「う、うそ……メストまで！？」

第一班隊長のケイ・チャムだけでなく、第二班隊長のメストまでがシャルルと対峙する中、第五班隊長であるサヤは、負傷した傷を応急処置で回復させつつ、部下たちの洗脳を解くべく詠唱を開始していた。

（お願い！　間に合って！！）

普段であれば、詠唱中の無防備な狀態を護衛する者がなくとも存在するが、今回は非常事態。

メストが敵を引き付けているうちに詠唱を終わらせる必要があったが、そのメストも敵に圧倒され、十分な時間を稼ぐこともできずに倒されてしまう。

幸い、メストが命を賭けて派手にいてくれたことと、第三班隊長のリュウ・オウが世界主ワールド・ロード相手に猛攻をかけたおで、深手を負ったサヤがすぐさま敵の標的になることはなかった。

（後し……！！）

長い詠唱が終わりに差し掛かると、白い魔法陣が空中に幾重にも発現していく。

（これで……一時的にでも皆の洗脳を解ければ！！）

サヤが祈るように結んだ両手を広げ、締めの呪文を口にする。

「心を落ち著かせるしカーミング・サンライトッ！！」

だが、それと同時にどこからか聞き慣れた聲があがった。

「妨害魔法ディスタービングスペル」

「え……」

発現していた白い魔法陣が、突如現れた青いに侵食され、掻き消されていく。

それは、対象の魔法を打ち消すことができる魔法だった。

そして、それを行使したのは――。

「ユージッ！？　なぜなのッ！？」

サヤが聲がした方角に振り向くと、そこには真っ黒に染まった瞳の男――第四班隊長であるユージが、こちらに短杖を向けてた。

「あの眼……まさかユージまで！？　そんな……」

呆然と佇む。

洗脳を解くための魔導アーティファクトは、もう手持ちにはない。

殘された手段は、周囲の洗脳を解く大型魔法ソーサリーだけ。

それなのに、よりによって妨害魔法ディスタービングスペルを得意とするユージが敵に回ってしまった。

ユージが相手では、大型魔法ソーサリーなど簡単に妨害されてしまうだろう。

護衛が１人もいない狀況では尚更だ。

「はぁぅッ！？」

サヤが突然聲をあげて仰け反った。

を貫く衝撃と、遅れてやってくる鋭い痛み。

その痛みが急激に強くなり、サヤは痛みと悔しさで顔を顰めた。

（こんな……ところで……）

視界に寫ったのは、から生えた２本の明な刃。

ユージが率いる第四班が主に扱う武――真空の刃だ。

気が付けば、ユージの部隊に周囲を囲まれていた。

マサトや世界主ワールド・ロードに意識を向けすぎたことで、大気に溶け込むようにしてを隠していた第四班の部隊員たちに気付けなかったのだ。

「うぐ……」

胃を逆流してきたが、口端から零れ、顎を伝って流れ落ちていく。

「やっぱり、こうなったじゃない……」

唐突に愚癡を口にしたサヤが、首をひねって誰かを探す。

「あの人の側を離れるのは、だから反対だったのよ……あの人の側以外に、安全な場所なんてないのに……」

そして、一際強いを発しながら移してくる人を見つけると、ほっとしたような表に戻った。

「すみません、首領ドン。先に行って待ってますね」

直後、黒い影が勢いよく迫り、サヤのしい白磁はくじいろの長髪が空を舞った。

――――

▼おまけ

【Ｃ】　心を落ち著かせるしカーミング・サンライト、(白)(Ｘ)、「ソーサリー」、[効果範囲ＬｖＸ：付與魔法エンチャントを一時的に無効化]

「え？　黃昏のサヤを口説きたいの？　うーん、あなたじゃ無理じゃないかなぁ？　あ、別にあなたの容姿が問題とかじゃなくて、年齢が……だって、彼は枯れ専だって有名だから――冒険者ギルド付嬢オミオ」

【ＵＲ】　苦言のユージ、２／２、(青×３)、「モンスター ― 人族」、[妨害魔法Ｌｖ５] [神攻撃魔法Ｌｖ３] [(青)：一時飛行付與] [飛行]

「ヴィリングハウゼン組合のご意見番。第四班隊長。とにかく小言や忠告が多いため、苦言のユージと呼ばれている。否定的な言が目立つものの、事の道理や議論の筋道はしっかりしているため、仲間での信頼は厚いのだとか。頭の回転が速く、妨害系の魔法が得意。私は彼が隠れ構ってちゃんだと思っている――冒険者ギルド付嬢オミオの手帳」

★★『マジックイーター』１〜２巻、発売中！★★

また、文社ライトブックスの公式サイトにて、書籍版『マジックイーター』のWEB限定 番外編ショートストーリーが無料公開中です！

・１巻の後日談SS「ネスvs.暗殺者」

・２巻の後日談SS「昆蟲王者の大メダル」

https://www.kobunsha.com/special/lb/

これからも更新続けていきますので、よろしければ「いいね」「ブクマ」「評価」のほど、よろしくお願いいたします。