく例の連中と絡まなくちゃいけないルートらしい。
「これはこれは旅のお方ですかな。我らが一族は旅蕓人をしております故、何卒ご覧になっていただけませぬか」
黒ローブが振り返り、ゆっくりゆっくり、ハッキリと聞こえるように言う。
旅蕓人とは言うが、それに耐えられるなのかどうかも怪しいくらいの見た目だった。しわくちゃの顔にたっぷり蓄えられた髭。……って、
「クソジジィじゃねぇかクソ!!」
「どんだけクソ言うのよショーくん。仮にも初対面なんだから……」
まさかクラリスに窘たしなめられるとは。執事さんをじーさん呼ばわりしてたくせに……。
「とりあえず俺は降りてあのクソジジィの蕓を観てやります!」
「あ、観るのねお兄ちゃん。じゃあわたしも……」
そう言ってローズも一緒に雪の上に降り立った。
「わたしは寒いからここから観てるわ。何かあったらちゃんと助けたげるから安心してね?」
「は、はぁ……」
今のは三人で外に出て観劇する流れじゃなかったのか?
まぁでも黒ローブってことは、あの組織と無関係なわけでもないんだろうし油斷はか。
「むっ、お嬢さんのその髪……」
「その髪……?」
會話が途切れる。そのままクソジジィは袖の下をゴソゴソと漁り、
「おぉ、あったあった。今は午後四時半か……。後半刻程の猶予があるか」
「??」
「いや、すまぬな。儂は午後五時には仕事を終える主義でな。それが主との契約なのである。何人たりとも、これだけは譲れんのよ。ほっほっほ」
再び時計を袖の中にしまった。
定時上がりを絶対に譲らない姿勢はまぁ嫌いじゃないぞっ!
「はぁーあ。なんでこんな寒い中でジジィの蕓なんか観なきゃなんねーんだかな。どうせなら人教師風なじの人にやってもらいたいってわけよ」
「お兄ちゃん、真逆なの求めてきたね……」
「だってさぁ……。教師が五時に仕事上がって、時間限定の特売目當てに街中をひた走ったりするのって何か良くね?」
「そんな妄想を真っ直ぐにぶつけられても、わたし困るんだけど……」
「なっ、なっ……」
クソジジィのようすがおかしい。
「(ほ、ほら、お兄ちゃんが煩悩丸出しで変な事言うから! 怒りの余り震えてるよ!?)」
「(いや俺のせいかぁ!? ……俺のせいだわな。でもアイツって叔母さんの仲間なんだし、怒らせたら結構ヤバめなんじゃねーの?)」
「(なんで他人事みたいなじになってんの!?)」
「なんでそんな事まで知ってんのよぉぉーーー!!!」
ショーのかいしんのいちげき!
クソジジィはどうようしている!!
「あ、あのー」
「何よ!?」
聲をかけたらすんごい勢いでキレられた。そんなにダメな地雷踏んじゃったとは思わないんだけど……。
「クソジジィのなりで口調だとすげぇ気持ち悪いんで、とりあえずそこら辺なんとかしてくんないっすかね……?」
「分かったからそれ以上バカにすんな!」
クソジジィは顔を挾むようにしてひと叩き。するとパキッと砂が弾け、
「いや、超人出てきてむしろドン引きかも……」
「想像以上かも……」
「じゃあどうしろって言うのよ!?」
「何がどうなってんのよ……」
一部始終を観ていたクラリスは、額に片手をやりながら車の椅子に思わずなだれ込んだ。
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