《【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜》302 - 「黃金のガチョウのダンジョン16―ギルデッド」
視界を白に染める強烈な雷。
雷眼の鍛冶神、アルゲスの黒杖から放たれた雷撃は、瞬きするほんの一瞬で、黃の甲冑姿の男――ヴィリングハウゼン組合、第六班隊長のカシを捉えた。
「ぐッ……!?」
カシの短いうめき聲と同時に、甲冑の隙間から白い煙がぶわっとあがる。
だが、別の隊長格であるサヤを撃ち落とした時と違い、カシは耐えてみせた。
(やるな……)
先程とは違う手応えに、マサトは警戒を緩めず、雷撃の出力を維持すると、放電により急激に膨張した空気が弾け、バチバチと不快な音が鳴り響いた。
「ぐぐぐッ……」
電撃音にかき消されながらも、微かにうめき聲が聞こえてくる。
電撃によって直しているが、意識を保ったまま耐えているようだ。
すると、マサトの反撃に気付いた他の部隊員が次々に聲をあげた。
「た、隊長ッ!?」
「カシ隊長の援護に回れッ!!」
「急げーッ!!」
すかさず、マサトがシャルルへ指示を出す。
(シャルル、頼む)
『仰せのままに』
念話で指示をけたシャルルが、黒い影を纏わせながら対処へ飛び立つ。
(これで、もうしだけ時間を稼げる)
その間も雷撃を浴び続けているカシは、依然として墮ちる気配がない。
それだけでなく、甲冑の隙間から反撃の隙を狙っているような鋭い視線すらじた。
(雷撃は駄目か)
マサトもすぐ見切りをつける。
雷系の魔法は強力ゆえ、MEでも事前に対策されることが多いと聞いたことがある。
たとえそれがMEの中での常識であったとしても、上位の者たちとの戦闘であれば通じる可能は高い。
(それなら、これはどうだ……?)
雷撃を維持しながら、マサトは相手の実力を測るかのように、次の一手を講じた。
◇◇◇
炎の翼を生やした男が、左手を向ける。
(げっ、や、やばい! このまま次の攻撃かよ!?)
カシが驚きに目を大きく見開きながら焦る。
目の前の男が、古代魔導アーティファクトらしき黒い杖から雷を放つのは分かっていたし、警戒もしていた。
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計算が狂ったとすれば、その古代魔導アーティファクトによる攻撃が、想定を上回る威力だったということだけだ。
(俺のアホ! 分かりきってた攻撃で相手にまんまとつかまってどうすんだよ!?)
カシは、魔導アーティファクトに対する免疫を持つという特徴的な希加護をもっていた。
たとえ雷撃魔法といえど、それが魔導アーティファクトから発生したものであれば、無條件で軽減できる非常に強力な加護だ。
その上、今は組合から支給された至高の鎧――ルードヴィッヒのの鎧により、並大抵の攻撃では傷すらつけられないほどの高い耐久力を得ている。
それによる慢心もなからずあったのも事実ではあるが、強烈な雷撃によるの直さえ解け次第、すぐさま反撃に出るつもりでいたのだ。
だが――。
(ぐぉおおおッ! けねぇえええッ!!)
歯を食いしばり、鬼の形相で必死にをかそうとするも、雷撃が想像以上に強力過ぎて上手くいかなかった。
ダメージは軽減できても、攻撃に伴う狀態異常までは、さすがのカシでもどうしようもなかったのだ。
麻痺の回復だけであれば治療系の魔導アーティファクトでどうにかなるが、被弾中では回復も不可能。
この狀況でも、雷撃による電直を気にせずける者がいるとすれば、狀態異常無効化の統伝適をもつ首領ドンタコスくらいだろう。
すると、男の左手から淡い赤のの粒子が煙のようにあがった。
(あ、不味い不味い不味い! き、急事態! み、味方は!?)
カシの部下たちは、黒髪の――シャルルに阻まれており、即座に助けにれる狀況ではなくなっていた。
そして、カシの願いは屆かぬまま、無にも男の手から大玉の火球が放たれる。
(くっ!? 當たるっ!?)
頭部よりも大きな火球が、雷撃によってきを封じられていたカシの顔面に直撃。
カシの視界が赤から黒へと変わり、そのまま意識が遠のく。
火球による灼熱の風と強力な衝撃は、カシの意識を容易に消し飛ばしたのだ。
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発によって一瞬で円球に広がった煙の中から、気絶したカシが弾き出されると、そのまま力なく落下していった。
だが、それも僅か數秒で、カシのに変化が起きた。
突然、カシのが白いに包まれると、傷と回復とともに意識が戻ったのだ。
それは、意識を失うことをトリガーとして発する治療系の魔導アーティファクトの効果だった。
「カハッ!?」
咳き込みつつも、飛び起きるようにして目覚める。
一瞬、何が起きたのか分からず、軽く錯しかけるも、すぐ狀況を思い出し、急いでその場から離れた。
復帰直後を狙われないようにするための急退避だ。
(い、意識失ってた!?)
