《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》引きこもり大魔王

セルスは壊れた窓をぽかんと見つめた。

「……あの男、何者なの。魔王様が吹き飛んで……」

茫然自失ぼうぜんじしつとしたその様子に、ロニンも苦笑をじ得ない。

モンスターの頂點ーー魔王。

この世で最も強い存在。

そんな絶対的な強者を、貧弱そうな人間がいともたやすくぶっ飛ばしたのだ。

さぞかしセルスには驚愕だったに違いない。

「あの人は……最強の村人だよ」

「村人、だって……?」

「そう。あの人のおかげで私は変われた。変わることができた」

「おまえ……」

そこで初めてセルスは憎悪のわにした。眉を激しく歪め、瞳にも冷たさが宿っている。

魔王がいなくなった途端にこのたらくか。わかりやすいだ。

ロニンは右手を鞘に添え、戦闘の構えを取った。

「おかげであんたにも負けるつもりはない。全力で來ないと……死ぬよ?」

「…………!」

セルスは焦ったように前傾姿勢を取る。

は魔法のステータスが高い。

この戦いでも魔法で攻めてくるだろう。

かくいうロニンも魔法タイプであるが、相手の戦い方に合わせる気はなかった。シュンのおかげで、理系の戦い方もなんとかできるようになっている。

「その顔……生意気だね」

を歪めたまま、セルスが太い聲を発する。

「あんたなんか、どう頑張ったって私には適わないんだから! いまさら足掻いたって無駄なのよッ!」

「…………」

「死んじゃえ、死んでしまえ! このクソがァーーー!」

聲とともに、セルスの右腕から線が放たれた。

それはどす黒く塗りたくられた、憎悪の攻撃魔法。

ロニンへの嫌悪をたっぷり込めて放った魔法に違いなかった。

ロニンは片腕を差しだし、その線を真正面からけ止めた。

ーー死ね。時期魔王は私がなる。あんたなんかに譲ってたまるかーー 

數々のが聞こえてくる気がした。

だが、そんな考え方は間違っている。自分のことしか眼中にない奴に、王の資格があるはずがない。

そう。

あの村人のように、真の優しさを持った人。

彼のように私はなりたい。

「はあああああっ!」

ロニンは気合いを込め、その魔法を片腕だけで打ち消した。

しゅうう……と、燃え盡きたあとの煙がロニンの手から発せられる。

「ば、馬鹿な……」

信じられないといったように、セルスが後ずさる。

「ありえない。あんたなんかに……私の魔法が……!」

「…………」

無慘にも後退するセルスに、ロニンは一瞬でもを抱いてしまった。

ロニンはぶんぶん首を橫に振り、その甘い考えを打ち消す。

はきっと反省しない。生かしておけば、必ず復讐しにやってくるだろう。

今日から私は魔王ロニンだ。もう甘ちゃんじゃない。

ーー力を貸して、お兄ちゃん。

ロニンは深く息を吸うと、思い切って地を蹴った。

そのまま、なにも考えず、なにも意識せず、無造作に剣を突き立てーー

セルスの腹部を、いともあっさりと貫いた。

「ぐうっ……!」

セルスが大きく吐し、激しく痙攣けいれんする。

「くそっ……あんたなんかに……あんたなんかにィ……!」

最期にそれだけを呟き、セルスは帰らぬ者となった。

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