《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》引きこもりになるための厳しい修行

シュンいわく、引きこもりは最強の職業らしい。

働いていないのになにが職業なのかーーと問いたくなったが、それは黙っておいた。

では、なぜ最強なのか。

それは長の効率が最も良いから。シュンはそう語っていた。

この世界では、職業に応じた働きをすることで経験値が溜まり、レベルが上がっていく。

料理人は、料理をすることで。

剣士は、戦うことで。

商売人は、を売ることで。

それぞれの職に見合った功績を上げることで、ステータスが上がっていく仕組みである。

その點で見れば、引きこもりはたしかに最強である。

なにせ家でぼーっとしているだけで経験値が溜まるのだ。睡眠時間すらも《働いている》ことになるので、まさに一日を通してレベル上げに勤しんでいることになる。

シュンの言う、効率の良さとはこのことだ。

剣士は命がけで戦わなければステータスが上がらない。非常に効率が悪いのだ。

ちなみにこれはシュンもロニンも知らないことだが、剣士などはレベル上げの効率は悪いものの、一レベルごとに上がる數値は高い。

逆を言えば、引きこもりは一回ごとに上がる數値は低めである。

だが、剣士はその効率の悪さゆえに、一生をレベル二桁で終えるケースが多い。

シュンの場合、一回ごとのステータスの上がりは低いものの、驚くべき引きこもり年數が積み重なり、とんでもなく強くなっていたというわけだ。

ーー引きこもりは強い。

このことに気づけたのは、この世界でシュンとロニンだけである。

そして引きこもりの《職業》になるには、最低でも一ヶ月の八割を、家に引きこもっていなければならない。

ロニンはまだ一週間。

耐えどきなのである。

が。

「うぅ……」

ベッドに腰掛けながら、ロニンはけない聲を発した。

暇だ。あまりに暇すぎる。

話し相手がしい。

シュンは今後のためにも「一人の時間にもっと慣れろ」と言っていたが、もう限界である。

ロニンは自室を飛び出し、そそくさとシュンの部屋へ向かった。家から出なければ《引きこもり》の條件を満たすので、これくらいなら問題ない。

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