《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》292 - 「黃金のガチョウのダンジョン6―者」
(夜想曲を奏でる人面鳥ノクターン・ハーピーを一撃!? な、なんスかあの線と落雷は!? 火だけじゃなく雷も使えるんスか!?)
一部始終を見ていたチョウジが、マサトの戦闘力の高さに唖然とする。
(いや、もしかしたらあの黒い杖が相當強力な古代魔導アーティファクトっていう可能も……)
そう分析するも、舞い踴る人面鳥ダンシング・ハーピーの群れですら簡単に一掃できるほどの武であれば、間違いなく神にまつわる武――神級ゴッズクラスの代だ。
それを裝備して使いこなしている時點で、その人の評価は大きく変わる。
(まともにやりあったら、さすがの自分でも危ないッスね……黒髪の姐さんはべらぼうに強いし。攻撃に関してはうちの姐さん以上かも……)
チョウジが眉間にシワを寄せながら考え込んでいると、アシダカが遠方の空を指した。
さきほど水柱が豪快に噴き上がった方角だ。
「苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブ……70階層の守護者まで……」
黒い樹木の上に、巨大なカニの頭が覗いている。
「マジッスか……ってことは、ここからはまだ見えないだけで、くて騒な斷頭ガニギロチン・クラブも大量に湧いてんスね……」
アシダカが冷や汗を浮かべ、チョウジが呆れかけていると、ヴァートが聞いた。
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「ものすごく大きいけど、やっぱ強いの?」
アシダカが答える。
「はい、苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブは第二の難所と呼ばれているほどの強敵です。あの大きさですから、生半可な攻撃では傷を負わすことも難しいほどに分厚い甲殻に守られています。仮に傷つけることに功したとしても、眠ることで甲殻の傷まで再生させる能力も保有しています。厄介なのは、眠りについている間は、甲殻が更に強化されることにあります」
「あんな大きいのに自分を回復する能力ももってるんだ」
「はい……とはいえ、苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブだけであれば、時間さえかければ討伐も可能です。ですが、苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブは常に大量の斷頭ガニギロチン・クラブを従えて行しますので、同時に対処する必要があります。また、苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブは、攻撃をける度に斷頭ガニギロチン・クラブの卵を生んで兵隊を増やす習もあり……」
「げぇ……」
ヴァートも難しい顔をする。
黃金のガチョウのダンジョンでは、皇帝ミオトラグス・オクトが最初の難所として、苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブは第二の難所として、冒険者たちに立ち塞がる。
この2に限っては、一定水準以上の攻撃力を備えたパーティでなければ攻略が不可能だからだ。
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すると、目を凝らしていたチョウジが何か違和に気付いた。
「ちょ、ちょっとタンマ! あのカニの背中……何か咲いてないスか……?」
「まさか……!!」
アシダカが細い目を見開き、んだ。
「蓮生やしの巨大ガニロータス・ジャイアントクラブ!!」
「よりによって魔法が効かない変異カニッスか……」
「ま、魔法が効かないだって?」
チョウジが頭を抱え、ヴァートが聞き直すと、冷や汗を流し始めたアシダカが答えた。
「はい、蓮生やしの巨大ガニロータス・ジャイアントクラブは苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブの変異種です。遭遇確率がかなり低いため、報の信憑も怪しいところですが、記録によれば魔法を無効化する力があるようです。更には苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブよりもい甲殻で覆われているとか……」
「そんな凄いやつが出てきたんだ……でも大丈夫だよ。父ちゃんや師匠がいるし」
話を聞いて驚くも、大丈夫だと自信満々に言い切ったヴァートに、アシダカがハッとなる。
「そうでした。マサト様とパークス様がいらっしゃるなら、何も心配することはありませんでした。私たちは目の前の皇帝ミオトラグス・オクトに集中するとしましょう」
「ああ! おれたちも負けてらんないよ! やってやろう!」
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そう言うや否や、ヴァートが勢いよく柏手を打った。
何事かとチョウジがヴァートを見るも、ヴァートはそのまま地面へ両手を付け、詠唱を開始。
「冥界に君臨せし不遜なる混沌の王よ、終焉をむ我がと魔力マナを贄に、その混濁たる常闇の牙を貸し與え給え!」
地面に発現した魔法陣が、黒い煙とともに紫のを放つ。
「眷屬召喚! 地獄の猟犬ヘルハウンド!!」
詠唱が完了すると同時に、魔法陣の上をと黒い煙の放流が起こり、その直後、勢い良く弾けた。
突風が駆け抜け、獣の遠吠えが響く。
――オォォオオオオオン!!
