《シスコンと姉妹と異世界と。》【第173話】父と迷子なチビっ子と②

「そんな仕事行きたくなかったんですかね?」

なんか最後ぐったりしてたけど……。

「まだ見ぬ冒険、の真逆だからね。書類地獄の待つ慣れ親しんだオフィス……」

とアリスさん。

「確かにそれは面白くない……よなぁ」

取ってつけたように宿主の口調を真似るフェリ子(ナビ子がフェリの中に共存してる狀態をこう呼んでる)。

フェリは人前だと『なんだよ?』みたいな、ざっくばらんなじでいるのだが、二人の時だと『ねぇねぇご主人さまぁ…、あたしとイイこと

「痛って!!!!!」

ピンヒールで足の甲を踏み抜かれた。

「あら? が勝手に……」

ナビ子的にはそうだろうが、やったのは間違いなくフェリだ。共存である以上は出來て當然なのだが……。

もしかしたらフェリはフェリで、ナビ子と同一個になっているから俺の考えてることがクリーンに読み取れるのかもしれない。

テレパシーみたいなもんだし……。

「フェリ? その姿で居られるとちょっと同士とはいえ恥ずかしいんだけど……」

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「社會科見學で、だから」

社會科見學でサキュバスの格好してる奴なんかいるかよ。おまけにピンヒールだぞ。無理があるだろ。

ナビ子の言い訳とフェリの服裝がまるで連していない。

「まぁ職業柄仕方ないのか……。で、ショー君はこの後どうするの?」

「んー、ミノルさんと話した通り、一旦寮に戻って荷置いてからお店に行こうかなと。任務じゃないから制服でく必要もないですしね」

「荷は手持ちのそれで全部?」

「? そうですけど……?」

「したらちょっと買い付き合ってよ。今が四時だから……、五時には済むからさっ」

「イイっすけど、姉さんやローズ捕まえて採寸しなくちゃっすよね?」

「まずは週末のパーティーそのものの事を話さないといけないから、それは今夜ショー君に任せる! わたしは明日から本気出すから」

それはダメなやつでは……。

「ナ、フェリはどうする?」

「デートの邪魔するのは無粋だし……」

「いやいやいやいや、デ、デートなんてそんな堅苦しいじじゃっ!?」

そんな否定せんでも……。ちょっとそういう分を期待した分悲しい。

「それでは、その仕立て屋にて現地集合でいいか? ちょっと地図を見せてもらって……」

「ほら」

地図をフェリ子に見せる。

えっと……、ミヅキ魔道店(全く知らない)の隣か……。

「てい」

ひょいっと手元の地図をかっさらわれた。

「ふぁいやー」

の一言と共に地図は燃えたゴミへと変貌した。

「いや何してくれてんの!? もう行けなくなったじゃん!! まだ応接室からも出てないのに!」

「わたしが案するからへーきへーき。これでも道覚えるのは得意なんだから」

そりゃ、ナビ子本來の仕様だものね……。

「そんなわけだから、必要になったら契約印に魔力マナを流してちょうだいな。ダッシュで飛んでくから! それじゃね!」

「小遣い持ってるか!?」

「三千円持ってるから大丈夫!」

「行っちゃったわね……」

そんなこんなでフェリ子には時間を潰しておいてもらおう。

「まぁ新しい生活環境だしまだまだ散策するのが楽しいんでしょうね」

「にしても、ショー君がお小遣いあげてるんだね。凄いね、パパ活じゃん」

「いや言い方!! もう、んな事言ってないでデート行きますよ」

「もう! そんなんじゃないったら!」

そうあってしいんだけどね男としては!

「どっちがいいと思う!?」

という質問があります。

大概この質問をされる時には、相手の中での答えは決まっていて、ハズレを引くとなんか変な空気になることか多いそうな。

リアルデッド・オア・アライブなやつである。

そんな窮地に僕は今立っています。

初め、學校を出て言われたのは「下著選びに付き合え」だったので、それを回避すべく人目も気にせず、「せめて下著だけは勘弁して下さい」と、それなりに聲を出して土下座を敢行。

流石にこの攻撃にはアリスさんも慌てて矛を納めてくれ、普通の服選びに付き合っていた。

そんな中でお返しとばかりにこの究極の選択を強いてきたわけだ。

「いっそ令嬢らしくこっからここまで、って買っちゃえば……」

「パジャマだけでそんな要らないもん!」

「ですよね……。で、これとこれの二択なんすよね?」

「そ。タオル地のモコモコか、ラフなスウェットみたいなの」

真逆なんだよなぁ選択肢。

せめてどっちのが……くらいなら。

赤と青どっち切りますか? 的な破処理案件じゃんこれ。

素人には無理だって!

「試著とかは……」

「……、見たい?」

「はい」

「だーめー。男の子は得意でしょ、ソーゾーするの」

「むぅ……」

目を閉じて想像の世界へ。

「朝、ショー君が目を覚ますと隣にはアリスが」

なんて囁きが聴こえる。

「腕の中で眠るそのの抱き心地は……」

「もこもこタオル地で」

「もう、ショー君のえっち」

目を開けると満足そうな笑みを浮かべるアリスさんが。

してやったり顔と言いますか、鬼の首取ったで、みたいな。

「でもこっちのスウェットも捨て難いんですよね……」

「なんで?」

「なんというかその……、こっちの方が生活があるっていうか。自分に気を許してくれてるじがするっていうか……」

姉さんとか格が出過ぎて、パジャマもボタンできっちり留めるやつだし。しっかり上まで締めるのもまた姉さんらしい。

我が家のパジャマは姉さんが著たのをお下がりで俺が著て、俺が著たのをローズにって流れだったけど……。

去年くらいからローズが「キツい」って言い出して、ワンピースの寢巻きにチェンジしていた。

何が、とは姉さんの名譽の為に伏せておくけど。

「理想のタイプ的なやつ?」

「そうかもしんないっすね。朝起きて彼とか奧さんがこの格好で寢惚けてるのとか見たら……グッときますよね」

「……」

ここに來てノーリアクションである。とんだ癖暴大會(參加者一名単獨優勝)になったものだ。

「すいません……、貞丸出しな事言って……」

「折角だし、令嬢らしく二つとも買っちゃうわ」

「え?」

選んだ意味ッ!?

「それじゃお會計済ませて來るから、ちょっと待ってて!!」

これにて、デート終了であった。

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