《引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―》心の痛み
様々な波を含みながらも、試験は無事終了した。
ちなみにロニンといえば、最悪のE判定を授けられることとなった。デッドスライムに対し、思うような攻撃ができなかったのである。同胞を苦しめることができない、彼の優しい格がそのまま現れてしまった。
だが、シュンとしてはひとまず安心だった。変に目立って、彼の正がバレるよりはマシだ。
その後は晝食を挾み、魔師試験、筆記試験と続き、終了した頃には夕方前になっていた。
最後、新生一同は噴水広場に集められた。
「判定結果は後日発表します。本日はお疲れさまでした。明日に備え、ゆっくりとを休めてください」
教員の一言を皮切りに。
新生たちが、解放されたような笑みを浮かべながら、それぞれ散り始めていく。早いことにもう友達をつくった者もいるようで、これから夕食食べにいこうなどと話し合っている者たちもいる。
その喧噪のなかで、シュンとロニンだけが立ち盡くしていた。
「……お兄ちゃん」
夕日のを背にけながら、ロニンが切なげに呟いた。
「なんだ」
「お願い……ちゅう、して……」
「…………」
クローディア學園の學式。
新生にとっては晴れの舞臺。
だが、彼にとってはこの上なく重い一日となった。
騎士の適正検査のみならず、魔師の試験においても、無力化されたモンスターが標的にされたからだ。人間のモンスターに対する憎悪がに沁みてわかったのだろう。
それだけではない。
モンスターはロニンに対してだけは攻撃してこなかった。
先のデッドスライムも、反撃らしい反撃もできず、その命を散らしていった。
理由は単純。
ロニンが魔王だから、本能的に攻撃ができなかったのだ。
結果的に彼は、抵抗もできない同胞を、有無をいわさず殺したことになる。
それは人間がモンスターを討伐するのとは違う。ロニンにはロニンにしかじられない心の痛みがある。
だからこそシュンは、彼の願いをけれた。
「ん……」
それは無言で。
誰も気づくことのない、靜かなキス。
「……ありがとう。すこし、楽になったかも」
「あまり思いつめんなよ。こりゃ相當強い問題だからな」
「……うん。今日はちょっと、魔王城で寢てくるね」
「……おう。わかった」
ロニンは最後にシュンの右手をぎゅっと握りしめると。
そのまま振り切るように、門へと走り出した。
そのなんともいえぬ切ない後ろ姿に、シュンは手をばしかけてーーやめた。
ーーなんだ、この心の痛みは……
俺らしくもねえ……
シュンは乾いた笑みを浮かべながら、ひとり、帰路に著くのであった。
- 連載中101 章
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