負傷した箇所がないか急いで確認する。
幸い、魔導アーティファクトで回復できるレベルの負傷だったようだ。
(良かった……五満足。ふぅー、焦る焦る。の鎧様々だ。だけど、火球一発で失神させられるとはなぁ……)
気落ちしつつも、その狀況を招いた元兇の男を急いで探す。
男はすぐに見つけることができた。
なぜなら、男は先程の場所から移せず、あの黒杖から雷撃を連続で放っては、部下たちを次々に撃ち落としていたからだ。
(冗談きついな……あの威力の雷撃をずっと連発できんのか。連れのも相當強いし、上級悪魔ハイ・デーモンを引き連れてる時點で嫌な予はしてたんだよなぁ……)
敵の強さに圧倒され、途端にやる気を失うカシ。
(相手はすでに第五班と、あのおっかないサヤ姉も突破してきてるわけだし、首領ドンですら突破できない遮斷する白いプリズムホワイトプリズムアレイをぶっ壊してくる化けだろぉ……俺の部隊が応戦したところで、突破されるのも時間の問題だったんだよなぁ……)
徐々に後ろ向きな気持ちになるも、部下たちの悲鳴が聞こえたことで我に返る。
(くっそぉ……だから責任のある立場は嫌だったんだ! 中衛なら高みの見できると思ってたのに!!)
一通り悔しがると、大きく溜息を吐いた。
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「仕方ない。激しくやりたくないけど、長期休暇を獲得するためには、ここらへんが踏ん張り時なんだよなぁきっと」
再びカシの瞳に力が戻る。
その手には、カシの異名の由來となった神級ゴッズの古代魔導アーティファクトが握られていた。
◇◇◇
「首領ドン! あの裏切り者は放っておいていいのかよ!?」
「ケイ! 余所見してんな! 次來るぞ!!」
「チッ! いい加減しぶてーな! この怪めッ!!」
黃いに包まれた隊長格の戦士――第一班隊長ケイ・チャムと、第二班隊長メストが、菫の守護者が発する業火のを躱しつつ、攻撃魔法を放っていく。
そのうちの1つが運良く守護者に到達するも、途端に霧散し、の殘滓となって消えた。
「あぁあッ! またかよッ!!」
ケイが苛立ち、聲を荒げるも、攻撃の手は緩めず果敢に攻め続ける。
さきほどから、有効打になり得る威力の魔法は、不思議な力で盡く打ち消されていた。
だが、それでも敵の注意を引くことはできる。
敵の注意を引くことができれば、それが新たな隙きを作り、仲間の次の攻撃に繋がるからだ。
「もらったッ!!」
守護者の懐に上手く潛り込んだメストが、鋭い剣の一撃を放つ。
剣先からびた黒いの剣線が、大きく弧を描くように走り、そのまま守護者の腹部に屆こうとした瞬間、メストの目の前から守護者が忽然と消えた。
「くッ……」
メストが悔しさに顔を歪め、歯を食いしばる。
剣を振り抜いた無防備な勢で見據えたその瞳には、こちらの剣撃に合わせたかのように振り抜かれた、鋭利な棘のついた兇悪な尾が寫っていた。
直撃すれば、の鎧をにつけた隊長格といえど、一撃で瀕死の狀態になりかねない攻撃だ。
最悪、頭部とを切り離される可能すらある。
だが、その攻撃も當たることはなかった。
再び守護者が消え、守護者がいた場所に極太のの線が走る。
そのは、首領ドンタコスが超高速で突進した跡だ。
間一髪のところで直撃を免れたメストへ、ケイから野次が飛ぶ。
「へッ、メスト! お前の方こそ余所見してんじゃねーぞ?」
「……俺は余所見してなかっただろ」
兜の側で冷や汗を浮かべながら答えたメストの橫に、ケイがわざわざ移してきて無駄口を叩いた。
「よッ、死に損ない。っつか、切り取られた時ときが一瞬だと、さすがにこのの鎧でも介できないんだな。まさか欠陥品じゃねーだろな?」
ケイがメストを揶揄いつつもそう話しかけると、メストは渋々答えた。
「止めろ。ルードヴィッヒ様の創造だぞ。相手の切り札を無効化できてるなら、それで十分だろ」
「まっ、完全に無効化できてるわけじゃねーから、百歩譲って弱化あたりが妥當だろ」
「ふたりとも、戦いに集中せんか!!」
お喋りをしていたふたりに、タコスが割ってる。
だが、それを狙っていたかのように、ケイがタコスへ話しかけた。
