《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》さすがは尊敬するお兄ちゃん

オークによる村の襲撃。

勇者との戦い。

それらの出來事は、シュンにとって「めんどくせーこと」にすぎなかった。

おまけにロニンというお荷までついてきてしまった始末。

引きこもり生活をエンジョイしたい彼にとって、それらは単なる厄介事でしかなかった。

けれども。

そのおかげで良かった點も二つあった。

ひとつは、初めて自の強さを認識できたこと。

そしてもうひとつが、自分だけの家を與えられたことだ。

ヒッキーな彼にとって、一番の問題は食住である。

通常であれば、労働の対価として金をもらい、その金を払って食住をするものだ。

しかしながらシュンは普通の人間ではない。

親のスネをかじらなければ生きられない、ただのヒッキーである。

當然、以前までは親によく叱責されていた。はやく働けだの、たまには外に出ろだの、うっとうしいことをよく言われたものである。

いわゆる家のお邪魔蟲だった。

だが。

今回の事件でそれが逆転した。

シュンは村の英雄になった。

彼がいなければ、村民は皆殺しにされていたからだ。

《勇者》アルスが助けにきていたとはいえ、勇者だけではきっと解決には導けなかった。村民を人質にされる計畫があったから。

シュンという不確定要素がいたからこそ、村民は誰ひとりとして死なずに生還できたのである。

シュンがいたからみんな無事で済んだ。

これを英雄と呼ばずしてなんと呼ぶ。

名聲には興味のないシュンであったが、おかげで専用の家をもらえた。しかも大量の食料と金までついてきた。

これで當分、金には困らない生活ができるようになったのである。

そしてそれは、シュンやロニンの、さらなる引きこもり生活を促すものでもあった。

「つ、辛い……」

薄暗い室で、ひとり、ロニンは呟いた。

なーんにもすることがない。

部屋にあるものは、ふかふかなベッドと円形テーブル、何冊かの本、類だけ。

調度品の質は悪くないが、しかし、こんなものでは時間を潰せない。

この引きこもり生活を始めて、すでに一週間。

魔王城でもロニンは引きこもりのような生活をしていたが、まだ話し相手がいた。

というより、仲の良いモンスターたちとずっと喋ったり遊んだりして毎日を過ごしていた。

シュンいわく、「そんなものは引きこもりとはいえない」らしいが……

ロニンは思わず息を呑んだ。

シュンはまさか、こんなにも退屈な生活を何年にもわたって送ってきたというのか。私なら耐えられない。

すごい。

さすがは尊敬するお兄ちゃん……

と、どこかずれたを抱くロニンであった。

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