《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》引きこもりに危機なんかない
「ふん」
四天王は鼻を鳴らすと、周囲に転がるモンスターの山を見回した。
ゾンビ、幽霊型モンスター、巨大昆蟲……。
それらすべてを見渡したあと、四天王はたった一言だけ告げた。
「半端だな」
「……なにがだ」
「貴様の所行すべてがだ。ここのモンスター、みな生きているではないか」
そう。
さまざまなモンスターが累々と倒れているが、死者は出ていない。
ディストにとって、彼らはかつて同じ領土で暮らした仲間なのだ。無慈悲に殺すことなどできなかった。
それに、今回はモンスターを殲滅することが目的ではない。
四天王はコー、ホー、とこもった呼吸をしながら、野太い聲を発した。
「ロニンロニンと狂ったことを言っておきながら、敵を気絶させるだけに留めている。おかしいとは思わないか」
ディストは下を噛んだ。
ーーこの獣野郎、見た目に反してなかなかの観察眼だ。
「ディストよ、わかっているぞ。貴様の狙いは別にあるな?」
「……さあ。なんのことだかな」
あくまでシラを切るディストに、四天王はぴくりと目を細めた。そのまま顔を見上げ、
「ウオオオオオオオッ!」
と兇暴な咆哮を発する。
「ひいっ!」
「ぎゃああああ!」
その音圧だけで、周囲のモンスターたちが吹き飛んでいく。
ディストたちを取り囲んでいたギャラリーは、一転してぴくりともかなくなった。
死んだのか、はたまた気絶しただけか、ディストには判斷できなかった。
「この俺にくだらん噓が通用すると思うなよ! 四天王が一人、このグリズオウ様が貴様を噛み砕いてやる!」
「……へっ」
この危機的狀況にあって、ディストは薄い笑みを浮かべた。
ーーやっとだ。やっと俺の実力を試すことのできる相手が現れた。
ロニン様、見ていてください。四天王のひとりなんか、この俺が軽く蹴散らしちゃいますからね。
ディストはかっと目を見開くと、今日始めて、鞘から剣を抜いた。
「貴様こそ、たかが四天王ごときがこのディスト様に適うと思うなよ!」
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