《シスコンと姉妹と異世界と。》【第155話】北の幸⑯

「そんなこんな訳で、初等學校の教師で魔教幹部『時計クロック』のキャシーって人に遭遇しましたとさ。めでたしめでたし」

「めでたくはないだろう……」

現在、みんなで機を囲み夕食をとっている。

最初は部屋に持って來てくれるという話だったのだが、サニーさん以外の賛同が得られなかった。

そこで俺は姉さんやアリスさんに、ローズを歯醫者に連れていった帰りの出來事を話した。

「その人が言ってたことは本當なの?」

アリスさんが訝しげに聞いてくる。

「まぁ、俺が組織の人間ってわけじゃないから確信を持ってどうこうとは言えないですけど……。あ、アリスさんが居れば噓かどうかを見破ることも出來たのかー」

「でも幹部クラスとなるとわたしの力が通じるのか微妙だと思うんだよね」

「大丈夫じゃないっすか? じゃないとそもそも特典の意味が無いっていうか」

「特典?」

「あ、いや姉さん、深い意味ではないんだけどね? 別に無くても魔法を使うのに苦労するわけじゃないけど、あったら便利な能力、ってこと」

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いくら姉さん相手だとしても流石に、日本からの転生時の特典です、とは言えない。

ちなみに、俺の特典は再生能力。俺と魔力マナの友好度がカンストしてるようなじらしく、普通に魔法を使うのにも脳イメージの再現度が高い。

「ショタコンというかロリコンというか悩むような人だったけど、故に教師になったらしいし大丈夫じゃない?」

「今のどこに大丈夫と思えばいいのか分からないのだけど」

眉一つかさずアリスさんが言いながら。

「そういう人たちってさ、吹っ切れると子供を攫さらってきてでたりするイメージが強いからさ。急にローズちゃんに対してのが芽生えて……、ってパターンもありそうじゃない?」

「……、今後接しないことを祈ります」

「おい、わたしを除け者にして話を進めないでくれ」

姉さんが頬を膨らませながら憾の意を唱える。

「そう言われても。実際この問題に関してはこっち側はになるしかないしねぇ……」

「まぁ、アリスさんの言う通りで、騎士校通ってるのが連中にも知れてるとしたら。待ち伏せくらっても何ら不思議ないよね」

「だがしかし、こちらとしても何もしないわけにもいかんだろう……」

姉さんが懸念する気持ちもよくわかる。

だからといって、どうこうできるわけでも無いのだが。

「ウチから護衛でも付ける?」

「貴にそれを決める権限は無いでしょ、クラリス」

話を聞いていた(実際に現場に居た)アリスさん専屬メイドのクラリスさんも話題に加わる。

サニーさんはローズの話し相手になってくれているようだった。狙われている本人を會議にえて、張を余計に煽ることを良しとしなかったのだろう。

「護衛は別に要らないだろう。登下校の最中はわたしやショーが一緒の事が多いし、仮に一人だったとしても、街の皆はローズの顔をよく知ってくれている(大食らいとしてブラックリストりしてるとの噂もある)しな」

「こうして遠出する時には誰かしら居るしね。俺や姉さんだけじゃなくてさ。それに……」

俺は一呼吸置いて。

「キャシーさんからローズがお守り貰ってたんだけどさ。それに魔力を流すとそこの座標がキャシーさん側に伝わるんだと。んでそれを頼りにキャシーさんが転移魔法で飛んできて守ってくれるんだってさ」

「仮にも魔教徒なんでしょ? 信頼出來るの?」

「クラリスさんの疑問ももっともなんですけど、『わたしは教師。教師は子供の味方だから、い子供は放っておけない』みたいな事言ってたし、信じてもいいんじゃないですか?」

「うわぁ…………」

アリスさんが遠い目をした。

……、気持ちはまぁ分かるけど。

言葉だけなら信じられるけど、それを歌うように熱を込めて語られたとなれば正直怖い。

「まぁなるようにしかならないってことでしょ。と一緒よ」

「クラリス、生娘の貴方が何を言うの?」

アリスさんの痛烈な一撃がクラリスさんのみぞおちを抉る。

それに、『キャシーさん×子供×』の方程式は完全にアウトだろう。條例とか々にもスレスレでれてそうだ。

「まぁ、その場その場で最善策を選んでいくしかないというのはやむを得ないだろうな」

不承不承というじで姉さんが腕を組みながら呟く。

「まぁ、この話はここら辺にしといて。どう、北の海の幸は?」

アリスさんがオーナーとして聞いてくる。

「今朝食べたイカもそうですけど、やっぱ新鮮なのは味いですよね。やっぱ俺はマグロが好きです。トロが特に」

「わたしはこのコリコリとした食のがいいな……」

姉さんは蛸が気にったようだ。

味い蛸料理を食べさせたら、リアクションの一環でのままで蛸に絡まれたりするのだろうか。

「これはなんだろ?」

と言いながらクラリスさんは刺が盛り付けられたお皿の隅に鎮座していた、緑の円錐をひと口で放り込んだ。

「ッーーーー!!!???」

ひっくり返りそうになったクラリスさんが何をどうしたのかは見ての通りなので、俺はとりあえずお水を渡した。

「何という罠だ……。しかしクラリスは命を賭して、毒味という役割を忠実に果たして散ったというわけか……」

姉さんが戦慄し小聲でそんなことを言っているが、別にクラリスさんは死んじゃいないし。ちびちびと水飲んでるし。

「まぁ姉さんが過去にやらかした料理でも、辛すぎてどうしようもない、っていうのは無かったよね」

學校が休みの日だったり、食堂のおばちゃんたちが早帰りの日の夜には姉さんがたまに廚房に立つのだが……。

見た目はアレだが食べてみると意外とイケる時もあれば、その逆もある。

俺やローズが學する前は、包丁さばき等がそもそも危なっかしかったのだ。

母さんから習った料理に関して言えば、仕上がりの差に開きがあるのは否めないが、食べた後にはちゃんと『ご馳走様』が言えるくらいの仕上がりにはなる。

だが、他所で食べたものを再現しようとしたりした時が危険なのであった。

「あ、アレらはやらかしているわけではない! ただ他よりし前衛的なだけだ!!」

「前衛的な料理って何さ!!??」

踴り食いなら前衛的の範疇な気もするが。

しかし、そもそもそれでは料理とは言えないか。

「やっぱりエリーゼは料理が苦手なんだねぇ?」

ニヤニヤしながらアリスさんが言う。

「わたしが作ったお弁當とか、ショー君は結構喜んで食べてくれるもんねー?」

「ええ、味しく頂いております」

正直、お弁當を作ってきてもらった時の俺の神狀態はマトモじゃなくなっている。

雰囲気に酔うというか、狀況そのものに舞い上がってしまって、味わうどころの話でな無いのが実である。

サニーさんとの時はそんなこともないのだが、アリスさんだと食材からしてちょっとコストが気になってしまうのだ。

それによる若干の申し訳なさで味が良く分からなくなる。

「むぅ……、わたしも頑張らなくてはならないか……」

姉さんの決意に、寮の設備が最新式になるかもな……、と思わずにはいられなかった。

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