《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》引きこもりに地理なんかわかりません

本日の朝食ーー時間的には晝食だがーーは外で食べることになった。

ロニンがどうしてもと駄々をこねたからである。

シュンも最初は渋ったが、この一週間、ロニンは本當に頑張った。

苦手であるはずの《引きこもり》を、見事に耐えてみせた。

目標の一ヶ月にはほど遠いが、たまには外に出るのも悪くないだろう。

ロニンがずっと家にこもっていては、村の人々も不審がるおそれもある。

というわけで。

シュンとロニンはいま、村の外を歩いていた。

もちろんすぐに帰るつもりだ。

あまりダラダラすると、《引きこもり》の獲得條件を逃す可能がある。

ーーのだが。

「シュン様!」

「シュン様!」

通りすがる村人たちがそうさせてくれない。

彼らはシュンを見つけるなり、大仰に頭を下げた。

「あのときは助けてくれてありがとうございました!」

「俺、シュン様がこんなに強いなんて知らなかったです!」 

「あー……うん。そっか」

シュンにとって、彼らはほとんど記憶に殘っていない。

パッパッと流れ作業的に牢屋をぶっ壊していったので、いちいち顔を覚えていないのだ。 

まあ、彼が村民とほとんど関わりがないというのもあるが。

それを見たロニンが、心したように言った。

「人気者なんだねー。お兄ちゃん」

「誰のせいだと思ってんだよコラ」

突っ込みをれつつ、シュンはロニンの耳元でささやいた。

「その尾。出ないように気をつけろよ」 

「わかってるってば」

ロニンの尾は水玉のズボンのなかにしっかりと隠してある。

これでロニンがモンスターであることは気づかれないと思われるが、彼のことだ、いつボロが出るかわからない。シュンは厳重に注意を促しておいた。 

「あー、ところで、うん」 

シュンは咳払いをしつつ、村人たちに問いかけた。

「どこか、おすすめのレストランとかないかな? ぜひ教えてほしいんだが」

長年引きこもっていた彼にとって、村の地理なぞまったくわからないのであった。

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