《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》隠された優しさ
「んで、おまえはいつまで村にいるつもりだ」
暗い空気を変えるつもりで、シュンは聞いてみた。
ロニンはパンを頬張るのをやめ、うーんと唸った。
「どうしようかなぁ……」
「……考えてなかったのかよ」
「でも、とりあえずは勇者と互角に闘えるくらいには強くなりたい。それまではお世話になっても……いいかな?」
あまりにも直球な問いかけに、シュンは薄く笑った。
「俺に人類滅亡の手助けをしろってのか?」
「え……?」
「さすがにそこまでは面倒みきれねえよ。《引きこもり》になるまでは世話してやるから、それまでに自分がなにしたいか考えな」
「う……うん」
突き放したようなシュンの発言に、ロニンは小さく頷いた。
そう。
シュンとロニンの関係は、偶然に偶然が重なった結果だ。
本來ならば、人間とモンスターが共同で生活するなんてありえぬこと。
きっと他の者に気づかれたら、曬し者にされた挙げ句、村から追い出されるだろう。ひょっとしたら殺されるかもしれない。
そんな弾を喜んで抱えてやれるほど、シュンはお人好しではなかった。
ーーやれやれ。
シュンはまたもため息をついた。
空気を変えるつもりが、またも暗い雰囲気になってしまった。
もし。
願って詮無いことであるが、ロニンが人間であったなら。
このような面倒くさい悩みも起きなかったものを。
長い沈黙の末、ロニンが気遣うように言ってきた。
「お兄ちゃん。私は大丈夫だよ」
「……は?」
「私がそんなにむほうがおかしいよね。だってモンスターだもん。だからそんなに悲しい顔しないで」
悲しい顔、だと……?
「してねえよ。誰が悲しむか」
「えっ、だって……」
「うるせー。ほら、さっさと出るぞ」
ロニンの額を軽く小突き、シュンは逃げるように店から出た。
【電子書籍化へ動き中】辺境の魔城に嫁いだ虐げられ令嬢が、冷徹と噂の暗黒騎士に溺愛されて幸せになるまで。
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