《シスコンと姉妹と異世界と。》【第171話】北の幸30

「あの……、フェリ? 何話したの? なんかサニーさんが発したけど……」

「さっきちょこっと話したんだけど、わたしの『力吸収ドレインタッチ』はちょっとしたも一緒に吸い上げるのね。で、その吸い上げたがちょっと面白かったから、イジってみただけよ、ご主人様」

「なるほど。てかタメ口でいいよもう。最後だけ取ってつけたようにご主人様言われてもなんか嫌だわ」

「我儘だなオイ」

「いきなり振り切り過ぎやしねえか!?」

「とまぁこんなところで。で、皆がここに來た目的は果たせたんだろう? 一旦消える前に子四人、何か百戦錬磨のわたしに質問あるか?」

誰もサッと手を挙げたりはしなかった。

「あー、まぁ男を落とすすべはおいおい教えてやるから、男のご主人様の居る前で聞いてこなくてもいいぞ」

ちょっとそのへん詳しく聞きたいんですけど……。

というか、子四人との契約においてはフェリが上になったらしい。今の話を聞く限り。

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明らかにババア、もとい歳上であるフェリに対して一種の畏敬の念みたいなものを抱いているのだろうか?

「一つ、これだけは今聞いておきたいのだが……」

「えっと……、テリーゼか。何だ?」

「エリーゼです!」

照り焼きみたいな呼び方されたことに憤慨する姉さん。

多分今後もこのイジりはありそうだな。ていうか、アリだな。

「えっと……。何故、フェリはここに封印されたのだ? 永くを生きる霊であるはずのフェリが、どうしてそのような目に遭ったのかは気になる」

「「「確かに」」」

一同頷きにて賛同。

「やっぱり話さないとダメか?」

「フェリ、俺からも頼むよ。フェリのこともっと深く知りたいからさ」

「んもう、調子のいいこと言っちゃって。乗せられてあげるわよー」

んー、っとびをしたフェリはそのままちょこっと移し、壁に背を預けて座った。

「まぁ、未年もいるから生々しい話は避けるけど。平たく言えば最後に寢た男のにやられたわけよ」

「え、に?」

「そーだよ。男とナニした次の日にとっ捕まって、散々戦った果てにここに封印されたみたいね」

「されたみたい、というのは?」

姉さんが尋ねる。

「戦ったあとの記憶は無くて、目が覚めたら今ここってじなの。最後に、殺すつもりで本気で吸い上げてやったのに。生きてるどころかこんな所まで運んでご丁寧に封じてくれちゃったわけだ。本當に大した奴だったんだろうね」

「その誰かさんから吸い上げまくったのがれて、魔が活発になり続けていたってことなのかな?」

サニーさんもフェリさんに問いかける。

「恐らくはそうね。それに、時間が経つにつれて封印がし緩んでいったのかもしれないわ」

「にしたって霊のフェリを圧倒するって……。そんなゴリ本當に実在するのか?」

「実際わたしが封印されてるんだもの。そういうことでしょう」

「ご丁寧に點字で封印解除の方法すら教えてくれていたんだもんね……」

アリスさんの指摘は、フェリを封印したが元日本人だということの証明だった。

「意外と優しい心の持ち主だった?」

「優しかったら封印しないでしかったんだけど」

「そりゃごもっともで」

やられたフェリからしたら面白くはないわな。

でも消されるまでには至らなかったわけだし、正直手加減されたということなんだろう。

本気のドレインに余裕で耐えるってんだから……。

「あー、そう言えば。ローズとご主人様を足して割った様な髪のだったわよ」

「「どういうこと?」」

名指しされた俺とローズがハモる。

「髪のが、ってことさ。赤と黒を混ぜたようなじっての? 悪い喩えかもしれないけどみたいなさ……」

サキュバスもに対しての忌避みたいなものはあるんだなぁと思った。口には死んでも出さないけど。

「それって……」

「「「黒薔薇の魔!?」」」

「って何さ?」

全員が口を揃えたその呼び名を、フェリはどうも知らないようだった。

霊を軽くあしらえるレベルで、その髪のときたら思い當たる有名人は黒薔薇の魔ただ一人だ。

「フェリは聞いたことないの?」

「思い當たることは無いわね……。初対面で闘やりあったわけだし、ましてや決闘じゃないからいちいち名乗る暇もなかったと思う」

こんな所であの白神様の言っていた、黒薔薇の魔が元日本人説の確証を得られるとは。

ということは恐らく、黒薔薇の魔と雙璧をなすシュヴァルツ・ウインザーなる騎士も、アイツの言う通りマジで元日本人なんだろう。

世間は狹いものだ。

ってか、名前に『ブラックローズ』ってってるウチの學園長がいるわけだけど、何か関係があるのだろうか。まぁゼロってことはないだろうが……。遙か遠くの親戚だった、とか。

「まだ黒薔薇の魔が闇墮ちする前の話なのかもしれないわね。世界を敵に回す前の」

そんなアリスさんの推測。

「生涯獨ってわけじゃ無かったんだなぁ……」

「そこなのか、ショー?」

姉さんを混させるつもりじゃなかったんだけど……。

「まぁわたしのの上話はこんなところかしらね。そろそろ帰りましょう? わたしとしてもあまり長い時間顕現していると消耗しちゃうもの。折角その『黒薔薇の魔』とやらから吸い上げた質のいい力は出來るだけ溫存したいの。そんなわけだから、ちょいちょい補給よろしくね?」

「へいへい」

「お兄ちゃん、えっちなのはだめだよ?」

「へいへい。んならお前と一緒にやるか? お前が見てる前でなら文句ないだろ?」

「ないんだけど、ちょっと恥ずかしいかも……」

なせ照れる?

同士の契約容の中に、何かそういうのがあるんだろうか?

「じゃ、報告もしやきゃいけないからそろそろ帰ろっか」

サニーさんが勢いよく立ち上がった。

皆もそれに続いて出口方面へと歩き出した。

「(ナビ子、今何時だ?)」

『(ただ今午後三時過ぎにございます)』

「(多分宿戻ったら一泊延長だわな。そういや、フェリのを一時的に借りれるようになったんだろ? そんなら溫泉でも楽しんでみたらどうだ?)」

『(そうですね。芯から溫まる覚を早く味わってみたいものです)』

そんなこんなで仲間が一人増え、今回の任務は終了しましたとさ。

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