《シスコンと姉妹と異世界と。》【第157話】北の幸⑱
「ショー、ちょっといいか?」
全員、風呂が済んで各自の部屋でのんびりしていた時、突拍子も無く姉さんが來た。
なんだろうか……。
最近姉さんが取り立て屋にジョブチェンジしたのかと思えてくる。雰囲気を纏ってるっていうかな……。
「サニーも、外してもらわなくて大丈夫だ。むしろ居てくれた方がいいかもしれない」
姉さんが手で立ち上がろうとするサニーさんを制す。
「「……」」
沈黙。
黙である。
一旦サニーさんと目を合わせるも、そこから言葉をわすことは無かった。
「いや、そこまで警戒されると流石に傷付くというかだな……」
「「……」」
「分かった、本題にるからっ。頼むから普通にしてくれ!」
「「……」」
「ッ!!?」
姉さんが目に涙を浮かべ始めたので、からかうのもここまでだ。
ちょっとした意趣返しとでも言おうか。
「ごめんごめん。ちょっと意地悪だったね。泣かないでよ姉さん」
そう言って頭をナデナデ。サッと払われるかと思ったけど、案外機嫌は良さげらしい。
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「うう……」
姉さんが顔を両手で覆い隠しながら唸る。
まだ若干り気の殘った髪の手りが、普段のサラサラのとはまた違って心地いい。
「……、意外な一面。可い」
サニーさんが隣でぼそっと呟いた。
奇跡的に姉さんの耳には屆かなかったようだ。聴こえてたらどうなってたことやら。
「で、姉さんは何しに來たの? もう夜の九時前だけど……」
「何か事件でもあったんですか?」
俺とサニーさんの問いに、
「いや……その……」
姉さんは言い淀んだ。
「言いづらいなら、日を改めてもいいんじゃない?」
「……、頼む!」
「「えっ!?」」
急に頭を下げられ、どうしていいのかわからない。
何をそんなに思い詰めたような空気を出してくるのかがわからない。
「二人に……、稽古をつけてしいっ!」
「……、夜の?」
「なっ、馬鹿!」
姉さんに履いてたスリッパで引っぱたかれた。
さっきまで履いてたんだからホコリまみれ……、ではないか。アリスさん來るって分かってたら従業員も手抜きは出來ないよな。
なんやかんやで下ネタはダメだったらしい。
言ってくれなきゃわかんないよね、心って。
に下ネタってダメなのかね? 俺はありだと思うよ俺は。
「威力が……」
「布団叩きで毆られたみたいっすよ……。うわーんサニーさんっ!」
引き気味(俺に対してじゃないはずだ)のサニーさんに泣きつく。
「あーもう、線するな! 魔法の稽古を付けてしいと言っているっ!」
とのことだ。
ていうか、言ってなかったよね?
今しがた初めて言ったよね?
にしたってこの時間からじゃなくてもいいのではないか?
「この時間になったのは済まない。言い出す機會が摑めなくて気付いたら……、という訳だ」
「でもなんで今更? 別に魔法なんて學校とか寮で教えてもいいのに」
「學校とかだと周りの目があるからな……」
どうやら、の特訓というのが琴線にれたようだ。
「ていうか、ショーくんは普通にお姉様の教師役なのね」
「座學はからっきしだけどな」
「なんで姉さんが落とすのさ! 自分でいいじに謙遜する用意はあったのにさ!」
何たる姉だ。
アネハラだ。
「教わりたいのは火系統の魔法だ。サニーもその辺り得意にしているだろう?」
もうスルーされた。
ぞんざいな扱いにも程がある。
普段の俺、そんなに減點されてるってこと?
いつから俺のプライベートはのび太クラスになっていたのだろうか。
「場所は?」
「し冷えるが……外でもいいか? 萬が一やらかした時、この宿が全焼でもしたら、到底わたし一人では弁償出來ないからな……」
まぁ、一般企業に勤める人の生涯所得くらいの賠償金は発生するかもしれないな。
アリスさんなら笑って許してくれそうな気もしないでもないけど。
で、外に來たわけだが。
「「「……、寒い」」」
當然の結果である。
十一月になったばかりとはいえ、北海道である。
雪が積もるくらいには寒いのだ。
「お姉様、本當にここでやるのですか?」
サニーさんはここに居たくないと言外に告げる。
「や、やるしか……、ないだろう……」
息も絶え絶えに姉さんが応える。
軽裝だったのが運の盡きだろうか。
「んー、じゃあちょっと待って」
範囲はどのくらいにしようかな……。
「ショー、何をするんだ?」
「溫室作り。とりあえず今の格好でも寒くない環境を整える。練習だし、姉さんもそこまで大それた魔法は試さないでしょ?」
「? ああ、そのつもりだが?」
「ちょっと手出してくれる?」
「早速教えてくれるのかっ」
若干姉さんのテンションが上がったが、
「『ドレインタッチ』」
「なあああああ!?」
俺に魔力を吸われ、へたりと雪の上に座り込んでしまった。
「ショーくん、容赦無いね……」
「ちょっと範囲広げるなら貰っとかないとかなと」
何もなくてもこれから使う魔法は使えるだろうけど、俺がそんなデタラメな魔師(チート持ち)だとはバレたくない。
「『原初プロトの空間フィールド』ー!!」
一辺十mほどの立方型結界魔法を展開。
今回の設定としては、
「空気の循環は行いつつも、気溫は二十度に固定されて中では風が吹かない。そんなじでやってみました」
「我が弟ながら大したものだな……」
「こんなの學校でも習ったことないよ……」
二人がそれぞれに想をらした。
そして二人共、浴の袖の下をゴソゴソして何かを取り出し、
「「一応これも候補にれよう……」」
とハモりながらその何かを結界に向けて翳かざした。
なんだろう、結界封じ的効果のある魔道だったりするのだろうか。まるでケータイで畫を撮るようなきだ。
「二人が持ってるのって、何?」
「え!?」
「ショー、知らないのか……!?」
知らないですけど……。
なんだろうこの反応。
俺だけが無人島に取り殘されたっていうか。
そんなことも知らないのか可哀想な奴め……これだからゆとりは、的な視線が突き刺さっている。
「ま、まぁ、ちょっと一時期ショーは自宅を警備気味だったから、見たことは無かったかもしれないな!」
姉さんのこれはフォローと言えるのだろうか。
なんだよ、自宅を警備気味って。
それは俺が俺になる前の話であって、今この俺、草場くさば翔一しょういちがやらかした訳では無い。信じてくれ。
「ショー君にもそんな時期が……。ちょっと今のじからは想像出來ないかも」
サニーさんはサニーさんでなんかトゲトゲしいんだよなぁ。
「々拗こじらせてたのは認めるからそんな苦しそうな反応しないでよ! ……で、それはなんなのか教えてしいんですけど」
「これはだな___」
答えを聞いて、思わず膝から崩れ落ちた。
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