《シスコンと姉妹と異世界と。》【第169話 】北の幸28

雑談をえながら契約についての話し合いが進んでいた。ほぼほぼ俺とフェリさんでの一対一で、姉さんたちは話を聞きつつ、ところどころ補足の説明を求めたりしていた。

霊と話すことそのものが初めてらしく、なんだかんだで、その辺ちょっと張しているようなところもあったように思える。

ところで……、と前置きした上でフェリさんは俺だけに聞こえるように、緒話をするように俺の耳を手で覆いながら話し始めた。

「ご主人様はぁ……、わたしの他にぃ……、霊と契約してるみたいだけどぉ……」

「待って! ひと言ずつ吐息吹きかけるのナシ!! 落ち著いて聴いてられねえよ!?」

「これだから貞は」

「剝くぞコラ。思春期の劣舐めんな!?」

「ぴぃっ!?」 

魔サキュバスであるフェリさんだが、自分からいくのはよくてもこっちから攻められるのはダメらしい。

今の服裝もゆったりとした簡素な布の服で、よくある悪魔の羽に敏尾、下著よりもエロい裝を纏っているということもない。

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アレで人前に出るのは無理とのことで、割と是非の判斷基準は人間に近いらしい。

まぁ、いだら凄いわけで、そのギャップが今まで數多くの人間を骨抜きにしてきたのだろう。

「で、どこまで話したっけ?」 

「ご主人様が既に契約している霊についてです。その霊は実を持たぬ代わりにあらゆる事に通した知識を持ち、契約者にそれを共有するという希種。世界中でも恐らく五居ればいいかと言えるレベルでしょう。それに合わせて、わたしも普段は姿を隠していた方がいいのかな、と思いまして」

「あぁ〜、なるほどなぁ」

思わず唸る。

「実として存在する以上は姿を現していられるけどってことか。俺には學校もあるしな……。學校での子を連れ回してるわけにもいかないか。とりあえず姿は他の人に見えるようにしなくていいや。あ、でもせめてここに居る人たちには見えるようにしておきたいな」

じゃないとなんか後であらぬ嫌疑をかけられそうな気がしてならない。

『お前は一人で何をしてたんだ? フェリと何か如何わしいことでもしていたのだろう!?』って姉さんあたりにまくし立てられるのが目に浮かぶ。

「そしたら、ここの人たちにもわたしと契約してもらわないとなんだけど……。基本的には契約外の人には見えないから」

「え、でも今皆に見えてたよね?」

「わたしを封印しようとした奴の力をありったけ奪ってやったから、まだその殘りがあるのかもしれないわ。あっ、もしかしたら!」

フェリさんが急に手をポンと叩く。

「封印されている間もその力がれ出しちゃってたのかも」

「それで、その影響で魔が活発に、と?」

「多分ね。ご主人様察しがいいねぇ」

うりうり〜と肘で小突いてくる。

なんとなく周囲の視線が痛いが耐える。

「てなわけだからの子四人と話つけてくるね。でもその前に契約の証を渡したいんだけどいいかな?」

一応四人の顔を窺うと、全員頷いてくる。

もう諦めて契約するしかないよ、ってことだろう。

本當にフェリさんの機嫌を損ねた場合、全員の力吸い盡くされてお陀仏なんてことになりかねないことに気付いた。

魔サキュバスは文字通り魔に屬する者。

人間と絶対友好的である保証などないのだ。

「初めてだから……優しくしてね?」

「それは本來の子のセリフだと思うんだけど……、可いなぁもう」

なんかフェリさんの目がうっとりしたような……。ちょっとしたおふざけのせいで、なんか変なスイッチれちゃったじ?

いや気のせいだろう。うん、気にしないでおこう……。

「そんなに見られると恥ずかしいだけど……」

フェリさんはそう子四人に話しかけた。

どうやら契約の印の付與の方法についてガン見されていたようだ。

「したら、ちょっと肩出してくれる?」

「よっ、こんなじでどう?」

遠山の金さんのイメージで、首を出すからぐいっと腕を出した。特に刺青をしたりしているわけではないのだが。

「いいね。傾奇者だね!」

あんまりハマらなかったようだ。

「じゃ、失禮して……、はむっ」

「ひゃうっ!?」

フェリさんが肩に甘噛み。

ドラキュラの吸シーンを思い浮かべていただければと思う。

子四人は目を見開いて絶句しているが、俺が驚いたのはそこではなく。

「そんな可い聲出しちゃって……。お姉さん、キュンキュンきちゃうわ?」

「そんな口冷たいとは思わないじゃないですか……」

てか、主従関係逆転した?

「こんなじに仕上がったけど?」

フェリさんが氷で手鏡を作り、俺の肩口を映した。

「これ、石鹸で消えませんかね?」

俺の肩には大膽にも真っ黒なキスマークが刻まれていた。

俺ってば、一生このままなのかな……。

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