《シスコンと姉妹と異世界と。》【第179話】父と迷子なチビッ子と⑧

「ユイ、いい子は見ちゃダメだぞ。あれはフェリじゃない。どうしようもない出狂が紛れ込んじまっただけだ」

手でユイの目を覆いながら諭す。

「違うの、ご主人様! 弁明の機會をくれ! 見ての通り、お風呂にっていただけなんだってば!」

もう、敬語もどこかへ行ってしまっている。余程不本意な登場だったのだろうか。し遊んじゃおう。

「ご主人様って言ってるよ」

「気のせいだ」

「お願いだからこんな狀態で見捨てないで……」

「自だと思う」

「だってご主人様、仕立て屋に行くって言うから時間はまだあると思うじゃないですか。仕事の前にサッパリしておきたいのが心なんです!」

「そうなのか?」

ユイに聞いてみる。

「お風呂は決まってご飯食べる前にってるよ!」

ちょっとベクトルが違った。

「だってさ」

「それはいい心掛けです。じゃなくて!!」

「あーいいからいいから。取り敢えずこれ著て? 子供が見てるから、な?」

「私の意志じゃないのにッ……!!」

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収納箱アイテムボックスから寢間著を出して渡した。

ローブはさっきの一悶著で渡しちゃったし、あと殘ってるのは出先で料理する時用のエプロンくらいしか……。

「こっちでもいいぞ」

「スっとエプロンを差し出しても、流石にここでは著ない!!」

「令呪を以て命ずる……」

なんの紋様も無い左手を掲げ、雰囲気だけそれっぽいじで迫る。

「アンタそんなの持ってないでしょ!? 世界観ブレるから止めなさい!!」

そんなマジなリアクションで來られるとは。

「じゃ、今度家で頼むよ」

「ま、まぁ……、ご主人様がそんなに言うんだったら考えてやらないことも……ない」

「お兄ちゃん、霊さんってチョロいね」

耳打ちするようにユイが言う。

結構しっかり見てるんだなと心してしまった。

「本人に言うなよ? あれで結構傷付きやすいんだから。で、フェリ。本題にりたいんだけどいいか?」

「ユイちゃんを匿うんでしょ?」

分かってるよ、と言わんばかりにウインクのオマケ付き。嬉しい。

「無意識下で深いによって、私たち繋がりあっているんだから分かります」

「したら話が早いわ。やってほしいのは二つ。今晩の寢床の確保と……」

「と……?」

「姉さんへ」

「卻下です」

「言わせろや!」

察しが良すぎるのも考えものだな。

「お兄ちゃん、お姉さんと何かあるの?」

「あー、いやな、『夕飯作ってやるから』って言われてたんだけどさ。んな訳だからフェリ。『お前の可い弟は人助けしてて帰れません』って伝えてくれ。決して姉さんの料理がスリリングだからってわけじゃないんだ」

「すりりんぐ?」

「怖い、ヒヤヒヤするって意味だ。ユイ、覚えておくといい」

「はーい」

「仕立て屋ではどうしても一時間はかかるだろうし、そんくらいあれば平気か?」

「まぁ、移は転移を使えばどうにでもなるので。ただ、今日は月曜日ですので、學生街に資の搬に來た行商人で宿が溢れている可能も……」

「空いてるならどこでもいいよ。取り敢えずユイとフェリがゆっくり寢れるところで頼む。ユイもそれでいいか?」

「うん! お泊まりお泊まり〜♪」

ユイはめちゃくちゃ浮かれていた。

外泊するのも初めてなのかもしれないな。

「(まぁ、楽しみにしてるみたいだし頼むわ)」

テレパシーでフェリに頼む。

「(ふふ。勿論ですとも)」

「取り敢えず用事が済んだらまた召喚するから。今度は外で呼ぶから気を付けろよ?」

「あれは私が悪かったのか!?」

キレながらも渋々といったじで、フェリの姿は消えていった。

「どうだった、初めて霊と話した想は?」

「フィーナお姉ちゃんよりおっぱい大きかった!」

「ぶふっ!? ん? フィーナお姉ちゃん?」

知ってる名前が出てきた。しかも軍隊絡みと來たもんだ。

「あ」

「あ、じゃないんだけど……」

取り返しのつかないレベルで、凄いヤバイことに首突っ込んじまったんじゃ……。

実はユイが捕虜の娘みたいなポジで、それの世話をフィーナさんがしてて。

んでそこから走してきた所を俺が保護してる……、みたいな。

実際そうだとしたらアウトだな。

「難しい顔してるけど平気?」

「いや、正直微妙だわ。一応これだけはハッキリさせておきたいんだが……。ユイが家出したのは別に悪いことしたわけじゃないんだな?」

「うん! 一部の人はちゃんと知ってるし。どこに泊まるとかは言ってないけど……。でも、そろそろさすがに抜け出したのバレてるかも!」

「まぁそりゃ夕飯時だしな……。十中八九、追ってくるのはフィーナさん。これであってるか?」

正直顔見知りとはいえ、軍隊所屬の人間に追われていい気持ちはしない。

なんで十二のガキが國に追われなくちゃならないんだ。

「多分! でもお兄ちゃんが怒られるようにはしないから平気! フィーナお姉ちゃんなら、話せばわかってくれると思うし。それに、フィーナお姉ちゃんもお兄ちゃんの事は信用できる、って前に話してたから」

おう……。いつの間にそんな評価を得てしまったのですか……。

いやまぁ、信用されるのはそりゃ嬉しいんですけどもね?

面倒なことは避けたいっていうか……(もう現狀アウトだけど)。

やだよー、國防最前線に出向けとか言われるの。

「そっか……。したら行くか」

「はーい」

二人揃って個室を出る。

「お客様、お帰りですか?」

「はい。ごちそうさまでした」

「ごちそうさま!」

「いえいえ、またいつでもいらしてください。これからもどうぞ贔屓によろしくお願いしますよ」

「わかった!」

元気な返事でよろしい。

「あ、その前に。これとこれとこれ、持ち帰り用に包んでもらえせんか?」

ス○バみたくレジ橫の棚に軽食が並べられていて、その中からサンドイッチの詰め合わせを三つテイクアウト。

「これどうするの?」

「夕飯にしようかと思ってさ。これ持って帰れば喜ばれそうだしさ。幾らですか?」

「いえいえ、こちらもお代は……」

頑なに拒否される。

どんだけお客様は神様神なのだろうか。

「いやいや、後出しみたいなじになってしまいましたし……」

「いやいや、その心意気だけで十二分にございます故、どうか、どうかそのままお持ち下さい」

……、怪しい。

「あの……、毒でもってるんすか?」

「そんな! 滅相もございません!! そんなことをすれば我々の首が理的に飛びますよ!」

そんなに!?

「おじさん困らせちゃダメだよ。イイって言ってるんだから、有難く貰って行こう?」

「まぁいいけどよ……。それじゃあ、今日のところはお言葉に甘えさせて頂きます。知り合いにここのお店オススメしておくので、そちらからガッポリいっちゃってください」

主にローズとかローズとか……。

我が家の暴食姫相手じゃ 在庫もガッポリいかれるかもしれないけど、そこはそれ。

頼んでいたサンドイッチを手渡され、丁重な見送りをけて俺たちは店を後にした。

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