「首領ドン、だからあの裏切り者をどうするんだって。このままじゃカシもやられるぞ?」
どういうわけか、遮斷する白いプリズムホワイトプリズムアレイが解かれ、マサトが第六班と戦し始めたことは、タコスもすぐ気付いていた。
だが、だからといって再び守護者への攻撃の手を緩めれば、その分だけ主力部隊の被害が増える可能があった。
主力部隊の戦力が一定以上落ちれば、守護者討伐に支障が出てしまうため、タコスとしても取れる選択肢がない狀況だったのだ。
「今はカシに任せるしかないでしょうな」
「あの引き篭もりに任せるねぇ」
「おいケイ、さっきから口が過ぎるぞ」
メストが咎めるも、ケイの口の悪さは今に始まったことではないため、タコスも気にせず告げた。
「なに、カシも追い込まれれば、本気になる。本気になったカシは、ここで無駄口を叩いて守護者1相手に、かすり傷一つ付けられないどの隊長よりも、実力は上でしょうな」
タコスの挑発に、ケイがまんまと乗せられる。
「ハッ! 今までは様子見してただけだっつーの」
「……全く」
メストがやれやれと溜息を吐くも、討伐に殘された時間はないと理解し、全力を出すべく集中し始めた。
「まずは、我輩たちが1秒でも早くこの獲を討伐する。話はその後。そろそろ戯れの時間もお終いにしますぞ。いいですかな?」
「ああ!」「了解!」
◇◇◇
黒杖から放った大きな雷球が、まるでプラズマボールのように、空から迫りくる黃い甲冑姿の者たちへと雷撃の手をばしていくと、雷撃の手に摑まれた者たちから次々と短い悲鳴があがった。
「ぐぁあッ!?」
「うわぁああッ!?」
「ふ、不用意に近付くなッ! 焼かれるぞッ!」
雷撃は數秒で消えるも、組合員たちの意識を刈り取るには十分な威力だった。
雷撃を浴びた者が次々に煙の尾を引きながら落下していく。
「撃に切り替えろ!!」
「魔弓班!!」
「駄目だ! 誰か、あのをどうにかしろ!!」
「中級悪魔ミドル・デーモンにも警戒しろ! そこまで來てるぞ!!」
カシの部隊は、マサトとシャルルのふたりに既に撹されていた。
マサトへ追撃しようと接近を試みた者は雷撃に焼かれ、後方から遠距離攻撃を仕掛けようとしていた者たちは、強力な闇魔法を惜しみなく多用してくるシャルルの対処だけで手一杯のようだ。
おでマサトが敵の遠距離撃の的になるような狀況にはなっていない。
マサトは戦いの中で編み出した技を使って敵を牽制しつつ、視界の端で追っていた隊長格の男――カシに意識を向ける。
(火球を直撃させてもまだ立て直してくるのか……)
今の狀況であれば、敵の包囲網を強行突破して、守護者と戦中の主力部隊に割ってることは可能だろう。
だが、そうなればヴィリングハウゼン組合の主力のほとんどを相手にしなければいけなくなるのは目に見えている。
の聲の主を助けた後のことを考えるのであれば、可能な限りヴィリングハウゼン組合の実力者は削っておきたかった。
(シャルルはこのまま手下の相手を。俺はあの隊長格を先に片付ける)
『旦那様の仰せのままに』
凄まじい速度で一直線に飛んでくるカシに対し、マサトが正面を向くと、カシは攻撃を警戒したのか、狙いを絞られないように変則的に飛び始めた。
(厄介な速さだな……)
高速で撹飛行してくる相手に、その場に留まって応戦するのは危険だとじたマサトは、タコスら主力部隊がいる方角へ火球を連続で放ち、その直後に背中から炎を噴して急加速。
自が放った火球の後に続いた。
マサトの周囲を包囲していた者たちが、突然の火球に驚くと、そのまま回避しようとく。
その火球の威力を目の當たりにした直後だったため、心理的な圧をじたのだ。
また、火球は軌道が直線的なこともあり、回避が容易だという理由もあった。
結果、包囲網にが空き、火球に続いてマサトが通り抜ける道ができてしまう。
不味いと気付き、攻撃を試みようとした者もいたが、マサトが放つ雷撃の速度には勝てなかった。
すれ違い様に數人撃ち落としたマサトが、第六班の包囲網を抜ける。
(よし、これでサシの狀況にもっていける)
マサトの狙い通り、第六班隊長であるカシがすぐさま追いつく。
(そこかっ!!)
