《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》23 -「宴」

その日の夜は、過去にない賑いとなった。

剣牙獣の、5頭分。

ワイバーンの、1頭分。

巖陸亀の、1頭分。

一角兎の、8頭分。

40人程度しかいないこの里なら、數ヵ月は賄えるであろう大量の

そして売れば一財産となるであろう希素材。

里の人間だけでは決してしえなかった果に、里の住人全員が喜んだ。

「いっやぁ〜、最初は全く信用してなかったんだがよぉ。まさかこんなにも大量のを持ち帰れるとはなぁっ! ガハハ!」

里への運搬が終わり、ガルは終始上機嫌だ。

剣牙獣のの串焼き片手に、男連中と酒盛りをしている。

するとポチがこちらに気が付いて小走りで走ってきた。

「レイアさぁあん!! このおもの凄ぉおおく味しいいですよぉおお!!」

「ポチ。食べるか話すかどっちかに…… おいっ! 涎を撒き散らすな! 私のにかかる!」

「うぉおおお! レイアさんのそれなんですかぁああ!? もの凄く味しそうな香りがしますよぉおお!? 涎が止まりませぇええんん!!」

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ポチは両頬にを一杯に詰め込んだ狀態にもかかわらず、尚も私のしそうに近寄ってくる。

口からは、涎が滝のようにだばだばと流れ落ちている。

危機を覚えた私は、腕をばしてポチの顔を反対側に追いやろうとするが……

「こ、これはダメだ! この時の為に大切に取っておいた香辛料をかけたんだぞ!? 私の楽しみを奪う気か!?」

「レイアさんだけズルぃですよぉおお!! ボクにも分けてくださぁああい!!」

「よ、寄せ! 止めろ! だ、誰だポチに酒を飲ませたのはっ!?」

いつになく押しの強いポチに、押され気味になる。

(くっ…… なんでとっておきの香辛料を使ったときに…… こうなったら気絶させて……)

私が剣呑な考えを巡らせていると、ふいにポチのが宙に浮いた。

「あれぇええ!? ボク空飛んでますよぉおお!?」

目線を上げると、私の背後に立ちながら、ポチの首っこを摘んで持ち上げているゴリが見えた。

「あ、ゴリさぁん! お味しいですよぉおお!? ボク本當に幸せですぅううう!!」

ポチは足をぶらつかせながら、尾をぶんぶん振り回している。

ゴリは私にし會釈すると、ポチを摘んだままガルのいる酒盛り場まで歩いて行った。

(ふう…… やっと靜かにを味わえる……)

再び靜かになった “私専用の焼き場” にて、ゴリとポチの後ろ姿を見ながら、これまでのことをし振り返った――。

私の目的は、今回の立役者であるマサトをこの里に引きれること。

そのためなら、自を捧げることすら躊躇わない。

奴が里の一員になれば、里の環境は劇的に変わる。

毎日魔獣や追手の脅威に怯えなくて済むかもしれない。

私達が渇した平穏が得られるかもしれない。

(マサト……)

私は剣牙獣のに噛り付きながら、里の子供達にみくちゃにされているマサトを見つめた。

ワイバーンをも一撃で仕留める程の力を持っていながら、その力を誇示したり驕ったりしない稀有な男。

誰に対しても腰が低く、時々弱々しい態度を取るが、いざという時には頼りになる男。

考えれば考える程、伴としては高件に思えてくる。

奴に経験がなかったのは、私にとって幸運だった。

逆に言えば、私が奴に付けるにはそれしかない。

(奴の子を籠れば……)

「もうし肩の力を抜いた方がいいですよ」

「ネス!? いつの間に……」

「思い詰めたような顔をしていたのでね。私からのアドバイスです」

「!?」

「マサト君とは自然で接することです。あの手の男は、野心を見せると離れていくタイプに見えます」

「お前に言われなくとも…… そう…… していた……」

「くっくっくっ…… そうですか。それならそれでいいでしょう。頼みましたよ」

「言われなくとも分かっている!」

「ああ、そうです。明日、マサト君とレイアには街へ行ってもらいます」

「街だと!? マサトを引き留めるんじゃなかったのか!?」

「無理に引き留めても返って逆効果でしょう。それよりは、彼のみを手助けしてあげて、恩を売った方が効果的だと思いますが」

「それは……」

「私は何もマサト君を街へ追い出せと言っているのではありません。街へのお使いを頼むだけです。マサト君に、この里を拠點としていてもらうために、ね」

「そう、か。分かった」

ネスは私に底の見えない笑みを見せると、ガルに絡まれているマサトの方へと歩いて行った。

「自然…… か」

普通とは縁の無い人生を送ってきた私には、自の自然というものがどういうものなのか、理解することができなかった。

ただ、マサトは誰の手にも渡さないという決意だけは、しっかりと心の中にある。

その獨占が、ダークエルフ特有のものなのかどうかは分からないが、そのが人生で初めて経験するものだという自覚だけはあった。

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