漆黒のに黒炎をに纏った大狼が、鋭い牙を剝き出しにしながら姿を現す。
(なっ!? こんな年が召喚魔法!? しかも地獄の猟犬ヘルハウンド!?)
チョウジが口を開けて驚くと、その反応を見てし浮かれた表に変わったヴァートが話を続ける。
「じゃあ、おれが影で壁を作って敵の足止めをしてみるから、アシダカさんとチョウジさんは、地獄の猟犬ヘルハウンドと一緒にれたやつの各個撃破をお願い!」
「承知しました」
「お、おうッス」
ふたりの返事に頷いたヴァートが黒い靄を纏って空に飛び上がる。
(召喚魔法だけじゃなく、飛行魔法まで……まだ若いのに、ちと優秀過ぎやしないスか……)
チョウジが心していると、近くで禍々しいオーラを察知し、一瞬が強張った。
(な、なんスか!?)
気配がした方角に振り向く。
「んなッ!?」
あまりの驚きに、思わず短い悲鳴をあげたチョウジ。
その視線の先には、立派な角を生やした、漆黒の翼をもつ大型の悪魔デーモンが羽ばたいていた。
それも1ではなく、3も。
(あの威圧、まさか上級悪魔ハイ・デーモン!?)
チョウジが一歩後退ったのと、2の上級悪魔ハイ・デーモンが振り向きざまにこちらへ移し始めたのはほぼ同時だった。
「は、上級悪魔ハイ・デーモンッスよ!!」
チョウジが攻撃態勢に移ろうとする。
だが、それをアシダカが慌てて止めた。
「よく見てください! あれは味方です! シャルル様が召喚された眷屬です!」
「しょ、召喚……? ど、どういう……」
そこまで言葉を発し、マサトがシャルルに悪魔デーモンを召喚しろと言っていたことを思い出す。
その時はあり得ない容過ぎて理解できなかったが、その言葉の通りだったのだとようやく理解が追いつく。
「あの姐さんまで召喚魔法が使えるんスか……しかも上級悪魔ハイ・デーモンを複數……」
ほんまもんの化けだと、チョウジがシャルルの評価を更に數段階引き上げていると、ヴァートがんだ。
「ふたりとも何してるの! 早く!」
「すみません、ヴァート様。今向かいますので」
「あ、ああ、わりぃッス」
ふたりが走る頭上を、大きな翼を広げた上級悪魔ハイ・デーモンが悠々と追い抜かしていく。
(これはわざわざ死ななくてもこのフロアから出できるんじゃ……)
上級悪魔ハイ・デーモンの背中を眺めながら、チョウジはそんな淡い期待を抱き始めていた。
◇◇◇
夜想曲を奏でる人面鳥ノクターン・ハーピーを討伐したマナを回収していたマサトが、皆の狀況を改めて確認する。
(シャルルはまだ召喚してたのか……)
どうやら、上級悪魔ハイ・デーモンの召喚にもなると、1召喚するのにそこそこの時間がかかるようだ。
3の上級悪魔ハイ・デーモンの召喚を終えたシャルルが、ようやく30階層守護者である鳥使いの亡霊ゴーストバードキャッチャーの討伐へと向かう。
その先の空では、先に召喚した數の中級悪魔ミドル・デーモンが、幽霊の夜鳥ゴーストバードの群れと既に戦闘を繰り広げている。
中級悪魔ミドル・デーモン程度の力では、敵の數に封殺されるかと思われたが、実際はその逆だったようだ。
群がる幽霊の夜鳥ゴーストバードたちを迎撃し、著実にその數を減らしていっていた。
中級悪魔ミドル・デーモンが苦戦している様子はない。
(この調子なら、鳥使いの亡霊ゴーストバードキャッチャーへの対処は上級悪魔ハイ・デーモン1でも十分だったか?)
