《シスコンと姉妹と異世界と。》【第158話】北の幸⑲
これか? これはな___
「記録メモリーカードと言うんだ」
そんな、姉さんの衝撃的な話に膝を折られた俺は、続く姉さんの説明を聞いても上手く飲み込めなかった。
結局ナビ子の補足説明をけながら、なんとか消化していったのだった。
「これは十五歳を迎え人する時に役所から発行されるもので、自分の狀態だったりが自的表示される代だ」
(早い話がステータスカードですね。カードを持っていなかった過去十五年間においての経験はちゃんと加味されるのでご安心を)
「あと代表的なことを挙げれば、これで自分の職業を決めることが出來るということだろうか」
「職業を決める?」
「ああ。簡単に言えば『ステータスが一定の値に達することで、選べる職業の幅が広がります。例を挙げるなら……、知力と魔力を上げれば魔法教師、神力と守備力で警備員とか』
(警備員のことを持ち出すのはやめてもらおうか)
姉さんに被せるように喋り出したナビ子に釘を刺す。
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「ただ、職業を選んだ後にも段階がある。お父様は騎士の中でも最高の『聖騎士』だが、最初は『騎士見習い始めました』からの出発だったんだぞ?」
「騎士見習いからか……」
「いや『騎士見習い始めました』からだ」
「……」
言葉が出ない。
(お姉様は冗談で言っているわけではなく、実際にそういう職業の名稱とされているんです。変な元日本人が絡んだ連絡ミスのせいで)
何してくれ天然……。
我ながらうまいこと言えた気がするのだがどうか。
「どんな數値が見れるの?」
「その時々によって変わって浮き出てくるかな。職業が決まっている人はそれに準ずるものが決まって出てくるみたいだけど。わたしたちは學生だから知力以外は適當に出てくるよ、ほら」
とサニーさんが言いながら自分のカードを俺に差し出す。
常識知らずな俺を見かねて、サニーさんも解説陣に加わってくれたようだ。
「えっと……、知力が六十八、ん?」
「ん?」
「長が百五十五センチ、囲が八十二で、たいじ」
上からなぞるように読んでいた俺だが、全部に目を通す前にカードを奪われてしまった。
「もういいよね! それ以上は乙のだからダ・メ・よ?」
「アリスさんみたいな言い方っすね。まぁ々と書かれるってのは分かりました」
長とかって職業関係あるのか?
(雇い主側が高長の人間を希する時もあるんですよ。モデルとかの採用はこの數値も大事なファクターとなるのです)
この世界はモデルなんかいたのか!?
(ローズちゃんの読書である雑誌にもけっこう載っていますよ? ちなみに、お姉様もこっそり一人の時にその雑誌に目を通しているようです)
なるほどな。モデルがいたか。それなら納得だ。
考えてみりゃ、アリスさんなら自社商品に袖を通して試したりもするんだろうし不思議ないか。
姉さんに関してはあとで詳しく聞こう。
「俺の今の數値って見れないの? 正直あと三年もお預け食らうのってなんか辛いんだけど……」
「「學校で見れるよ(ぞ)?」」
「……そんな機械あった? 授業で見たことなんか無いんだけど……」
決して授業中のうたた寢のせいではないと思うのだが。
「確か二年目の頭に一度見れたはずだ。そこから一定期間ごとに確認して自分のばしたい所、目標を定めて授業を選ぶことになるからな」
「まぁ、ヴィオラに頼めばいつでも機械は使わせてくれると思うわよ。顔馴染みのショーくんなら尚更ね」
「そりゃいいこと聞きましたわ。早速月曜日にでも診てもらいます!」
もう授業そっちのけで行っちまおうかな。
ヴィオラさんとマンツーマンの授業っていうを取れば、サボりとは言わないんじゃないのか……?