マサトが黒杖から雷撃を放つも、先程までは裝備していなかった黃金の盾に阻まれてしまう。
(ちっ! 雷撃対策か!)
盾で雷撃をいなしたカシが、今度はこちらの番だと言わんばかりの形相で反撃に出た。
カシの右手にもった青い短杖が輝き、空気の波紋が発生。
その波紋は急速に広がり、マサトを襲った。
(風魔法か!?)
回避不能なまでの波紋の広がりに、マサトは回避を諦め、素早く雷喰いの円盾ライトニングイーターシールドを現化。
衝撃に備えた。
だが、その攻撃はダメージを目的としたものではなかった。
『無気力の波アパシーウェイブに曬されました。一時的にステータスが低下します』
目の前に表示された警告メッセージと、その容に驚く。
(なっ!? 弱魔法デバフか!!)
から力が抜けていく覚に焦りをじたマサトが、カシへ向けて火球を放つも、カシは既に退避の作に移っていた。
始めから深追いするつもりはなく、ヒット・アンド・アウェイによる弱化が目的なのだろう。
(不味いな……)
相手の飛行速度がかなり高いため、雷撃できを封じなければ火球を當てるのはまず無理だ。
だが、雷撃は相手の盾に吸われてしまう。
そして、相手の接近を許せば、先程の弱魔法デバフを再び浴びることになる。
ステータスの弱が、たとえ一時的なものだとしても、これから相手の主力部隊を相手にしなければいけない狀況を考えると、間接的な致命打になりかねない。
相手にとってすれば、世界主ワールド・ロードを討伐するまでの時間稼ぎができればよく、更にはここで敵を弱化できれば、後の主力部隊へと繋げることができるため、それが最適な行なのだろうが、マサトにとっては好ましくない展開だった。
(これだから対人戦は嫌なんだ……)
一筋縄ではいかない戦いに溜息を吐きつつ、マサトも貴重な手札のひとつを切る決心をした。
(上手く行けばこの隊長格との戦闘は一瞬で片がつく。駄目でも手數が増える。無駄にはならないだろう……)
時間稼ぎのため、周囲に雷雲を撒き散らしつつ、マサトは召喚を行使した。
「金箔付き大天使ギルデッド・エンジェル、頼むぞ」
【SR】 金箔付き大天使ギルデッド・エンジェル、5/5、(青×3)(白×2)、「モンスター ― 天使」、[召喚時:モンスタートレードLv7] [飛行] [與ダメージX:ライフ回復LvX]
白金のの粒子が、寶石のようにキラキラと輝きながら周囲に弾け飛ぶ。
マサトの狙い通り、カシは警戒したのか、周囲を旋回するだけで接近してはこない。
だが、の粒子が何かを形取り始めると、それが召喚魔法だと気付いたのか、急速に距離を詰めてきた。
「させるかッ!!」
カシがび、左手に持っていた青の寶石を掲げた。
すると、その寶石から、青の淡いの粒子が舞い上がり始めた。
嫌な予をじたマサトが、すかさず魔法を行使する。
「解呪ディスペル!!」
【C】 解呪ディスペル、(白×2)、「インスタント」、[付與魔法解除ディスエンチャントLv3] [魔導破壊Lv3]
白いの粒子が舞うと、カシが左手に持っていた青の寶石が々に砕け散った。
「えッ!? 噓だろッ!?」
カシが不測の事態に驚愕し、即座にマサトから距離を取ろうと引き返す。
不可視の攻撃を警戒したのだ。
揺も大いにしただろう。
マサトにとっても、貴重な魔導アーティファクト破壊カードである解呪ディスペルの消費は手痛い選択だったが、結果的にそれが最良の選択となった。
(おで十分な時間稼ぎができた)
直後、大翼をもつ天使を形度っていたの粒子が弾け飛び、白金のに金が神々しく、それでいて無機質な人造人間アンドロイドのような見た目の天使が姿を現した。
「あ、大天使アークエンジェル!? う、噓だろ!?」
あまりの驚きに、その場で直するカシを指差しながら、マサトが告げる。
「対象は、あの男だ」
「な、なにを……」
突然から白いの粒子が溢れ出したことで、焦ったカシが疑問を口にし、途中で話をやめた。
金箔付き大天使ギルデッド・エンジェルの召喚効果のひとつである [モンスタートレードLv7] が効いたのだ。
功したことにホッとしたマサトが、金箔付きギルデッドコンボの定番である締めの魔法を唱える。
「手札送還リムーブ」