その考えは正しいように思えたが、既にシャルルと上級悪魔ハイ・デーモンが向かっているため、指示は撤回せずに狀況を見守る。
仲間を増やす能力をもったモンスターは早めに仕留めておいた方がいい。
ヴァートたちは50階層守護者である皇帝ミオトラグス・オクトへと既にき出している。
巨大な山羊のような獣の群れが、幹が黒く染まった木々を問答無用でなぎ倒して突進してくる様子は、何者にも彼らの突進を止めることができないと錯覚させるほどの力強さをじたが、2の上級悪魔ハイ・デーモンが護衛についたなら最悪のケースは避けられるはずだ。
すると、パークスが向かった方角から大型の竜巻が発生した。
パークスは60階層守護者、泥棒王メガ・クロオウチュウの対処へと向かっていたはずで、敵をまとめて一掃するためにパークスが放ったものだろう。
(向こうも始まったか)
続々と戦いの火蓋が切られていく。
一通りマナの回収を終えると、目の前にシステムメッセージが表示された。
『舞い踴る人面鳥の群れダンシング・ハーピーズを獲得しました』
『夜想曲を奏でる人面鳥ノクターン・ハーピーを獲得しました』
【R】 舞い踴る人面鳥の群れダンシング・ハーピーズ、(青×2)(黒×2)(1)(X)、「ソーサリー ― ハーピー」、[X:舞い踴る人面鳥ダンシング・ハーピー召喚X。舞い踴る人面鳥ダンシング・ハーピーは、[飛行] をもつ2/1のハーピーとして扱う]
【UC】 夜想曲を奏でる人面鳥ノクターン・ハーピー、2/3、(青)(黒)(1)、「モンスター ― ハーピー」、[眠り魔法Lv4] [飛行]
X呪文の召喚カードと守護者、両方のカードドロップに喜ぶ。
(よし、ついてる。一度、ヴァートたちの加勢に向かうか、それとも――)
遠くに出現した巨大なカニは、きが遅いのか一向に近付いてくる気配はない。
だが、それはそれで気になった。
攻めてくるモンスターであれば迎え撃てばいいが、守りを固めていくタイプのモンスターであれば、時間の経過とともに不利になるのはこちら側だ。
(先にあれを片付けるか)
マサトが巨大カニへ向かって飛行速度をあげる。
(でかいな……)
遠くからでもその大きさは認識していたが、接近したことでその大きさがより鮮明になる。
サッカーコートほどの広さがありそうな背中には、菫の花が無數に咲いており、それがカニの背中だとは思えないほどにしい花畑になっていた。
よくよく目を凝らして見てみれば、その花畑には赤いの蝶のような生きが無數に舞っている。
そして、周囲一面が水場だと錯覚するほどの青いカニで溢れており、巨大なカニの足にも大量の青いカニがびっしりとくっついていた。
どうやら予想が當たったようだ。
(ここで兵士となるカニを量産していたからかなかったのか。早いうちに片付けておこう)
黒杖を翳し、再び積雲を作り出そうとしたその時――。
マサトと巨大カニのちょうど中間地點に、上空からの柱が地上へとびた。
(なんだ……?)