「放課後、わたしもついて行ってもイイかな?」
「わたしも同行しよう。ショーの今の數値にも興味があるしな。何、話はわたしが付けておくから安心してくれていいぞ」
二人のの好奇心に、俺の小さな野は打ち砕かれた。
「……、よろしくお願いします。したら姉さんの修行に移ろうか」
一瞬迷ったが、話題を戻すことで平靜を保つ。
「お姉様はどんな魔法を覚えたいのでしょうか?」
「む……、そうだな……。剣に炎を纏わせることには功しているんだ。だがそれ以外これといって何かがあるわけでもなくてな。魔法を使って見方の支援や相手の隙を作ったりといった『魔法剣士パラディン』のようなのもいいな、と思ってな……」
「以前話してた、お父様と同じ『騎士』を目指すのではなかったのですか?」
サニーさんが思い出したように問う。
やっぱり、人した者同士で將來のこととか話し合っているようだ。
「魔法剣士ってことは、『剣士』からの派生になるの?」
シンプルな俺の疑問に。
「正解! 察しがいいねショーくん」
「頭の回転はキレるんだがな……」
「姉さん、何か言いたいことでも?」
褒めてくれない姉さんにムッとして、聲のトーンを落とす。
『剣士』の最初の職業名は聞かないでおこう。
聞いただけで取る気が失せるかもしれないし。
「あーいや、何でもないんだ」
姉さんが目を泳がせる。
今は俺が魔法を教える立場だというのを思い出したようだ。
「で、どんな魔法がいいのさ? ある程度的な案を出してくれると嬉しいんだけど……」
「うむ……。なんと言うかこう、手からドーンと……。片手で鍔迫り合いになって、空いたもう片方の手から魔法攻撃が出來るというのも格好良いと思うのだ」
「そしたら、わたしがお手本でやってみるから見ててくださいね?」
姉さんの話を聞いてサニーさんが手を構える。
目を閉じて詠唱を行い。
「『フレア』!」
サニーさんの手から直徑三十センチ程の火球が打ち出され、雪の降り積もる地面にクレーターを作った。
「こんなじでどうでしょう!?」
どこか誇らしげにを張りドヤ顔のサニーさん。
出るとこが出ていて、尚且つ浴であるのでっぽさが凄い。
「いいな! ではサニー、それを頼む」
「はい!」
サニーさんが詠唱の文言だったり覚だったりについて姉さんに語る中、俺の方は暇だったので。
「『フリーズ』」
雪だるまを作ってみた。特に何の意味もないのだが。
「よし、それじゃあ試しにやってみるか……」
「あー、ちょっと待って」
ちょっと待ちぼうけ食らった分、ちょっとしたイタズラ心が働いた。ので、
「魔力マナは俺が集めて渡すよ」
「ひゃっ!?」
そう言って掌を首から背中にかけて浴に突っ込んだ。
「出來る限り皮が薄いところの方が都合いいってのが相場だからね」
姉さんの場合前でも後ろでも大差ないのだが、本人の名譽の為に黙っておくことにした。
「せめて一聲かけてからにしてくれ。本當にびっくりするんだからな……」
顔を真っ赤にして俯く姉さんを見て、
「……」
サニーさんは顔を逸らしながら肩をプルプルと震わせている。笑いをこらえているのだろう。
「じゃ、いくよー。せーの」
「おおっ!? 何時ぞや支援魔法を掛けてもらった時のような覚だな。これならいけそうな気がするぞっ」
魔力を注いだせいなのかちょっとハイになった姉さんに驚きつつ、背中一帯にかけて俺は魔力を張り巡らせた。
「…………、行くぞ、『フレア』!」
「『フリーズ』」
「ひあああああああああ!?」
背中に霜が降りて姉さんが飛び上がる。
「な、何をする急に!」
涙目で文句を言う姉さんに、
「何でさっきサニーさんが見せてくれたやつじゃなくて熱線出したのさ! 威力が強すぎてなんか地面が筒狀に空いてるじゃん!」
この後、サニーさんの魔法が再現されることは無いまま、挑戦するその都度俺に『フリーズ』された姉さん。
八回目が終わった頃に、お前のせいでが冷えた。責任持って背中を流せ、と言ってそそくさと建に帰ってしまうのだった。
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