【UC】 手札送還リムーブ、(青)(X)、「インスタント」、[手札送還LvX]
金箔付き大天使ギルデッド・エンジェルが手札に戻り、新たな仲間となった男――ヴィリングハウゼン組合、第六班隊長であるカシがその場に殘る。
(これで厄介な敵がひとり減り、こちらの戦力は増えた。相手が所持していた裝備品ごと一緒に手にるのは、金箔付きギルデッドならではだな)
カシの重裝備を見ながら、マサトがそんな想を抱く。
(いや、厄介度でいえば、金箔付きギルデッドの方が斷然上か)
改めて金箔付きギルデッドコンボの強さを痛しつつ、カシに問う。
「ヴィリングハウゼン組合の主力部隊を止められるか?」
カシはし考えた仕草をした後、口を開いた。
「俺が提案したところで止められるとは思えないですね。俺、面的には一応こんな立場ですけど、そこまで発言力高くないんで……」
「じゃあせめてお前の部下たちなら止められるか?」
「あー、どうだろ? こっちが戦しないでいれば、その間だけなら休戦させられるかも……? さすがに本隊を裏切るまでは無理ですね。そこまで絆が深いわけじゃないんで」
「分かった。それなら一時休戦だ」
「了解です。じゃあ部下たちに合図出しますね」
カシが左足の大部ふとももの外側に裝著されていた短杖を取ると、上へ掲げた。
短杖から緑の発が打ち上がる。
それと同時に、マサトがシャルルと支配下のモンスターへ、退避と一時休戦の指示を送る。
「俺たちを閉じ込めたあの白い水晶はまだあるか?」
「あー、ありますけど……あれで首領ドンや他の隊長らを捕まえるのはかなり難易度高いですよ? 雷撃でその場に釘付けにできるんならまだ可能はあるものの、首領ドンには狀態異常が効かないから恐らく足止め自が無理だろうし」
「なら、お前の部下を閉じ込めておければそれでいい」
「それなら多分いけますね。でも、こっちにサヤ姉ら……あー、第五班の生き殘りが全員接近してきてますけど、そっちはどうします?」
カシが指差した方角からは、マサトが最初に撃ち落としたはずの隊長らが、急速に距離をめつつあった。
どうやら気絶した狀態から回復したようだ。
人數もまだかなり多い。
マサトが支配下のモンスターにも休戦指示を伝達したため、全員が足止めされることなく一直線にこちらを目指していた。
速度は負けているが、その後方からはハーピーらマサトの支配下モンスターの生き殘りも後に続いてきているが、その數は半分以下まで減っていた。
「まだ數が多いな……あれも騙せるか?」
「うーん、サヤ姉は……多分、無理かなぁ? 同じ場所に導した時點で疑われそう」
「そうか……」
ふと、マサトが思いつく。
「部下をひとりだけここへ呼んでほしい。今すぐ」
「それは別にいいですけど、何をするつもりです?」
マサトは手持ちのカードリストを表示させ、そのカードの効果を確認しながら、カシに答えるわけでもなく獨り言のように呟いた。
「この狀況なら、試してみる価値はある。いや、この狀況だからこそ今試しておくべきか……」
――――
▼おまけ
【R】 遮斷する白いプリズムホワイトプリズムアレイ、(白)(X)、「アーティファクト ― 水晶」、[白い水晶をX生する。白い水晶は、一時的に同じ水晶へ向けてを放ち合う質を持つ。白い水晶同士でが繋がった場合、それは全てを遮斷する屬をもつ] [耐久Lv3]
「ただ引き篭もりたいがために、壁の代わりにこれを使った奴を、俺は初めて見たぞ――呆れつつもその行の大膽さに心するメスト」
【SR】 無気力の短杖アパシーロッド、(青)(3)、「アーティファクト ― 裝備品」、[(青):無気力の波アパシーウェイブ、一時補正−3/−0] [裝備コスト(青)] [耐久Lv3]
「カシ隊長の二つ名の由來ですか? 本人が無気力だからっていう理由が由來だと思ってる人も多いですが、実際はもちろん違いますよ。あの二つ名は、カシ隊長が敵を次々に無気力にさせたっていう実話からついた異名なんですよ。まぁ滅多に本気にならないんで、知らない人が増えるのも當然ですけどね――第六班隊員、マダンパ」
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