の柱はすぐに消えた。
男ふたりの冒険者を殘して。
凜とした裝いのが周囲を見渡しながら口を開く。
「なに……ここ……?」
同じく、周囲を見渡していた男が続く。
「どうやらワープポイントに細工されたようだな」
「だとしても、こんな不気味な巨大フロア聞いたこともないわ」
は驚いているようだったが、すぐ目先の巨大なカニに気付くと、聲を荒げた。
「苔生やしの巨大ガニモス・ジャイアントクラブ!?」
「いや、あれは蓮生やしの巨大ガニロータス・ジャイアントクラブの方だろう。空に赤い斬り裂く蝶カニバタフライクラブが飛んでいるのが見える」
「変異種!? よりによってこんな時に!?」
「偶然ならいいが、そういうフロアに意図的に飛ばされたとなれば、話が変わってくるな。時間稼ぎが目的か、あるいは……」
別の気配に気付いたのか、ふたりが同時にマサトの方へ振り向く。
揺した気配はなく、真剣な表だ。
「待ち伏せされているか、だ」
男がそう話すと、が剣を抜いた。
「蓮生やしの巨大ガニロータス・ジャイアントクラブに時間を與えると後が厄介よ。早くあいつを捕まえて、目的を吐かせましょう」
――――
▼おまけ
【C】 コオイムシの蟲、0/1、(緑)、「モンスター ― 昆蟲」、[(緑×2)(X):嵐呼びのタイフーンコオイムシ1/2に進化し、卵カウンター+Xする] [口針攻撃Lv1]
「良く火を通せば煎餅覚で食べれる。味も悪くない――パラベドの日記」
【UC】 嵐呼びのタイフーンコオイムシ、1/2、(緑×2)(3)、「モンスター ― 昆蟲」、[召喚時、卵カウンター+6] [孵化:卵カウンター-1、コオイムシの蟲0/1召喚1 ※使用上限、毎ターン1回まで] [口針攻撃Lv2] [風魔法攻撃Lv3] [捕食:再生Lv1]
「菫のモンスターハウス、攻略1日目。通常階層の出現時よりも大きい気がするが、気の所為だろうか。し手間取ったが討伐に功する。強い泥の臭みはあるが、非常食として食えないほどではない――パラベドの日記」
【C】 幽霊の夜鳥ゴーストバード、1/1、(青)(2)、「モンスター ― ゴースト」、[呪文や能力の対象になった時、消滅する] [追加召喚2] [防不可] [理攻撃無視Lv1] [飛行]
「菫のモンスターハウス、攻略2日目。こいつらが夜な夜な襲ってくるせいで、満足に仮眠すら取れなかったが、奴らは土や水の中であれば攻撃してこれないことが分かった。これでしは眠れそうだ――パラベドの日記」
【UC】 鳥使いの亡霊ゴーストバードキャッチャー、0/2、(青×3)、「モンスター ― ゴースト」、[他のモンスター死亡時:死亡したモンスターを追放し、幽霊の夜鳥ゴーストバード1/1召喚1] [理攻撃無視Lv3] [飛行]
「菫のモンスターハウス、攻略3日目。ようやく鳥使いの亡霊ゴーストバードキャッチャーを見つけ出して討伐に功する。だが、皆疲労のが濃くなってきた。心配だ――パラベドの日記」
【R】 舞い踴る人面鳥の群れダンシング・ハーピーズ、(青×2)(黒×2)(1)(X)、「ソーサリー ― ハーピー」、[X:舞い踴る人面鳥ダンシング・ハーピー召喚X。舞い踴る人面鳥ダンシング・ハーピーは、[飛行] をもつ2/1のハーピーとして扱う]
「菫のモンスターハウス、攻略4日目。疲労が溜まってきている狀況下で、夜想曲を奏でる人面鳥ノクターン・ハーピーの眠りの歌は耐え難い。対眠り防止効果のある裝備のおで眠らされることはないが、守護者の連続出現に、皆の不安が大きくなってきている。このままでは――パラベドの日記」
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8 57わがまま娘はやんごとない!~年下の天才少女と謎を解いてたら、いつの間にか囲われてたんですけど~
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